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2008-12-31 (Wed)

『アップルを創った怪物 もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』

2008年最後の読書年末の比較的ゆったりしたときにこの本に没頭して終えられたことを本当に幸せに思う。素晴しい本だ。というかウォズが素晴しい人だ。読むと泣く。

この日記を見ている人には言うまでもないが、Appleを作った2人のスティーブのうちの1人がウォズだ。本書はその彼の語り下し自伝iWoz』の全訳である。EditorのGina SmithがWozに55回もインタヴューを重ねてまとめたという本書を井口耕二さんがしっかりとした技術的知識に裏打ちされながら軽妙な語り口で翻訳されている。

原書も発売直後にそれなりに話題になったので興味は持っていたが、山形浩生さんの査読を斜め読みしたら「きわめて食い足りない」と書いてあったり増井俊之さんもblog微妙な感じに紹介を書いてたりして、それを英語で読むのはつらそうというか読める気がしなかったので買わずにすませてしまった。もちろん買っても積まれていただけだろうことは想像にかたくない。ともかくそういう事情翻訳が出てもあまり過剰な期待は抱かずに(とはいっても他ならぬ井口さんの訳なのでつまらないということはなかろうと思いつつ)読みはじめたが、一気に読めてしまった。

生い立ちから父に影響されてエレクトロニクスエンジニアリングに興味を持ったことに始まり、Apple II誕生までで全体の2/3くらいが費されている。私自身はApple IIリアルタイムに接してはいないので、そのエレガントさや革命的なアイデアなどに肌で触れたことはない。ただただ先達から伝説を聞かされたのみであるが、そこに至るまでの過程はとてもよくわかった。おそらくエンジニアでなくても雰囲気はわかると思う。と同時に、やはり天才性を意識せざるを得なかった。

天才はとにかく没頭している。アタリに頼まれてブレイクアウトを4日間一睡もせずに作った(そしてそれを売った代金をジョブズごまかされた)だとか、Apple II用に5インチフロッピーディスクを使おうとしてコントローラの出来が悪かったので徹夜しまくって改良したらめちゃ速くてチップ数も減っただとか、そういった「夢中になって徹夜してるうちに出来ちゃった」的な描写がそこらじゅうに出てくる。もちろん徹夜すれば誰にでも出来るようなものでは断じてない。ウォズだから出来たのである。しかしそういったことを本人が気負いなく語っているので、文章中から彼の笑顔がにじみ出てくるようだ。

本書を通して彼は何かすごいものを作りたかったら1人で作ることだ、とも言っている。ウォズが1人で没頭してくれたからこそパーソナルコンピュータ革命があった。でなければApple IIはもちろん、MacintoshNeXTiPodiPhoneもなかったのだ。そう思うと気が遠くなる。私は特別に思い入れがあるから冷静に判断出来ていないかも知れないが、この文中で何度も使った「革命」という言葉を感じたい人には特にオススメだ。


関連記事

2008年12月に読んだ本から

終わってみればあれほど忙しかったにも関わらず14冊と、決して多くはないものの10, 11月よりは冊数は増えていました。まあ後半というか仕事が終わってから読んだものもあるし、本当は読んでないもの(バイヤール)も混ざっていますが。

印象で言ったら記憶が新しく、かつとてもワクワクする本ということでウォズの本がいちばんなんだけど、それは同じ日にたっぷり書いたのでそれ以外のもので、やはり今月はこれか。

世界経済危機 日本の罪と罰

世界経済危機 日本の罪と罰

あとは裁判員制度が始まったのに合わせて読んだコリン・ジョーンズ氏の2冊はどちらもとても明晰でわかりやすく、ユーモア皮肉もありで面白かった。久しぶりにまるまる一冊を没頭できた関川夏央もよかったなあ。そして最後にたかはしさんも取り上げていたバイヤールか。これがあればもうどんな本が来ても安心です。

2008年に読んだ本ベスト10

そのままたたみかけるように年間ベストに行きます。2008年にこの日記タイトルだけでも記録している読んだ本は合計169冊(コンピュータ関係雑誌は除いてます)。それ以外に書いてない本がちらほらあるから、だいたい2日に1冊ペースをここ何年か保っているようだ。

とりあえず今の気分で恣意的に10冊選んでみました。あとで入れ換えちゃうかも。同一著者は1冊だけ、という縛りを入れてます。時系列で。詳細はあとで書く

米原万里『打ちのめされるようなすごい本』

梅田望夫『ウェブ時代 5つの定理』

浅羽通明『昭和三十年代主義』

ジョン・クラカワー『荒野へ』

速水健朗『ケータイ小説的。 “再ヤンキー化”時代の少女たち』

吉原真里『ドット・コム・ラヴァーズ ネットで出会うアメリカの女と男』

石川拓治『奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録』

『Eric Sink on the Business of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方』

福岡伸一『できそこないの男たち』

メアリアン・ウルフ『プルーストとイカ』

野口悠紀雄『世界経済危機 日本の罪と罰』

あれ? 11冊になってしまった。まあいいか。いい本はいろいろあったが、その中でもジョン・クラカワーと出会ったことは非常に大きい。Shiroさんには本当に感謝しています。


