子どもが育つ魔法の言葉

要約

詩の一行一行について、関連するエピソードが展開される。「子は親の鏡」というタイトルの通り、子どもは親の言動ではなく親の姿を見て育つ。公正で正直な子どもに育ってほしいのであれば、親もそうでなければならない。

 

「和気あいあいとした家庭で育てば、子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる」の以下の段落がこの本で言いたかったことを要約している。

子どもを誉め、励まし、認めれば、家庭は暖かな場となります。子どもが失敗しても許し、欠点も受け入れることです。子どもを理解し、思いやる気持ちが大切なのです。厳しくしつけなくてはならないときでも、頭ごなしに叱りつけたり、無理やり従わせたりしてはいけません。子どもを信じ、支えることが大切なのです。

内容

子は親の鏡

 

けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる

とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる

不安な気持ちで育てると、子どもも不安になる

「かわいそうな子だ」と言って育てると、子どもは、みじめな気持ちになる

子どもを馬鹿にすると、引っ込みじあんな子になる

親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる

叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう

励ましてあげれば、子どもは、自信を持つようになる

広い心で接すれば、キレる子にはならない

誉めてあげれば、子どもは、明るい子に育つ

愛してあげれば、子どもは、人を愛することを学ぶ

認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる

見つめてあげれば、子どもは、頑張り屋になる

分かち合うことを教えれば、子どもは、思いやりを学ぶ

親が正直であれば、子どもは、正直であることの大切さを知る

子どもに公平であれば、子どもは、正義感のある子に育つ

やさしく、思いやりを持って育てれば、子どもは、やさしい子に育つ

守ってあげれば、子どもは、強い子に育つ

和気あいあいとした家庭で育てば、

子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる

 

けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる

  • 叱るときは、罪を憎んで人を憎まず。言葉遣いに気をつける。
  • ケチを付けるのではなく、肯定的な言い方で。

とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる

  • イライラしたら、体を動かす、深呼吸をする(子どもは自然とそうしている)
  • 感情的になったら、それを認め、子どもに謝る(必ずしも100%押さえつける必要はない)

不安な気持ちで育てると、子どもも不安になる

  • 甘えたいのであれば、甘えさせてあげる
  • 親の心配は子どもに伝染する
  • 先回りせずに子供の話を聞く
  • 「あなたならできる」と、子どもに自信を持たせる
  • 親がどのように周りに支援を求めているか、周りを支援しているかを子どもは見ている

「かわいそうな子だ」と言って育てると、子どもは、みじめな気持ちになる

  • 親は逆境にくじけずに立ち向かえば良い
  • 辛いことがあっても乗り越えられると、子どもを信じる
  • 子どもを励まし、導きながら、埋もれている能力を引き出す
  • 同情ではなく、共感を。

子どもを馬鹿にすると、引っ込みじあんな子になる

  • 子どもに思いやりを教える一番の方法は、親が子どもを思いやること
  • 家庭はくつろぎの場。親が欠点を受け入れられる広い心を持てば子どもも心から安らげる

親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる

  • 子どもの欠点ばかりを見ると、他の子に嫉妬する。子どもの長所を見るようにすればすべてが個性に見える
  • 子どもの成功・失敗は子ども自身のもの
  • 子どもは人を許す天才
  • 思春期は子どもが自分の特性に気づき、それを伸ばすことができるように導く
  • ふとしたタイミングに子供の話を聞く。先回りしない、考えを押し付けない
  • 子どもは、親が思っているような子どもになろうとする
  • 自分の不完全さを受け入れ、己の幸福を幸福とする

叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう

  • 厳しく叱るよりも励ます、決めつけない
  • 子供の気持ちを受け入れると素直で明るい子になる、否定すると自信のない暗い子になる
  • 罪悪感ではなく、責任感を

