無い袖はノースリーブ Twitter

2014-02-06

新しき世界

It’s A Man’s Man’s Man’s World
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オフィシャルサイト

親愛なる友へ
 君がこれを読んでいるということは、私はもうこの世から居なくなっているのでしょうね。いや、居なくなったというのは少し違うかな。少なくとも君の知っている私ではなくなってしまっていると思います。
 突然こんな手紙を送られて戸惑っている君の顔が目に浮かびます。でも、どうしてこんなことになったのか君にだけは説明しておきたかったのです。言い訳、もしくは懺悔と思ってくれてもかまいません。

 順を追って話しましょう。あの日、私は友達に誘われて一本の映画を観に行きました。タイトルは『新しき世界』。韓国の映画です。友達は「一緒に観よう。君にぴったりの作品だ」と言いました。内容の分からないものを観るのは少し怖かったけれど、友達を信用していたので軽い気持ちで新宿に向かいました。そのとき初めて、この映画のポスターを見たのです。そこにはスーツを着た三人の男性が描かれていました。それを見た瞬間、私は自分が逃れられない罠にかかってしまったのを知ったのです。
 
 『新しき世界』はいわゆる黒社会映画で、潜入捜査官が主人公の作品です。しかしここでその内容についてくどくどと説明することはしません。どれだけ細かくあらすじを説明したところでその後の134分の間私が受けた衝撃を表す言葉にはならないからです。

 一言で言うと、物凄いやおいでした。

 今きっと、君は呆れた顔をしているのでしょうね。確かに私はリアルでもTwitterでも一日30回はやおいやおいと呟いています。起きている時間の9割は男と男の掛け算問題の答えを探すことに費やしています。なんでもかんでもやおいにしやがってこのスベタ腐女子が。君はそう思っているかもしれません。ですが、私はこの世にやおいに出来ないものなどひとつも無いと思っています。その上で、『新しき世界』は森羅万象の中でもほんの一握りのものだけが到達できる「凄いやおい」のポテンシャルを秘めている作品だと言いたいのです。

 主人公である潜入捜査官のジャソンは表向き犯罪組織ゴールドムーンの幹部として生活しています。口数の少ないシュッとしたクールなタイプです。ジャソンのボスであるチョンチョンはお喋りで陽気でお茶目なタイプです。二人は上司と部下の関係なわけですが、そのやりとりはフランクです。時にチョンチョンを無視し、時にタメ口になり、時に身を挺して守るジャソン。時にジャソンをからかい、つつき、ウインクし、……するチョンチョン。強い信頼関係を感じさせる間柄ですが、ジャソンは潜入。その絆は偽りです。いや、偽りでなくてはならない、と言ったほうがいいでしょうか。

 知っていますか? 潜入やスパイなどの「誰かを騙して取り入る」職業物語は、どこかNTR……ネトラレの香りがします。映画の中のスパイや潜入はしばし本来の伴侶である組織を裏切り、一時の関係のはずだった犯罪者と真に愛しあうようになってしまいます。ふたりの男の間で揺れ動く男……アンダーカバー公務員たちは、皆よろめく人妻です。この映画の人妻ジャソンが最後にどの男を選ぶのか、ここに書くのはやめておきます。ただ、私はその選択を前に静かに涙を流しました。

 この映画は恐ろしい映画です。ねばつく血とセメントの熱さ。曇天の海原の冷たさ。男たちが鎧のように纏うスーツの黒。飛び散る血の暗褐色。五感を揺さぶる画面の中で、いわゆる「いい顔」の男たちが、どんどん眩いほどに美しく見えてくるのです。ジャソンはファーストカットでは美肌の東野幸治に見えました。しかし時が進むにつれ物語の悲劇性と比例するようにその容貌が変化していき、最後にはまるでラファエロの描く聖人のような美しさを放ちだすのです。そのとき、私はこの映画の魔力に完全に魅入られてしまったのに気付きました。

 我に返った時にはすでにPCの中に新しいフォルダが作られており、数百枚の画像と百個近いブックマークが並べられていました。言葉も、ローカルルールも、何もかもが分からないのに韓国腐女子の伝えたいことが私には分かるのです。そこには国境も環境も全てを超越した一つの共通言語、この世の平和の鍵になるかもしれない新世紀のエスペラント――やおいが、静かに、そして力強く横たわっていました。

 この辺りで筆を置きます。もう時間があまりありません。そろそろ佐川のお兄さんがDVD(韓国版初回限定盤)と母のお下がりのハングル勉強セットを配達してくる頃です。それを受け取ったら、本当にさようならです。でも、悲しまないでください。私の行く新しき世界は楽しい場所のようです。淵から中をのぞくと、笑顔のお姉さんやお兄さんが空の財布を振って歓迎してくれているのです。底が見えないほど深いので、一度潜ったらもう二度と戻ってこれないかもしれません。ですが、私はさらなるやおいを探すためこの韓国映画の沼に沈もうと思います。それでは、君も身体に気をつけて。アンニョン。

※追加※
何日経ってもこの映画のことが頭を離れずTwitterでもウザいほど妄想を垂れ流してしまったので、追加でまとめておきます。
妄想1
妄想2

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追伸:早速中の人が出ているTVCMにお宝の匂いを感じました。
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