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踰矩ブログ(耳不順を改め) RSSフィード

 2016年の新年に当り、弊ブログのタイトルを変えることとした。論語の「70にして心の欲する所に従い矩を踰えず(のりをこえず)」をもじり、矩を踰える趣旨で「踰矩」ブログに変える。音読みで「ゆく」、訓読みで「のりこえ」と読んでほしい。今までの「耳不順ブログ」にもそれなりに愛着があり、また、継承関係を示す意味で、「踰矩ブログ(耳不順を改め)」とかっこを付けた。  趣旨の詳細は、2016年1月1日付けの記事で説明してあるが、要するに、長いサラリーマン生活を終え、60歳、70歳になって気ままに過したいということだ。
 本ブログは、2006年頃から非公開で書き溜めていたものを2010年に公開し、その後諸事に関する私の雑感を綴ってきた。タイトルの「耳不順」、「踰矩」に従い、偏った視点でと思ってきたが、そのことより、長い、くどい、話題が固いと評判が悪い。
 本ブログにコメントが寄せられても、有難いことだが、かねての方針通り、原則として耳を傾けない(順わず)こととします。マナー違反にご容赦のほどを。(2016年1月記)
 似顔絵の経緯は、2011年12月11日のブログを参照。 [累計アクセス数統計については、2017年8月7日以降、はてなダイアリーのカウンターサービスが廃止となった。]

2013/03/31 (日)

[][]LTEモバイル無線ルーター

 この3月は1年掛りの懸案だった我が家のITインフラの2つの変革をした。LTEルータータイムシフト・テレビだ。今日はLTEルーターで、次回はタイムシフトブルーレイレコーダーを説明する。

(2012年のWIMAXとの契約)

 昨年4月の弊ブログ(id:oginos:20120408 「ネット環境の完全無線化」)で紹介したように、昨年3月に我が家では従来の光ファイバーからWIMAXという無線ルーターに入れ替えた。WIMAXは、公称下り最大40Mbpsという回線スピードだが、そのブログでも書いたように、パソコン段階の実効速度だと1-8Mbpsと遅いし、若干不安定な時がある。友人からは全無線化とは度胸があると冷かされた。

 私が2012年3月3日にWIMAXと契約した12日後にイーモバイル社が下り最大75MbpsというLTE(Long Term Evolution)方式のPocket WiFi LTEを発表した。これに替えたくなったが、WIMAXの契約によれば*1、1年間の期間拘束がある。拘束はあるが、月3,880円でしかも当初2か月間無料で安いことは安かった。

 つまり、今年の3月になれば解約可能だ。ただし、更新月(すなわち3月)を過ぎると解約手数料5,250円が発生する。替えるとしたら、この3月中に替えなければいけない。

(LTEへの契約変更)

 ということで、近くのコジマ電気に行った。WIMAXの契約相手はLTEは出していない。1年前に発表されたイーモバイルPocket WiFi LTEは健在で、機種も増えている。LTE携帯電話では昨年のドコモのXi(クロッシー)の後、auソフトバンクも参入した。しかし、モバイルルーター(すなわちデータ通信のみの端末)では、auは無い。それでイーモバイルドコモソフトバンクの違いをコジマ電気の店員に聞いた。

(表)各社の第4世代(LTE)モバイル無線ルーター

会社下り最大速度月額速度制御(本文で説明)備考
イーモバイル 70Mbps3,880円1日当り300万パケット(366MB) 年内に115Mbps
ドコモ112.5Mbps3,980円1月当り7GB携帯の契約者以外は月額5,985円
ソフトバンク110Mbps3,880円1月当り7GB

 毎月の通信料は、ドコモが高い。ドコモ携帯電話と契約していない人に5,985円とは禁止的だ。速さは、イーモバイルが一番遅そうだが、今年中に115Mbps のサービスを提供する予定だ(今の機種はそれにも対応)。それで決め手になったのは、速度制御だ。例えばドコモは、月当り7GBの通信量の制限があって、それを超えるとその日以降月末まで速度が128kbpsに落ちる。ソフトバンクも全く同じ月単位の制限だ。これに対し、イーモバイルの速度制御は1日単位で、300万パケット(366MB)を越えると、当日の夜9時から翌日午前2時までの間だけ通信速度を落す。遅くなる速度は明示してないが切断はしない。月単位の規制だと、毎月の下旬はびくびくしなければいけないかも知れない。これが1つの決め手となり、契約することとした(3月17日)。

 ちなみにその後、これまでのWIMAXの自分の使用実績を調べて見ると、毎月のパケット数は、2000万台から3000万台(約2-4GB)で、ある月は6000万パケット(約7.3GB)だった。今後はLTEの快適さで通信量が増え、上限を越える可能性が高くなろう。日単位の方が安心できると思う。

f:id:oginos:20130331091905j:image:w360:right

(現金クーポン)