励ましてあげれば、子どもは、自信を持つようになる

  • 先回りせず、子どもにやらせる
  • 子どもの可能性を信じる
  • 内面にも目を向けて誉める

広い心で接すれば、キレる子にはならない

  • 待つことを教える、大きな出来事でも親は自分が望むす姿を示す
  • 親自身が忍耐力と広い心を持ち、和気あいあいとした家庭を作る

誉めてあげれば、子どもは、明るい子に育つ

  • 意欲も誉める
  • 子どもは、親が自分を自分ゆえに愛してくれる姿から大切な価値を学ぶ
  • 子どもの夢を支える存在でありたい

愛してあげれば、子どもは、人を愛することを学ぶ

  • 愛を支える三つの柱:子どもを認め、信じ、思いやること
  • 親に愛されている子どもは、頑張り屋で親切

認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる

  • 日々の暮らしのほんの些細な出来事において、子供の長所が光る
  • 子どものどこを誉めるかが、子供の人格と価値形成に大きな影響を及ぼす
  • 子どもが親の同意を得ようとしてきたら、ソフトな態度で受ける
  • 怒られるから悪いことをしないのではない、自尊心がそうさせる

見つめてあげれば、子どもは、頑張り屋になる

  • 日々の忙しさに流されず、子どもの日々の成長に注目する
  • 子どもと夢を分かち合う

分かち合うことを教えれば、子どもは、思いやりを学ぶ

  • 自分が損をしていると感じると、分かち合う心は育たない
  • 幼稚園以前から所有と貸し借りの概念を身につける
  • 一緒にいてあげることが、子どもには大切(大きくなってからも)
  • たとえ数分でも、子どもにだけ注意を集中する時間を

親が正直であれば、子どもは、正直であることの大切さを知る

  • 自分に都合の悪いことでも事実をありのままに認識し、それから逃げない態度を教える
  • 正直さを誉める
  • 相手の気持を考えて物を言うことの大切さ

子どもに公平であれば、子どもは、正義感のある子に育つ

  • 自分の意見や考えが聞き入れられる家庭で育てば、子どもは間違っていると思ったことをはっきりと主張できるようになる
  • 正義感は何気ない日々の暮らしで培われる、子どもを一人の人間として認め公平であろうと務める。

やさしく、思いやりを持って育てれば、子どもは、やさしい子に育つ

  • 親は言葉遣いに注意する必要がある(相手の気持を考えた表現)
  • 思いやりはちょっとした仕草に現れる

守ってあげれば、子どもは、強い子に育つ

  • たとえ失敗しても、いつも味方であると教える
  • 自分を信じることを教える

和気あいあいとした家庭で育てば、子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる

子どもを誉め、励まし、認めれば、家庭は暖かな場となります。子どもが失敗しても許し、欠点も受け入れることです。子どもを理解し、思いやる気持ちが大切なのです。厳しくしつけなくてはならないときでも、頭ごなしに叱りつけたり、無理やり従わせたりしてはいけません。子どもを信じ、支えることが大切なのです。

  • 家族以外の結び付きがあると、子どもの世界は広がる
  • 親族の集まりで、子どもは自分の成長を感じる
  • 大切なことは何を言うかではなく、子どもと一緒に何をするか
  • 子どもを励まし、許し、誉めること。子どもを受けとめ、肯定し、認めること。誠実とやさしさと思いやりを身をもって示すこと

 

感想

子どもを信じることと共通する内容も多い。子どもを一人の独立した人間として、尊重することが大切だと思う。仕事上やらないコミュニケーションスタイルを、子ども相手だからといってやってしまうのは間違い。

 

子どもの脳を傷つける親たち

要約

マルトリートメントを受けた子供の脳は器質的に変化する。これは子どもにとって生存上危機的状況を生き残るために適応した結果であると考えられる。

適切な治療で回復する可能性はあるが、そもそも脳が変形するようなしつけはおかしい。適切なコミュニケーション、スキンシップで(双方に)愛着を育てることが大切。

 

内容

序章 健全な発達を阻害する脳の傷つき

  • マルトリートメントに起因する社会的損失は小さく見積もっても1兆6000億円

第一章 日常の中にも存在する不適切な養育

  • 虐待の定義
  • 行為が軽かろうが弱かろうが、子供のためだと思ってした行為であろうがなかろうが、傷つける意志があろうがなかろうが、子どもが傷つく行為は、すべて「マルトリートメント」
  • 家庭という場所や、時間を子どもと共有していても、きちんと向き合うことをせずに自分の生活や欲望ばかり優先させているならば、その行為はネグレクト

