石垣は恋する

ふた巻きした「ひとえ接ぎ」は形容矛盾ということになるが、異径綱の結びに理に叶ったもので、キーリングと茄子環のコンビの定番のその一とします。飛行機会社の機内誌に一頁掲載で始めてから今日までの三年余に、こうした試作を五〇〇も作っただろう。

ロープ欠片を掃いて棄てる度に、妙な手慰みが止まらないのだ。この写真こそ、そのtype・1である。

二重リングはシルバーとゴールドの二手あって、刻印を特注してある。ロットは2000個では引き受けてもらえなかったから、私の寿命より永い我がミュージアムの行く末を祈念することになった。

刻印は字面ほどロマンチックなものではないが、その意図をまだ語るべきでない。

遅れに遅れたVOL.2の、小文部分をようやく送った。裏表紙は00293革靴のトゥリッペンで、結びは「引き解け」のこの「ひとえ接ぎ」になっている。

トゥリッペンは五万円近いから二足しか手許になくて、24通りに結ぶ趣向をVOL.2の発行にあわせて準備しているが、結んで解いて……を繰り返した写真記録に依らなければならないのが情けない。

まずはその出来に満足した00293を外さなければ続く23通りの作業に踏み出せなくて、文字通り二の足を踏んでいるのだった。まだ停滞するだろう。