『大岡信詩集 自選』/堤未果『沈みゆく大国 アメリカ』

晴。
音楽を聴く。■テレマンターフェルムジークI(I. 二つのフルート、弦楽合奏通奏低音のための序曲、II. フルート、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音のためのクヮトゥオル)(ムジカ・アンフィオン)。ブリリアント・クラシックスの怒濤の格安BOX。29枚組で5000円弱です。テレマンは従来は二流の作曲家扱いで、例えば吉田秀和さんなどにも殆ど言及がないと思うが、それは良質の録音がなかったせいでもあろう。今では古楽器での演奏が当り前になり、演奏の質がものすごく上った。だいたいテレマン大バッハと同時代(長生きしたのでハイドンの活躍とも重なっている)の人であるが、大バッハより遥かに人気があったのだ。この「ターフェルムジーク」を聴いていても、その耳への心地よさは大変なもので、それだけで尋常でない。イージーリスニングに使っても、最高級品なのではないか。さて、気の向くまま少しずつ聴いていきましょうか。

Telemann Edition [Box Set]

Telemann Edition [Box Set]

ベートーヴェン交響曲第七番op.92(ティーレマン参照)。ようやくティーレマンがちょっとわかってきた。なかなかスケールの大きい指揮者だな。自分の感性にないところでやっているので、勉強になる。
散髪。

図書館から借りてきた、『大岡信詩集 自選』読了。大岡信の詩を読んだのは恥ずかしながら初めてだが、大岡信、なかなかいいではないか。古典から現代までの詩その他を、詩中に織り込んだり暗示させたりするのが上手いという印象。具象と抽象のバランスもいい。嫌味のない程度に技巧も優れている。何となく「いかにも詩らしい詩」という感じを受ける。気に入りました。
大岡信詩集 自選

大岡信詩集 自選

堤未果『沈みゆく大国 アメリカ』読了。オバマ大統領が選挙で公約に掲げ、多くの期待を集めて導入された新しい国民皆保険制度、いわゆる「オバマケア」が、如何に大きな問題を抱えているかをレポートしている。このままでは、アメリカの医療制度は崩壊しかねない。ポール・クルーグマンマイケル・ムーアが絶賛した制度が信用できないものだとは、このジャーナリストの言っていることは本当なのかと思われる方もいるかも知れない。とにかく内容は非常に興味深いものであり、日本もアメリカと同じようなことになっていく可能性も少なくないので、そういうことに関心がある方は是非読まれたい。ただ、本書の題だけは多少残念でないこともない。売れるために付けたのだろうが、内容に相応しいとは必ずしも云えないからだ。それ以外は、このジャーナリストは基本的に信用できると自分は思っている。あとは連想の赴くままに、漫談を少し。この問題は、一部の異常に富んだ人々が、金の力を背景に好き勝手なことをやっていることが背景にあるのだと思うのだが、さて、果して貧富の格差はある方がいいのか、それともない方がいいのか。ちょうど人気ブログ「Chikirinの日記」の最新エントリーの題が「富裕層に富を偏在させよう!」というもので(参照)、これを思い出さずにはいられなかった。ちきりんさんは格差が大きいほうがいいという考えで、まあちきりんさん自身がお金に余裕のある方だから、その考えはわからないでもない。だいたい、ちきりんさんの考えには、「お金のある人」=有能、「お金のない人」=無能という傾向がどうしても見られるし、ほぼ「市場万能主義者」というレッテルが貼り付けられそうであるが、自分にはどうでもいいことである。自分はまあ、皆ある程度平等で格差がない方が生きやすいような気がするが、それもまた「信仰」である。いずれにせよ、ほどほどがいい。それよりも自分に切実なのは、お金があまりないなら、ないなりにやるということである。幸い今では、例えば読書などでも、お金がなくてもある程度は可能である。ブックオフで108円本を買ってもいいし、そもそも図書館を使えばお金はいらない。ネットに接続さえできれば、音楽は聴けるし動画だって見られる。正直言って、今ではネット接続ができるだけのお金があるかどうかは、大きいだろう。それを最低線として、どう生活を組織していくか、そういうことが重要になるのではないか。まあそんなことは、いまさら言うまでもないことで、わかっている人はわかっているだろう。
 それから、これからはどんどん「システム」の力が大きくなって、人をあらゆる形で縛るだろう。二十世紀とはちがった形で、全体主義的な支配が強まると思う。それらの隙間を探すことが、重要になってくるにちがいない。
 もうちょっと蛇足を。ネット時代になって、「言論」ということから見てもっとも良かったことは何か。それは、自分とちがう意見に簡単に遭遇できることである。これは非常に修行になる。その反応としては、腹をたてる、そして怒りの罵倒をする、無視する、馬鹿にする、などと色々あるが、それではせっかくのネットの意味がない。そうした反応はむしろ有害になるのであって、大切な修行の機会なのです。そうしてからなら、反論・批判するのもいいでしょう。反論・批判というのは、むずかしいですけれどね。自分などはレヴェルが低いので、まだ良くしない。ただ、現象学的還元というのは、無視とはちがいます。これは大切。