第二章 マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響

  • 体罰前頭前野が約20%、右前帯状回が約17%萎縮
  • 性的マルトリートメント:視覚野が8%、紡錘状回が18%萎縮
  • 暴言:聴覚野が約14%肥大
  • 面前DV:視覚野が約6%萎縮、血流が約8%増加
  • 愛着障害:一次視覚野が約20%萎縮

第三章 子供の脳がもつ回復力を信じて

  • 薬物療法心理療法を併用
  • 心理療法では新たな意味付けを行う「暴露療法」遊びを通してトラウマを開放する「遊戯療法(箱庭療法)」レム睡眠状態で遠い過去のように処理する「EMDR」など
  • レジリエンスは「保護因子」に関係。
    • 個人的な特性:高い知能、自己肯定感、前向きな気質
    • 家庭的な特性:暖かな家庭、連帯感、両親の積極性
    • 地域的特性:社会のネットワークの充実
  • 心的外傷後成長:強烈なトラウマを体験したあとの成長

第四章 健やかな発育に必要な愛着形成

  • 「安全基地」
  • 愛着の形
    • 安定型
    • 回避型:態度に示さない
    • 抵抗型:激しく動揺
    • 混乱型(マルトリートメントを経験)
  • 反応性愛着障害:天の邪鬼
  • 脱抑制型対人交流障害:誰彼構わず愛着を求める
  • 積極的に使いたい三つのコミュニケーション
    • 繰り返す
    • 行動を言葉にする
    • 具体的に褒める
  • 避けたい三つのコミュニケーション
    • 命令や指示
    • 不必要な質問
    • 禁止や否定的な表現

終章 マルトリートメントからの脱却

  • 虐待の連鎖は1/3
  • 養育脳を活性化させるオキシトシンはスキンシップ、楽しい語らい、愛情を伝え合うことで分泌

 

感想

親の喧嘩を見聞きするだけでも影響がある。言葉遣いには最大限気をつけなければいけない。

また、子どもの世界では親の言うことがすべてある、ということも忘れないようにしないといけない。大人の感覚で軽口を叩いたつもりでも、子どもは全く違う受け取り方をする。自分が子供の時、どう感じていたかを思い出そう。

子どもを信じること

要約

「子どもが自分の思い通りに動く」「子どもが失敗しないこと」を”信じる”のではなく、「子どもが失敗しても自分で立ち上がる強さを持っている」「たとえどんなことがあれ子どもは愛するに値する存在である」ことを”信じる”。

なので、指示・命令は極力減らして優しく接し、子どもの思いに寄り添うことが重要。家は子どもにとって心が休まる場所でなければならない。アイスクリーム療法もその一つ。

 

内容

I 診察や面接で気が付いたこと

  • すぐに変われるのは親。自分の言動を改める。
  • 親の問題で子どもが不調になるケース
  • 子どもの内面の幸福に目を向ける(ファンタジーも重要)
  • ボーっとすること、何の役にも立たないことをすること、親にやさしく受け止めてもらって過ごすことが人生の重要な基礎になる
  • 安全な環境で対人関係能力を習得する時期に単純化された勉強を詰め込むのは害
  • 「見守ることができた」という成功体験
  • 「学校に行けるか」「勉強がくれないか」と心配するのは不登校に対する否認
  • 子どもへの謝罪は愛情を表現した言葉と同じ
  • 条件を付けて物を買い与えるのは愛情ではなくて取引
  • まず好きになる(生きることが好きになる)

 

