川島むーのお茶祭り日記

お茶祭り企画代表、川島むーの心に映り行くよしなし事を、あれこれと

岩手日記〜釜石へ〜


 始発で岩手県へ。
 よく起きれたな、よく乗れたな5時15分、戸塚駅を出発。前夜、準備と遠足前の子供状態で、睡眠不足もいいところだが、目は冴えている。
 東京駅から東北新幹線で新花巻へ。
 さあ、釜石線軽便鉄道です。宮沢賢治銀河鉄道であり、シグナレスがカタンと腕木を……ああ、駅が賢治的なもので溢れてます。
 出発前に、持つべきものは頼りになる先輩、鉄道ライター土屋氏がすすめてくれた、進行方向に向かって右側を確保。



 釜石線の駅にはシグナレスが立っている。駅名の下に、もうひとつの名前がついている。しかもエスペラント語とともに。
 睡魔と仲良くなりかけては、警笛に起こされる。
 トンネルトンネルトンネルを抜けるとトンネルだった。そんなエリアも抜けて釜石着。

 
 やっとご飯だ〜。サンフィッシュ釜石、まえ浜さんでお宝丼。生うに丼やいくら丼もあったけど、なんかね、あのどど〜んてんこ盛りよりも、色んなの少しずつの方が好みなのです。

 生うにが、ほんとに美味しかったです。もっと食べたい!と思うところでとどめるのがよろしい。あさりのお味噌汁も、身がぷっくりしていて美味しゅうございました。始発で出てきて朝昼兼用の身には、どっしりした卵焼きも嬉しいのでありました。ご馳走様でした。
 さて、ここで大きな荷物を置いて、バスに乗ります。

岩手日記〜大槌へ〜

 午後。
 三陸の海を見ておきたい。
 ここでも土屋氏のアドバイスをいただき、バスで大槌方面へ。浪板海岸に行ってきました。
 まだ、5年。5年たって、まだ。
 こういう場合、詩と言う形になってしまうのです。(帰宅翌日のSPIRITで詠みました)



「槌音の町」
花巻から釜石へ
線路は続く
釜石線
かつて軽便鉄道と呼ばれた
宮沢賢治銀河鉄道を走らせ
信号機のシグナルとシグナレスの切ない恋物語を夢想した
ごとごとカーブとトンネル響く警笛
(明日はSL銀河号が走るとか)
民話のふるさと遠野を過ぎて
(明日はここでカッパ釣り)
終点・釜石
鉄の工場からの煙が立ち上る
壁に引かれた赤いラインは
あの日を示す
そこからはバスに乗る
途切れたままの線路
ごとごとと
バスは行く
土と草っ原と造成工事の景色
ここを見てくれと
あの日のままの建物の
そばをぐるりと回り
バスは行く
吉里吉里国を通り
海へ
海へ
降り立ったそこにあったのは
美しい海
果てしなく広がる
穏やかな波が寄せては返す
あの向こうにはドン・ガバチョが暮らす島もあるはず
あまりに美しく
時間を忘れて眺めているが
かつてあったと言う美しい砂浜は無く
バス道から海岸へ降りる階段は草で覆われ
看板は枠だけが残り
不自然な場所に転がるテトラポット
浪の音に交じって聞こえるのは
槌音
ここは
大いなる槌音の町
振り返れば
鮮やかな団地造成地の看板
けれど
いまだその完成した姿は思い描けない
帰りのバスを待つ数分
言葉を交わしたのは
母に近い年齢の
おばちゃん
畑仕事の手を休めているところに
なんとなく目が合って
挨拶を交わし
バス待ってるの?
ここは時間通りに来るよ
(心地良い岩手の言葉の再現は私には無理だな)
私の思いを汲み取ったように
そこまでが流されたのよ
あの民宿は少し高かったから助かったの
指さし示す
あなたは?
と言葉にはできなかったが
目が問うていたやろか
私はね、すぐに逃げたから助かったの
ほら、あの軽トラを運転してね
振り返れば
確かにそこに
風景の一部であった軽トラが
にわかに存在感を増して迫ってくる
梅雨の晴れ間の日本晴れ
青空と青い海を背に
汗を拭きながら笑顔で語る
おばちゃん
どれほどの形相でハンドルを握っていたんやろ
母と変わらない年齢であろう彼女の
味わった恐怖
あぁ、ほら、バスが来たよ
別れがたく
手を握り
会えて良かった、それは
おばちゃんが生きていてほんまに良かった
と言う意味だと
届いただろうか
私もあなたに会えて良かったよ

握り返した手の
力強さ
やさしさ
どうかお元気で
バスに乗り込み
手を振って
「私は、助かったの」
おばちゃんはそう言うた
私は、と
助からなかったたくさんの命
あの美しい海が
どれだけの命と暮らしを飲み込んだのか
おばちゃんの大切なものを
奪ったのか
私は助かったの……
あの軽トラで……
会えて良かった……
その笑顔を浮かべるまでに
どれほどの時がかかったのか
その地に立ってもつかみ切れなかった
圧倒的なあの日の現実が
軽トラ一台の姿で
迫ってくる
動画や写真でどれだけ想像しても追いつかなかった
圧倒的な
現実
釜石まで戻るバスの中
涙をこぼすまいと
やっぱり来てよかったんやと思う
海は
あの日を忘れたように
どうしようもなく
綺麗で
広がる水平線
でも、
砂浜は消え
それでも
サーファー達よ戻って来いと
新たな施設も建っていた
どこまでも続く
造成工事と
草っ原の景色の中
バスは行く
ここは
大いなる
槌音の
響く町
ひょっこりひょうたん島
浮かぶ町