 契約に当ってのもう1つの課題は、このLTEと契約すると貰える、同じコジマ電気の店内で通用するクーポンだ。3月中はキャンペーン期間で5000円だが、この週末の土日に限り1万円とのこと。ルーターはカタログ掲載の機種GL04Pの他に最新機種GL06Pがあると言って、それを勧める。違いはバッテリーの持ち時間が10時間と12時間の違いだという。私の使い方は、基本的に家の中に置く固定型ルーターで、コンセントには常時繋いでいるから、10時間で問題ない。それで、店員と交渉した。06Pという新製品が出たから、旧型の04Pは在庫となろう、もっとクーポン金額を高くしてくれないか、と。店員はメーカーと交渉してみると言って、暫く待ったら15,000円になった。予想を上回って感激した。言ってみるものだ。それで買ったブルーレイレコーダーについては次回に述べる。

(設定のトラブル)

 それで3月17日に買って、使い出したが、設定に難航した。問題は、a)パソコンの電源を切ると無線LANが切れる、b)無線LANプリンターが〓がらない、の2つだ。前のWIMAXをこの3月中に安心して解約するためには、その前に解決しておかなければいけないと焦った。a)の問題は1週間後にインストールした設定ツールで、ある設定を変えてよくなったが、b)プリンターの方がなかなかうまく行かない。

 29日(金)は3月最後の平日なので、休暇日であるのを幸い、家で朝からこれに取り組んだ。仮に電話サポートの助けを借りるとなると、週末は対応しない場合があるからだ。結局自分では原因が判らないので、大決心してイーモバイルの電話サポートに電話した。2-30分間、言われた通りの確認はしてみたが(サポートの指摘した設定は既に変えてあった)うまく行かない。イーモバイルプリンターのメーカー(キャノン)に聞いてくれと言うので、私は怒った。10日前まで別のWIMAXの無線ルーターで動いていたのだから、おかしいのはおたくLTEルーターの方だ、こんな役に立たないなら解約したい(2年契約だが)とがんばった。しかし、先方もプリンターのメーカーに聞いてくれとがんばる。

 しょうがないので、キャノンの電話サポートに電話した。私も考えてみると、パソコンでのプリンターの設定のある項目でどれを選択したらいいか自信が無い所があったことを思い出したからだ。キャノンの電話サポートはよかった。詳細な確認手順を幾つか踏んでから、最後には解決した。プリンタープロパティの「ポート」のタグで、20近くあるポート候補の中から選ぶのだがそれを間違っていた。マニュアルには書いてなかったことのような気がする。それで変えたら印刷できた。嬉しかった。それで早速前のWIMAXの解約の手続きをした。

(使用感)

 前のWIMAXは、実効速度が下りで1から7-8Mbps、上りで0.2から1Mbpsと、1年前の弊ブログで書いた。不安定で遅い時もあっていらいらした。友人の意見ももっともだと思ったが、今回のLTEは概して快適で、安定している。実効回線速度をスピードメーターで測ってみた。スピードメーターもいろいろあって結果もいろいろ出てくる。下りで5Mbpsから20Mbps、上りで1.7Mbpsから7Mbpsだ。快適さが裏付けられた。

 参考までに、今度のルーターは、イーモバイルPocket WiFi LTEの型番GL04P。公称下り最大75Mbps(実効速度はそんなに出ないが)。年内には115Mbps になると言っている(楽しみだ)。2年契約で月額3,880円。最初に3,150円の手数料が掛かる。ルーター料金33,600円は24か月割賦として月額に含まれるので、購入価格は0円。モバイルだから外にも持ち出せる。お奨めだと思う。

*1:契約の相手は、UQ コミュニケーションではなく、それと提携したDiSM WIMAXというところだ。DiSとは、ダイワボウ情報システム(株)という、かつて1982年大和紡績設立したIT機器等の販売会社らしい。ちなみにコジマ電気の店員が言うには、同社のWIMAX事業は昨年暮れから、ビックカメラBiC WIMAX Service が受け継いでいるということだ。IT関連企業の変化は激しい。

2013/03/15 (金)

[]下北沢駅の地下化

 3月は例年、各鉄道ダイヤ改正が多い。これに併せて新しい線路の供用も行われることがある。東京では、東横線小田急線の新線、新駅が話題だ。特に小田急線については、私が抱いてきた(抱いた)疑問を3点披露する。1) 線路別複々線、2)高架にならなかったか、3)複々線化の遅れだ。

 この3月16日(土)から東急電鉄東横線東京メトロ副都心線の乗り入れ運転が開始される。そのため、東横線渋谷駅が、副都心線と同じ地下駅に移り、今までの地上2階にあった駅が無くなる。 http://www.tokyu.co.jp/railway/railway/souchoku/toyoko_shibuyaeki.html

 2日前の木曜の朝に、何時もの通勤路を迂回し、渋谷駅に寄ってきた。東横線渋谷駅の見納めだが、同じ考えの人はやはりいるもので、駅の改札口の写真を撮っている人が何人かいた。当初私はそんな積りは無かったが、つられて写真を撮った。しかし、ここで紹介する程のものではない。