II 親子の関係

  • 別れの段階
    • 誕生:物理的に分離
    • 最接近期:別の存在であることの気づき
    • 一次反抗期:思いの違いを意識
    • 二次反抗期:価値観の違いを意識
  • 近すぎる親:親子が未分離で、主語が誰なのかわからない話し方。巻き込まれているかのような表現。子どもを過小評価し、現実を加工。子どもの思いよりも、事実関係を切々と訴える。
  • 遠すぎる親1:子供に親の役割を押し付ける。賞賛させる。子どもが親の気持ちに共感することを望む。
  • 遠すぎる親2:体の一部、アクセサリー。子どもへの評価は自分への評価。
  • 遠すぎる親は子供の話が退屈。内面に関心が向いていない。子どもは親の顔色を窺い、自分がやりたいことがわからない。
  • 受容のプロセス「否認」「怒り(他罰・自罰)」「受容」
  • 怒っても困っても子どもの対応力を削ぐ。親は受容すべき
  • 叱ることへの依存性は薬物依存と同じ
  • 親が子どもにしがみつくと、子どもが自分の欲求に罪悪感を持つ
  • 離れる時こそ「いつでも見守っているよ」と見届ける
  • 親の脅しは効きすぎる。楽観的に、世界を好きになるように。
  • 防衛機制:自分の心を守るために無意識に問題の源を隠す
    • 合理化(酸っぱい葡萄)
    • 引きこもり:心のクールダウンも
    • 否認
    • 置き換え:困難な現実を対処しやすい別の問題にすりかえ
    • 投影:自分では認めたくないものを他人の中に見出す。自他の未分化。「子供の意思」
    • 抑圧:自分と相手の間にある問題として認識
    • 打ち消し:成長による別れが寂しい
    • 万能感:願掛け。楽観性の元。
    • 攻撃者への同一化
    • 準備:先回り
    • 乖離:外への関心・行動への欲求のスイッチを切っている状態
  • 子は親の鏡。つらかった過去を見せつけられたと思ったら、人生の先輩として子どもを支える

 

III 子供とのコミュニケーション

  • 5W1Hを使わない、事実のやり取りではなく思いを伝え合う
  • 子どもは話し始めに自分が何を話したいのかわからないことが多い
  • 聞いてほしい、聞いてもらえたという体験
  • 家ではくつろがせる
  • 褒めるのではなく、受け入れる(褒められることしかしなくなる、誘導していないか?)
  • 親を避けることは、人を避けること
  • 「トラウマ返し」子どもが昔の不満を訴えるー>謝るチャンス
  • 子どもはちゃんとしたいと思っている、と信じる
  • 失敗したときこそ、愛情を示すチャンス
  • 一時的な退行は、その時克服しそこなった課題をもう一度やり直している
  • 「会えるはずがない過去の時間から、幼い頃の子どもが会いに来てくれている」

 

感想

自分は遠すぎる親1だと思う。

人はなぜ物を欲しがるのか

要約

所有がなぜ発生するのかを社会的・生物学的観点から整理し、我々がなぜ所有をやめられないのかを明らかにする。所有は格差を固定し、環境へも悪影響を与える「悪魔」的存在。文化によって所有への自己感は異なるので、教育次第でどうにかなるという希望もある。

内容

第1章 本当に所有していますか

「所有とは」という問いに対し、様々な視点・歴史的事象を提供

  • 自分の体の所有権は誰にあるのか、処分権、遺体の所有者
  • ジョン・ロックの財産の定義「労働という形で、あるいは購買による価値の付与という形で、自分が労力をかけたものに関しては、財産所有権を主張できる」ー>奴隷制では矛盾をきたす
  • 実際には文化ごとに財産の定義は異なる
  • 妻の所有権・子の所有権
  • 6歳ごろには知的財産権を理解
  • ジェレミーベンサム「所有は・・・頭の中にある概念にすぎない」
  • 法律・ルールによる所有と心理的所有

 

第2章 動物は占有するが、所有するのは人間だけ

所有という概念が社会になぜ必要で、小さい子供でも身につけているのか

  • 競争心が所有欲を刺激
  • 占有:資源の排他的アクセス権(最初の占有者ルール)
  • 所有:政治体制・法制度が発展すると生じる(譲渡・継承は所有のルールに従う)
  • 人間は所有物に自ら価値を見出した最初の物質主義の動物
  • 人間は第三者が他人の財産を守る介入を行う(3歳)
  • 地球規模でコモンズの悲劇を引き起こしているのは、自分には法的な所有権があると信じる個々の国

