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2009-04-25 (Sat)

Andy Hunt『リファクタリング・ウェットウェア』

リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法

リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法

さて先日『プロダクティブ・プログラマ』が『The Pragmatic Programmer』の半分くらいの続編のようなものと書いたのだが、では残る半分についてはどうなんだ、というのが気になるだろう。それが本書です。

原書は『Pragmatic Thinking and Learning』で、著者はthe pragmatic programmersの片割れ(若い方)のAndy Huntで、タイトルを直訳すると『実践的な思考法と学習法』という感じだろうか。Refactoring Wetwareというのは原書ではサブタイトルである。邦訳はサブタイトルが『達人プログラマーの思考法と学習法』なので、タイトルサブタイトルが入れ換わっている。これの意図するところは不明なんだけど、勝手想像するに「リファクタリング」という語を前面に出して技術書として注目を得られるようにしたかったんじゃないかなー。原書Pragmatic Bookshelfから出ていたのでPDFで買って細々と読んでいたのですが、例によって私がちゃんと読む前に翻訳されてかつ編集の方のご厚意で出来上がった邦訳を頂いてしまいました。感謝

内容はタイトル(原書ではサブタイトル)の書く通り、人間の脳(ウェットウェア)をリファクタリングしよう、というものです。その為に使われる道具が認知心理学学習理論などで、これまでの技術書よりもずっと人間の思考の根本的なところから見直そうという努力をします。その過程でまずドレイファス技能習得5段階モデルというものが紹介されます。この5段階では初心者、中級者、上級者、熟練者ときて達人に至ります。ここで達人に達した人々は、もはや細かいルール規範を超えて直観で行動しているかのように見えるんだけど、それは実際に脳の働きが達人とそれ以外の人々では異っているということなのです。目指すはその境地であると。

そしてその境地の実現のために、いわゆる右脳の働きをRモードと呼んでこれに注意を払います。プログラマがふだん思考する際に積極的に利用するように訓練されているのは左脳(Lモード)なので、Rモードはがんばって呼び出してやらないとなかなか活性化してくれない。そのための訓練がいろいろと載ってるわけです。散歩とか瞑想とか。ベティ・エドワーズの『脳の右側で描け』の話なども出てきます。

こういった調子でドレイファスモデルに従って習熟の度合いを上げていく方法がいろいろと挙げられています。最新の脳科学と先人によって知られている経験則の両方を援用して有効な思考法・学習法を探究するのです。集中力管理する方法などにも言及し、そこでは呼吸法などが出てきます。Growlの通知を切るのとくらべると本書の異質さがよくわかるけどこれはこれで実践的。GTDやMind MapなどのLifehacker的なメソッドについてもなぜ有効なのかという考察付きで説明し、表紙の裏には本書のエッセンスマインドマップにしたものが描かれています。

ともかくそんな感じで非常にユニークな、Pragmatic Programmerの片割れの本だと思うとちょと狐につままれたような独特な印象を持つ本ですが、プログラマ向けの本として実践的で素晴しい感じ。それこそ脳科学とか出てくると理論もいくらでも掘り下げられそうなのに深入りせずにあくまで思考と学習に必要な要素だけをさらっと解説したり、やはりとてもpragmaticです。そんな感じで読んでもらえば確実に『The Pragmatic Programmer』の跡継ぎであることが実感できると思います。オススメです。

蛇足ながら訳も大変適切で素晴しいです。単純な技術書ではなく、さりとて自己啓発書でもなく、という本書の内容は翻訳者泣かせだったと思うのですが(実際原書で読むのもけっこうタイヘン..)、とても読みやすくなっています。安心して購入してください。

Pragmatic Thinking and Learning: Refactor Your Wetware (Pragmatic Programmers)

Pragmatic Thinking and Learning: Refactor Your Wetware (Pragmatic Programmers)

The Pragmatic Programmer: From Journeyman to Master

The Pragmatic Programmer: From Journeyman to Master

2009-04-21 (Tue)

Neal Ford『プロダクティブ・プログラマ』

翻訳はO'Reilly書籍ではおなじみ夏目大さん、監訳に島田浩二さん(!)ということで島田さんのご厚意で頂いてしまいました。これは原書スルーしてたので今回はじめて読みました。*1

