奥泉光『石の来歴/浪漫的な行軍の記録』

日曜日。晴。
奥泉光『石の来歴/浪漫的な行軍の記録』読了。「浪漫的な行軍の記録」の方が力作だ。退屈による苦痛で途中投げ出しかけたが、小説は最後まで読んでみないとわからないものである。太平洋戦争下のフィリピンにおける、流浪する日本軍が主題で、絶望的で幻覚的な行軍の様子がしつこく延々と描写されるのであるが、しつこさもここまでいくと感嘆に変わらざるを得ない。過去と現在は交錯するのだが、しかし、途中で湾岸戦争を引っ張り出してきたのは、どうだろうか。却って余分だったかもしれない。とは云っても、全体的に力技である。「石の来歴」の方は、雰囲気は「浪漫的な…」に似ているが、まだ未熟な感じがする。

石の来歴 浪漫的な行軍の記録 (講談社文芸文庫)

石の来歴 浪漫的な行軍の記録 (講談社文芸文庫)