2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『キミ金』

何事、壁にぶつかったときには基本に返るのが常道です。井上純一の『キミのお金はどこに消えるのか』は、経済に興味を持った人が手に取るのに最適な一冊です。まず何より、他の“漫画でわかる〜”と謳っている本との違いは、著者が読者に対してではなく、妻の…

『真説・佐山サトル』

漫画『ハチミツとクローバー』で、自分が何者であるのか、自分には何が出来るのか、自分というものがわからず苦しむ若者が、迷い彷徨う自分を見つめて、心の内で呟きます。「自分にないのは地図ではない。目的地だ」と。その裏返し。地図もない場所で、目的…

自負と謙虚

自分の周囲の人たちは、ただ毎日をやり過ごしているだけで、自分のように物事を(深く)考えていない……、などと思ったら大間違い。話さないからといって考えていないわけではなく、そこを見誤ってはいけません。ネットの普及とともに、掲示板、ブログ、フェ…

ボッシュ②

幼いころに、娼婦だった母親を殺人事件で失ったハリー・ボッシュ。その葛藤を克服しても、心の傷は決して消えはしません。ボッシュが物語に登場する女性たちとロマンスを繰り返すのは、そのことと無縁ではないはずです。しかし、シリーズが続くなかで年齢を…

ボッシュ①

物言わぬ死者の代弁者として犯人を追う刑事、ハリー・ボッシュ。物語の最後、官僚然とした上司は、ボッシュに、何故それほど頑張るのかと尋ねます。ずっとボッシュの物語を読み続けている読者なら、その答えは自ずと明らです。それは、彼がハリー・ボッシュ…

反骨の夏

さて、つまらない記事が続きましたので、それに対するカウンターの意味も込めて、各出版社の夏の文庫フェアの顰に倣い、個人的夏の読書のご案内を。今回は、あえて小説を取り上げず、ノンフィクションでいきます。辺見庸の『屈せざる者たち』は対談集です。…

失望と諦観

民主党への失望は、ただ民主党に向けられたものでしょうか。その政権末期、野田佳彦首相(当時)のとき。既に政権の基盤と呼べるものはなく、野党の自由民主党の協力がなければ何一つ決められない状態でした。そうして政策議題の俎上に上がったのが原子力発…

期待と失望

安倍首相の長期政権を可能にしている要因の一つに、かつての民主党政権への幻滅があると指摘されています。期待と失望は一枚のコインの表と裏。その大きさには相関関係があります。安倍首相と彼の率いる自由民主党の現在の隆盛をもたらした“民主党への失望”…

父との約束

いまは定年退職していますが、わたしの父親は田舎の公務員で、わたしが二十歳になったとき、一つ頼まれて約束したことがありました。選挙があったときは投票すること。誰に投票しろとは言わない、それは個人の自由であり干渉しないが、必ず投票はするように…

印象と数字

ここ最近、安倍首相を批判する際、「民主党(が政権与党にあった)時代は言うほど悪くなかった。これこれの数字は安倍内閣の現在より良い」という言説が見られます。一方、安倍首相を支持する人たちは、各種の様々な数字を挙げて、その手腕と成果を褒めそや…

見識

1988年8月8日、横浜文化体育館で行われた、IWGPヘビー級選手権試合。チャンピオンの藤波辰巳VS挑戦者のアントニオ猪木。いまなお熱く語られる名勝負です。結果は60分フルタイムを戦い抜いてのドロー。ミスター高橋は、著書の『流血の魔術 最強の演技』で、こ…

価値観

故国の敗戦が避けられなくなり、自らの行動が勝利に何ら結びつかないと知りながら、ある作戦を遂行しようとするドイツ人のスナイパー。彼の作戦に気づき、追いかける男たち。その二つの視点から交互に語られる、第二次世界大戦の終戦間際の物語。欧米を舞台…