著者はMartin Fowlerがいる会社ThoughtWorksのスタッフコンサルタントです。タイトルの通りにプログラマが「プロダクティブ(生産的)」であるための心得とかtipsとかを直球で解説する、という内容。生産的になろうということをうたう書籍にはいくぶん精神的な、自己啓発っぽい内容が含まれることが多いですが、本書はそういう要素がほとんどなくて拍子抜けします。大きく「技法編」と「実践編」の2部構成になってますが、どちらも技術の話をしています。例えばQuicksilver使えとか。

他にも少し取り上げましょう。集中について書く章で、気を散らす要因を減らすために何をするか、というのがテーマになる。これには私も日々気が散らされまくりなのでとても気になるのだが、本書ではまず「Growlの通知を切る」こと。素晴しく実践的。すぐに真似できます。

こんなことばかり書くとなんか細かすぎる本のように思えるかも知れないが、実のところこれこそがプログラマが成長して行く道筋なんだよね。自分初心者だった頃に、先輩スタッフのshellのコマンドの扱いを見てるとなんか自分のより賢い動きをするので不思議に思って真似してみるとかそういった経験をある程度の経験を積んだプログラマは皆やっていて、本書はそれを独習したい人のために書かれているのです。

後半の実践編ではテスト駆動開発とかYAGNIなどの最近は一般的になってる考え方の他、オブジェクト設計常識に対する挑戦といったことも話題になります。挑戦とはいってもそれはJava Beansを捨てるとかGroovyを使ってみるとか、もうJavaからRubyへ的な道を通り終わってしまった人には不要なことだったりするのですが(本書のサンプルコードはほとんどJava)、これも一定の制約条件(言語の選択とか)がある中でどうやって自分の出来ることを大きくして行くか? という問題に対しての取り組み方としてヒントになるでしょう。まだその道を通ってない人にはそのまま役に立つのはもちろんのこと。

そうやって振り返ってみると、本書はまさに10年前の『The Pragmatic Programmer』(邦題『達人プログラマー』)の再来とも言える内容を含んでいます。もちろんPragmatic Programmerの内容はもっと広いのだけど、その要素を精神編と技法編に分けたときに技法編にあたる部分の続編的な内容に本書はなっています。

そして残りの半分については、もう1冊、まさにちょうどよくその内容をカバーした本があらわれました。ということで次の日に続く。

The Productive Programmer (Theory in Practice (O'Reilly))

The Productive Programmer (Theory in Practice (O'Reilly))

The Pragmatic Programmer: From Journeyman to Master

The Pragmatic Programmer: From Journeyman to Master

*1感想が遅くなてごめんなさい..これ書いてるのは6月..

2009-04-18 (Sat)

ローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』

ハチはなぜ大量死したのか

ハチはなぜ大量死したのか

原題は『Fruitless Fall』で、これはレイチェル・カーソンの『沈黙の春(Silent Spring)』に対応しているかのよう。北半球に生息するハチの1/4が短期間のうちに消えてしまった、という謎を追っていく、知的興奮が詰まった本の中から現代社会への警笛が聞こえてくるという、ものすごくスリリングな本です。超オススメ

詳しくはあとで書くミツバチかわいいよミツバチ

2009-04-10 (Fri)

田中秀臣『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

ものすごく乱暴にまとめると、若者非正規雇用がどうとか派遣切りがどうとか言ってる雇用問題というのは、要するに経済的な問題であって、経済政策やもっと積極的には金融政策とセットで考えないと意味がない、この不景気なときに雇用対策単体で議論してもしょうがない、というようなことを前半書いて、後半はだから金融政策重要だよね、という期待通りのリフレ派の主張になる。

例えば今は悪のように言われている年功序列終身雇用賃金体系も企業への忠誠を得るための策としては効率的で、かつ年数%の昇給インフレ下では相対的な負担は小さい。これが金利が限りなく0%に近い状況では定時昇給も負担になる。要するにいま問題になっている企業の危機は全て景気が悪いからなのだ。