 

第3章 所有の起源

所有という概念をどうやって身につけるのか

  • 概念に基づいているという意味で、所有もコンセプチュアル・アートも同じ
  • 子供の所有権の身につける順番は順位性・友情・利他的
  • 所有の概念の確立は視覚的関連付けと言語による指示
  • 所有者の判定に必要なものは意図・目的・傾注された努力(コンセプチュアル・アートは意図が最も重要)
  • 移行対象に代表されるように、所有こそ幸福の源と信じて所有物を蓄積する

 

第4章 それが公平というものだ

公平とはなにか、そしてなぜ格差が生まれるのか

  • 幼児期から不平等は許容されない
  • 大人は努力した分報われるべきという公平性を重んじる
  • 正確に見積もれないので実際には公平ではない
  • 所有が格差を生み、保存され、不公平を永続させる
  • 互恵的利他行動は動物にも見られるが、所有があると特に相手を見極める必要があり、違反者の情報を正確に記憶するために怒りが発生する
  • 不純な利他主義とは他社の意見を内在化した内側からの動機づけ
  • 事前行為すらも「名声」を「得る」という所有行為

 

第5章 所有と富と幸福

なぜ所有物を増やすようになったのか。そしてなぜ所有物を増やしても幸福感は頭打ちになるのか。

  • 消費主義は産業革命以前から存在
  • 産業革命で、過剰生産の問題を賃金引き上げによる購買力上昇で解決
  • ブランド品はシグナリング
  • カウンターシグナリングは意図的に規範に背くときのみ有効
  • 超富裕層はロゴの目立たないブランド品を所有することで一般人の妬みを避けつつも、その層の中でのシグナリングを行う
  • 富によって幸福になれないのは、相対的に比較をするから。常に上は存在する。
  • 快楽順応により、常に新しいものを追い求める
  • 所有物を見せびらかしたいという欲望は、教育投資を不可能にし、悪循環を生む
  • 収入の増加に対し、幸福感は頭打ちになるが満足感は比例する
  • モノよりコトを買うほうが満足感は大きい。モノは飽きるが、コトは思い出すたびに美しい思い出に変化するため。

 

第6章 私のものとは私である

所有物と自己感

  • 「所有物を通して自己のシグナルを他者に発信しているが、所有物はまた、自分は何者かというシグナルを私たち自身に発信し返すもの」
  • 個人主義/集団主義と水平的(見せびらかしに嫌悪)/垂直的(見せびらかしによる地位向上)
  • 自己感は文化的なもので決まる。教育により所有に対する態度が決まる
  • 「藪の中の二羽より手中の一羽」

 

第7章 手放すということ

なぜ所有に関して非合理的な行動をとるのか

  • 「授かり効果」も個人主義/集団主義で異なる
  • 獲得したいと追い求める心が消費主義を作る
  • 土地への所有者意識がアイデンティティを形成
  • 自己と同一視する所有物を過大評価するが、同時に所有物に慣れて多くのものを所有しようとする。そしてそれにより自己をよく見せようとする。非合理的な行動。
  • 「私たちは所有という悪魔に取り憑かれている」

 

おわりに

1〜7章のまとめ

  • 「所有すればするほど、不公平は大きくなる。道徳的に好ましくないというだけでなく、環境を破壊し、政治を分断させる。」
  • 「所有物の増加でかえって惨めな思いを味わう人もいるということが、科学的に立証されている。」
  • 「必要なのはもっと多くのモノではなく、いま手にしているものの価値に気づけるだけの十分な時間だ。」

感想

「では、どうすれば所有の問題を解決できるのか」といったことが具体的に示されてはいない。しかし、所有したくなるメカニズムを理解することで少しでも所有欲にあらがうことができると考えられる。

 

「はじめに」にある「消費者向けの広告の大部分は、『この商品を所有すればもっと幸福になれます』という”約束”を売ることで成り立っている」という文には、なるほど感じた。

失敗の本質

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

他著者情報

概要

第一章で各作戦の概要・失敗の原因を研究し,第二章で書く作戦に共通する日本軍の組織的・構造的欠陥を抽出.第三章ではそれらを知識化した上で現代の日本に当てはめ,警鐘を鳴らす.