参考

昨年、一昨年の分も参考までに貼り付けておきます。はてブ見ると、なぜか一昨年のは人気あるけど去年のはそうでもないね。

2008-12-29 (Mon)

森見登美彦『四畳半神話大系』

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

年末になると森見を読んでいるような気がする。これは文庫で出た直後に買ったのだが、寝かせてしまっていた。いや、ハードカバーも買ってたな。読まねばならんと日記に書いてから2年近くも経っている。そのハードカバー2004年に出ている。その頃知っていれば..ととみに思う。本書も素晴しいではないか。

これから読む人は、いつも通り京都が舞台であることと四畳半は正方形だなーということ以外はなにも予断を持たずに読んでみて欲しいと思います。本当に素晴しい。

このあとも本になっている森見作品は全て買ってあるのであとは読むだけなのであるが、最新作まで追い付くのはいつになるかわからない。

そういえば、ちょうど2年ほど前に読んだ私にとっての初森見作品であるところの『夜は短かし歩けよ乙女』が文庫になっているようだ。こちらも素晴しいので是非。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

2008-12-27 (Sat) 12月に読んだ本特集

今月はめちゃくちゃ忙しかったためそもそもほとんど本を読んでいないのですが、その数少ない読んだ本も隙間時間に並行してちょこまか読んで記録もしていなかったため、特に中旬以降はいつどの本を読み終わったか判然としません。

野口氏の本(これはシチュエーションから日付が判明してる)以外はもはや日付がわからないため、ここにまとめて記録しておくことにします。野口氏の本は渾身の書評書いたので(あとで書くじゃないよ)みんな読んでね。

2008-12-23 (Tue)

LIVE IN LANDMARK X'mas Night 『谷山浩子&手嶌葵 X'mas LIVE』

本年のライヴもこれで見納めです。心が洗われるとはこのようなときに使うためにある言葉だ、と思うような、最後にふさわしい素晴しいステージでした。

あとで書く、かも知れない。

2008-12-13 (Sat)

野口悠紀雄『世界経済危機 日本の罪と罰』

世界経済危機 日本の罪と罰

世界経済危機 日本の罪と罰

緊急出版。一気に読んでしまった。これは恐しい。ここ最近の出来事は「米国発の金融危機」とされ、日本企業は巻き添えを喰らって業績が落ちているというなんとなく共通した認識があるが、それを真っ向から否定している。日本は被害者などではなく「共犯者」であるり、日本経済は明確に崩壊しつつある、現に株価の下落幅は日本の方が大きい..。分析が説得的で説明もわかりやすいだけに、非常に暗い気持ちになる。

金融危機のきっかけとなったサブプライムローンは米国の住宅バブルを背景としているが、そのバブルは「輸出立国」となっていた日本からの過大な資金流入により起こった。日本は90年代後半から景気が徐々に回復しているかのように言われていたが、現実には逆で、緩慢な形で「隠れたバブル」が進行し、それが原因となってトヨタソニーなど輸出産業利益の源泉となっていたと言う。急激な円高はそのバブルが弾けたためだ。これが戻ることは最早ない、というようなことが私のような経済初心者にでもわかるように非常に論理的かつ易しく解説されている。

そもそも9月リーマンブラザーズの破綻を受けて経済危機を解説する本がなぜこれほどはやく出版出来るのか? ここがこの著者のすごいところだ。要するに、以前からの主張を繰り返しているだけなのだ。これほど主張が一貫している、ぶれがないということは、それだけである程度の理論的な正しさを示していると思われる。

これ以前の「超」整理日誌を読み返してみると本当に同じことが書いてあるのがそら恐しい。そして「モノづくり幻想」にとらわれた日本には処方箋は無いように読める。そんな中でもわずかながら著者が光を当てているのがGoogleに代表されるシリコンバレーの新しい企業たちである。ここからは、日本だとか米国だとか中国だとかいった国による違いを超えて、新世代と旧世代という対比の方が重要であるということが見て取れる。そして日本には本物の新世代企業は無いに等しい。ビッグ3に代表される旧世代企業は退場する他ないとすれば、日本の製造業も然りであろう。

かように読後感は鬱々としたものになるが、それでも危機を乗り越えたいと考える全ての人に読んでもらいたい本だ。いま何が起こっているのか? に対する明確な解説を探している人にもオススメする。


関連

2008-12-09 (Tue)

大原悦子『フードバンクという挑戦』

フードバンクという挑戦  貧困と飽食のあいだで

フードバンクという挑戦  貧困と飽食のあいだで

フードバンクとは、欧米では一般的な、食べものが十分に行き渡っていない人々にあまっているものをまわして飢えと環境破壊の両方を解決しようという運動のこと。それを日本で起ち上げた人の苦労を語っている本です。日本でこの種のことをやるには様々な無理解がたちはだかる。それに対して時にはホームレスの方々と寝食をともにして、体当りで突き進んでいくのです。詳しくはあとで書く

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