2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『冷酷な丘』

わたしが大好きな作家、いまは亡き打海文三は、熱狂的な読者がいる一方で、ベストセラー作家と呼べるほどの売り上げがありませんでした。その状況を指して、自身の息子から「売れないエンターテインメントに意味はあるのか」と言われ、もっともだと頷いたと…

上手いって何ですか

かつて、夢枕獏は自著『餓狼伝』において、登場人物にプロレスラーの肉体の凄さについて語らせました。と同時に、あるエッセイにおいて、藤原喜明の、関節技は筋肉ムキムキのレスラーには簡単に決まるという言葉を紹介しています。ここで語られるのは矛盾し…

この冬も

微々たる金額ですが、「あしなが東日本地震津波遺児基金」と「国境なき医師団日本」に寄付をしました。まだ、何も話せません。でも、おそらく十年以内に、語らなくてはならないときが来るはずです。そのとき、自分の言葉で語りたい。口当たりの良い、気の利…

『罪責の神々』

依頼人は嘘をつく。それを織り込んで裁判を戦う弁護士、ミッキー・ハラー。彼は今回、それとは逆に無実を訴える依頼人を信じて裁判に臨みます。それは、依頼人が信頼出来る人物だからではありません。被害者が既知の女性だったからです。過去に交流のあった…

『母性のディストピア』

ずっと、小説家だけを「作家」と呼ぶことに疑問を持っていました。映画監督だって、音楽家だって、漫画家だって同じだろうと。あるいは「映像作家」といった言い方にも違和感を持っていました。作家ではなく〇〇作家と呼ぶのは、小説を一段高く見積もる態度…

久闊を叙する

先日、東京を超えて浜松に出かけました。友人と呑むためです。大人になってから親しく付き合う友人が出来るというのは稀なことです。それぞれが既に自分なりの価値観に基づいた生活環境を持っていて、それが重なるのは僅かな部分に過ぎません。それが、仕事…