目次

序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
一章 失敗の事例研究

1 ノモンハン事件
2 ミッドウェー作戦
3 ガダルカナル作戦
4 インパール作戦
5 レイテ海戦
6 沖縄戦

二章 失敗の本質
三章 失敗の教訓

感想

1980年台に出版された本であるにもかかわらず,今の日本の凋落ぶりを予言するような内容.日本軍の組織的・構造的欠陥を克服できていない日本には失望を超えて乾いた笑いしか起こらない.

失敗の本質

失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

他著者情報

概要

「本質の失敗 日本軍の組織論的研究」の著者たちが新たにリーダーシップに注目して日本軍の失敗を述べた本.

目次

I リーダーシップの本質
第1章 戦場のリーダーシップ(野中郁次郎
第2章 リーダーは実践し,賢慮し,垂範せよ(野中郁次郎

II 組織とリーダーシップ
第3章 失敗の連鎖 なぜ帝国海軍は過ちを繰り返したのか(杉之尾宜生)
第4章 プロフェッショナリズムの暴走(戸部良一
第5章 「総力戦研究所」とは何だったのか(土居征夫)
第6章 「最前線」の指揮官の条件(河野仁)

III リーダー像の研究
第7章 石原莞爾 官僚型リーダーに葬り去られた不遇(山内昌之
第8章 辻政信 優秀なれど制御能わざる人材の弊害(戸部良一
第9章 山口多聞 理性と情熱のリーダーシップ(山内昌之

IV 戦史の教訓
第10章 情報敗戦 本当に「欧州ノ天地ハ複雑怪奇」だったのか(杉之尾宜生)
第11章 合理的に失敗する組織(菊澤研宗)
第12章 派閥の組織行動論(菊澤研宗)

感想

新たな知識もあるが,基本的に「本質の失敗 日本軍の組織論的研究」の焼き直しといってよい.「本質の失敗 日本軍の組織論的研究」は失敗の分析,要素の抽出,さらにはそれを今の社会に適用するという非常にねりこまれた内容となっているが,本書はそこまで深掘りされているとはいえない.


<フロネティック・リーダーの要件>

  1. 「善い」目的を作る能力
  2. 場をタイムリーにつくる能力
  3. ありのままの現実を直観する能力
  4. 直観の本質を概念化する能力
  5. 概念を実現する政治力
  6. 実践知を組織化する能力

現場感覚=2,3
大局観=1,5
判断力=4.6

参考図書等

「フランス敗れたり」,アンドレ・モーロウ

失敗学と創造学

失敗学と創造学―守りから攻めの品質保証へ

失敗学と創造学―守りから攻めの品質保証へ

他著者情報

  • 1960年生まれ.
  • 1986年日立入社.
  • 1998年東大博士.
  • 2002年助教授.
  • 2007年現職.

概要

失敗事例を事例の集積で終わらせず,上位概念化=抽象化=知識化することで他の事例に適用できるようにすることが大切.ただし,失敗を未然防止に役立てることは創造することと同じぐらい難しい.


目次

第I部 リスクマネジメントのための失敗学
第1章 なぜ失敗は起こるか
第2章 失敗学のエッセンス
第3章 設計論的アプローチ
第4章 再発防止と未然防止
第5章 上位概念に登る方法Ⅰ
第6章 創造職の未然防止
第7章 運用職の未然防止
第8章 信頼性設計
第9章 攻めの品質保証


第II部 創造学-創造的な発想法-
第10章 創造学の必要性
第11章 要求機能と思考展開図
第12章 競合他社に差をつける逆演算発想法
第13章 設計と設計支援法について

感想

マニュアルにからくり図をつけるというのは是非真似したい.また,上位概念に登る方法として「なぜなぜ法」ではなく「部分否定」を用いる手法も有効だと思った.

具体例をふんだんにもりこんでいてわかりやすい.ただし,それゆえに内容が物足りず,2600円という金額が少々高く感じる.

 

参考図書等