「声の網」

どこかで誰かの話の中で出てきた「声の網」、amazonでカートに入れっぱなしにしていて、何かのついでに買って積ん読状態だったモノを読み終えました。

声の網 (角川文庫)

声の網 (角川文庫)

そこには「ボッコちゃん」とはかなり違う印象の世界が広がっていた。

1970年

本作品が書かれた1970年がどんな年だったのか、Wikipediaで紐解いてみた。
wikipedia:1970年

本書が書かれたのは、そんな時代である。ちなみに、私もまだ産まれていない。
そこに書かれている未来は、電話が発達した未来。しかし、内容からすると現在のインターネットに相当するものである。さらにその技術に依存した生活に潜む暗闇が生み出すモノを描いており、その先見性には驚くばかりだ。
本当に秀逸なSF作品。

科学は進んでも

科学はどんなに進んでも、人間の本質はほとんど何も変わらない、と星新一は予測しているのか、そこに出てくる登場人物の抱く感情、行動する内容には全く違和感がない。
実際そうかもしれない。
コンピュータが進化し、インターネットが整備され、情報処理技術がどんどん進んできても、人間には人間という制限がある。
本書を読みながらそんなことを考えていると、その制限を抜け出すべきだ、ではなく、その制限をまず認識すべきだ、と思えてきた。

「そう、あなたの考えているとおりだ」

そんな声が聞こえる気がする

その声は、星新一の声かもしれない。