ナンバーを廃す

スニーカーを350足結んだ──と言ってきたが、そのほかナンバーリングしなかったストックがある。手染めのカラーリングのコンビネーション不調の片割れや、染め以前のスニーカーなど数を把握していないが高温多湿の環境下でカビの有無を確かめる必要があった。いくつか難あるモノを徹底的に漂白・重ね染めしたら、こんな深みのある配色コンビが生まれた。

そのカラーリングに導かれて、売るのが惜しいようなTYPE 318が結べた。整理番号は138-1とメモしてここからTYPE 318が新たに始まる気がするが、このメモは作者の中にとどめナンバーリングは次期図録に記載しない。

ところでTYPE 318にも、いくつかのバリエーションが派生しているのでいずれ詳細を示す。

ナンバーリングについてだがはじめ「ダッシュ化」と言っていた318、左右のコンビを組み替えてダッシュ化したものには異なる番号が生まれてしまっている。それが三足に渡った場合、もう収拾をつけることを諦めた。これも、以降のナンバーリング撤廃の理由だ。

350足結んだことだがその後200足程度ダッシュ化しつつあるとしたら、550足結ぶことになる。その途中からトリッペンカンペールモカトミックなどスニーカー以外も100通りづつ結びつつあるから、当初のDM宣言とおり「1000通りに結ぶ」ところまで到達するかもしれない。

「318」は紐靴の新しいスタンダードを拓くものかもしれない……、この写真を見ているとそんな気さえする。時代の変遷とともに暮らしの中にあった生活技術も、盛衰を繰り返すことは自明のことだ。だが私が自家薬籠中のこととした結びの命脈を保つ願いを、「318」に込めた。

紐靴を作る職人も彼らを抱える工房も、レディー・メ―ドのオーダー発注者や相手先ブランド製造の下請けの現場労働者に至るまで、エンドユーザーの指先で滅んでゆく結びを前にして今後に対する展望を失っている。


写真からどの程度想像していただけるかわからなが、見た目以上に手間がかかっている。助手が二人になったが、だからと言って時間が稼げるわけでなく製作持続力が高まったに過ぎない。TYPE318を一足結ぶ製作コストは、私のギャラリー売り渡し価格でも4000円を下回らないだろう。靴代は別で! そんなスニーカーの紐の結びをスタンダードと呼ぶのには、やはり無理があるナ……。