岩手日記〜ミッフィーカフェ〜


 大槌へ向かうバスの中から見えたミッフィーカフェが気になり調べてみると、昨年末に、オランダ大使館ディック・ブルーナ・ジャパンの協力の下、釜石情報交流センターと共にオープンしたもの。これも、復興のための事業のひとつですね。
 いや、まぁ、単純に、ミッフィー大好き!な友人がいるので、行ってみようと思ったわけですが……。

 ミッフィーラテを注文。あ、たれぱんだが危ない!……すいません、一人で遊んでます。
 手描きのミッフィーも。
 店内のソファーや椅子の色合いもブルーナの世界。なんだかくつろいでしまいました。
 色んなものが、ミッフィーで、お店の人に確認して写真を撮らせてもらいました。




 ……正直に言います。
うさこちゃん」世代ですよ〜。 「ミッフィー」って誰だよ、と思ったのはいつ頃だったかしら。
 
 カフェと言っているけれどもディナータイムもあるらしく、宿泊先にも近いし、ここで食べるのも良いかしら、などと考えながら、お店の人とちょっとお喋り。
 どうやら、ディナータイムはあまり知られていないらしく、それがちょっぴり残念そうな口ぶり。ふむ、味にはかなり自信を持っていらっしゃいますね。
 晩御飯をどうしようかと思って、と言うと、他にも地元のお店の情報を教えて下さるところに、好感度アップ。ああ、地元を大切にされているんだなぁと。うん、良いお店だ。晩御飯候補として、しっかと心にメモメモ。
 夜までは時間がある。やっぱり、あっちも行ってみよう。
 と言うことで、三陸鉄道南リアス線へ!

岩手日記〜さんてつ〜


 三陸海岸を走る、三陸鉄道。釜石からは、その南リアス線が出ている。特にどこへ行くと言う目的があるわけではない。行って、帰って来よう。そこからの景色をしっかり見て来ようと思う。
 トンネルが多い路線。駅の前後で海が見える。



 NHKあまちゃん』で出てくるのはもっぱら北リアス線なのだが、震災の時のユイちゃんと大吉さんのトンネルで止まった列車のエピソードは南リアス線でのこと。
 トンネル、トンネルを走り、海を見ながら、あのドラマの震災の描き方は秀逸だったなぁと改めて思う。わけのわからないままトンネルの中で止まった列車。♪ゴーストバスターズ♪と震える声で歌いながらトンネルの外へ向かう。立ち尽くす大吉さん。「ユイちゃん見ちゃだめだ」「もう、遅いよ」立ち尽くす二人の姿で惨状を伝える。
 あのシーンだけではなく、あのドラマでの震災の描き方は、役者の力と、見る側の想像力を信じていないと出来ないものだったよなぁと、改めて実感したのでした。

 ちなみに、我が大吉さん(運転手さん)は列車を止めて
「ええ〜、まぁ、大したものではないんですが、今、線路に鹿がいます」
 いや、それは見に行きますよ。線路からひょこっと去る鹿。その先には、まだ何頭も鹿がいらっしゃいました。傍でシャッターを切っている方に
「うまく撮れました?」
 と聞いてみる。どうかな、と言いつつ、釜石でも川沿いとかに良くいるよと教えていただく。そうなんですか?釜石に泊まるから、見られるかしら、などと言っていたのだが……ええ、釜石で、ね、鹿がね。と言う話は、また改めて。
 終点、盛駅で降りて、帰りの列車までの時間を過ごす。


 駅で売られていた「三鉄赤字せんべい」。いずこも、厳しい。あまちゃんブームも、いつまでも続かないしなぁ。貼られるテープも、さんてつ。
 そして、ここは道路ではないのですね。うっかり踏み込んで叱られてしまいましたが……。ごめんなさい。


 ここは、線路があったところ。大船渡線。今は仮復旧としてBRT(バス高速輸送システム)となっている。ここは、あくまで線路なのです。
 バスを見送り、もう一度、トンネルと海の続く路線で釜石へと戻るのでありました。

岩手日記〜再びミッフィーへ〜

 夕食。
 さて、どこに行こうか。ミッフィーカフェのお兄さんおすすめのお店は表にメニューが出ていなくて、ちょっとどうしようかなぁ。
 もう一軒、通り道で気になっていた居酒屋の扉をくぐるが、グループが盛り上がっていて、それに紛れてか、しばし待つも店員さんの応対が無い。
 ん〜、一人飯、一人飲みがしにくそうだなぁと、そそっと退散。
 やはり、ミッフィーカフェへ!お洒落に一人ディナー。お兄さんが、ちょっと嬉しそうでした。


 ミッフィーさんお相手にワイン。 
 お豆のスープも美味しかったです。
 食事中、見守ってくれていました。

 さて、ホテルで一泊(津波で2階まで浸水したそう)。
 次は遠野に向かうのです。でも、その前に、釜石でもう一か所寄るところあり。早起きしなくちゃね。

岩手日記〜釜石点描〜

 釜石で見かけたあれこれ、点描。




 あちこちで、鮭が遡上しておりました。鮭って、味も好きだが、あの顔も、好きなんだなぁ。



 橋の欄干を彩る花。夕暮れ時、ふとみると、自転車に水の入ったペットボトルを何本も積んで、水やりしている方がいらっしゃる。
 「岩手×東京 花のみちプロジェクト」の一環。


 歩道の柵は、波模様。


 入りづらいお店がありました。般若に怯えるゴミ箱の図。いやぁ、気になりましたが、入れませんでした。


 釜石観音寺にて、お茶好きは見逃せません。茶釜・急須塚。

 旅のお約束、マンホール。釜石は虎舞いですね。
 旅のお約束、自撮り。盛駅と三鉄車内。