他には、若者がより高待遇を目指して教育訓練に投資することをせず、低賃金の非正規労働に身をやつしているのは双曲割引によるものだとか(私自身はそれはちょっと直接あてはまらないんじゃないか思うが)書いてあって面白い。

ただ、結論として金融政策に原因を求めているので、個人で失業率10%時代に立ち向う術を知りたいと思っても、そんなものはない、と言われてるようであんまり明るい気分にならないという。余裕のない人は読まなくていいかも..。これも双曲割引かな。

2009-04-07 (Tue)

川島博之『「食糧危機」をあおってはいけない』

まだ書きかけ。

「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)

「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)

言うまでもなくこのタイトルは、ロンボルグ『環境危機をあおってはいけない』にならって付けられている。そのためか、本書の帯にもロンボルグの本の訳者である山形浩生さんの推薦文が付いている。その山形さんの推薦文を転記しておこう。

ぼくはすでに四〇年以上生きてきて、これが何度も繰り返されているのを見ている。そして一度たりとも、危機論者のあおるような危機が起きていないのも知っている。それは危機論者たちが根本的にまちがっているからだ。もうこの手の扇動にまどわされないようにしようじゃないか。そのためにの絶好の一冊がこの本だ。

BRICs諸国の成長によって所得が増えたことで肉食が広まると、飼料用の穀物需要も増える。結果的に世界的に食料不足が起きる。というような言説をデータを使ってひとつひとつ反証していく。非常に説得力がある。

続きはあとで書く

2009-04-05 (Sun)

『More Joel on Software』

More Joel on Software

More Joel on Software

まだ書店配本前ですが訳者青木靖さんから頂きました。『Joel on Software』『BEST SOFTWARE WRITING』『ソフトウェア開発者採用ガイド』に続いて4冊目のJoel本も邦訳出来。素晴しいです。

全記事がblogで公開されているとはいえ、こうやって1冊の本にまとまると、記事の分類や単純な時系列ではない並べ方などにストーリが生まれるのでそれだけでも新たな発見があり、これが日本語でまとめて読めるのはとてもうれしいです。今回は「マネジメント」「プログラマを目指す人へのアドバイス」「デザインの力」「大規模プロジェクト管理」「プログラミングアドバイス」「ソフトウェアビジネスを始める」「ソフトウェア会社の運営」「ソフトウェアリリース」「ソフトウェアの改訂」と9つのテーマで全36章の各記事が分類されています。

オンラインで読んだときにもすごく強い印象が残っている『第1章 はじめてのBillGレビューのこと』最初の章の最初の読み物になってるのがいいですね。他にもお気に入りのエピソードはたくさんあるのだが、日頃ブラウザの挙動に頭を悩ませているウェブデベロッパには『第17章 火星のヘッドセット』とか、ハンガリアン記法が世間には間違って伝わってしまったことを思い出させてくれる『第23章 間違ったコードは間違って見えるようにする』など、ものすごく深いレベル技術精通していないと書けない内容でこのあたりがJoel on Softwareのいちばん美味しいところだと思う。プログラマ生産性という古くからある問題に鋭く切り込む『第26章 ソフトウェアにおける高音域』も彼にしか書けない。

とまああらためて私が言うまでもないんだけど、いちいちあげていったらキリがないくらいそれぞれが面白い。もとからボランティアでJoelの記事をたくさん翻訳していた青木さんなので訳も大変安定していて素晴しく、これでまた多くの人がこの魅力的なエッセイに接っすることが出来るというのは本当にめでたいです。


関連

この日記で取り上げたJoel on Software関連の記事。

2009-04-02 (Thu)

浜野喬士『エコ・テロリズム』

エコ・テロリズム―過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ (新書y)

エコ・テロリズム―過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ (新書y)

表題のエコ・テロリズムとは「放火爆弾、器物損壊といった暴力行為を伴う過激な環境保護動物愛護(解放)運動を指す概念」のこと。日本ではシー・シェパードが起こす事件が報道されることによってこうした活動が知られるようになった。それらの団体の来歴や活動内容、彼らの行動原理などがわかりやすく解説されており、とても勉強になった。

続きはあとで書く

関連
日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか (幻冬舎新書)

日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか (幻冬舎新書)

読んだはずなのだが書評エントリが見つからない..。

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