 ローカルな話が続いて恐縮だが、その1週間後の3月23日(土)から、私が永年通勤に利用してきた小田急線で、下北沢駅が従来の地上駅から地下駅になる。話せば長くなるが大幅に端折ると、永年の小田急線複々線化計画*1の最後から2番目のステップだ。今回は前後の東北沢駅、世田谷代田駅と一緒に計3駅が地下になり、その区間にあった計9か所の踏切が一挙に無くなる。次の最終ステップはその区間にもう1つ地下の複線を引き、複々線化を完成させるのだ。1年後と計画されていた(後の3を参照)。

http://www.odakyu.jp/release/underground-stations/

 この複々線化プロジェクト全体は、混雑の緩和とスピードアップ、安全に目指すもので、異論がある訳ではないが、この区間の計画についてはかねて2点の疑問があった。1)、2)でそれを紹介する。

1) 線路別複々線に対する疑問

(「方向別」と「線路別」の複々線)

 複々線には、「方向別複々線」と「線路別複々線」の2つの方式がある。その方式の説明の前に、複々線の2つの複線は、通常「緩行用(各駅停車)」と「急行用」とに分けて使う。急行が停車する駅のホームについては、普通「島式」(ホームの両側を複線の2つの線路で挟む*2 )を2つ使う*3

 それで、駅のホームの「方向別複々線」とは、1つの島式ホームの両側に同じ方向の電車が走るもので、すなわち、緩行線の上りと急行線の上りが同じホーム(の両側)だ。もう1つの方の島式ホームは、緩行線の下りと急行線の下りが使う。これは緩行と急行との間の乗換えが便利で、これぞ複々線の醍醐味とも言える。

 これに対し、「線路別複々線」の場合、1つの島式ホームは緩行線の上りと下り、もう1つの島式ホームは急行線の上りと下りだ。容易に判るように、緩行と急行の乗換えには階段などを使わなければならず不便だ。

 小田急線で今回地下化する3駅のうち急行が止まるのは下北沢駅だけだが、これが何と「線路別複々線」の方式だ。このことは数年前から小田急は明示していた。私は既存の複線に新たな複線を追加する工事で工事の困難さから止むを得ず線路別にするのなら判るが、本プロジェクトは地下に新しく複線を2つ作るのだから、当然乗客の乗換えの便を考えて「方向別」にすると思っていたので不思議だった。

(広報センター受付嬢の説明)

 2006年から下北沢改札口横に「工事情報ステーション・シモチカナビ」という立派な広報センターが設置され、私は1年に1回ぐらい見に行っていた。そこの受付嬢に数年前、この「線路別」の不思議を質問したことがあるが、その説明がふるっていた。その前に説明しておかなければいけないのは、今回の地下の複々線は平面上に4つの線(レールの数だと8本か)が拡がるのではなく、スペースが限られているため、地下3階に複線が1つ(急行線用)、地下2階に複線が1つ(緩行線用)と縦に重なる(地下1階の用途は不明)。受付嬢の説明は澱みなかった。

方向別にすると地下3階の線路の1つが緩行線となります。急行は10両編成で長いため、強力なモーターを使っています。しかし各駅停車用の6-8両編成は、モーターの力が少し弱くて、地下3階から高架(今回の地下化区間の前後は高架区間だ)に登板する力が足りません。従って、緩行線は地下2階、急行線は地下3階とせざるを得ないのです。

 説明の澱みなさに(当人が信じ込んでいる)それ以上議論できなかったが、各駅停車の車両の力がそれほど弱いとは信じられなかった。この説明がおかしいのは、この3月23日からの運行が地下3階の将来の急行線用の複線だけで、今後複々線化が実現するまでは、各駅停車もこの線路を利用することだ。*4

(私の推定)

 その後私は、次のように推定している。「方向別複々線」になると急行各駅停車との乗換え客が激増する。そうなるとホームの幅を抜本的に拡げなければならないが、下北沢は名だたる集積市街地で、地下でも十分な広さの確保は資金的にも技術的にも困難だ。乗換え客でホームが溢れると非常に危険だ(事故でダイヤが乱れる時など)ということで、線路別にしたものだろうと推定する。「線路別」だとそもそも乗換え客数が少ないし、階段や通路など乗客を待避させるスペースの余裕があり、乗客の流れを若干コントロールできる。それは理解できるのだが、受付嬢にもっとまともな説明をさせられなかったのだろうか。

2) 高架線にできなかったか

 小田急線の連続立体交差化事業は、基本的に高架で、地下化は今回の区間だけだ。この理由は、下北沢駅は地上2階に京王電鉄井の頭線が走っているので、高架化の場合、地上3階とせざるを得ず、それで複々線というのは技術的に大変だからというものだ。これは前述の各駅停車馬力不足論よりもっともらしいが、私は省エネルギー観点から高架化をもう少し検討していてもよかったのではないかと思っている。

 考え方は、駅から電車が出発することを考えると、高架駅だと下り坂を降りる時のように自動的に加速されるので加速に必要なエネルギーはより少ない。地下駅だと上り坂なのでエネルギーはより多くなる。逆に、走っている電車が駅で停車するまでを考えると、高架駅の場合、平地から高所に行くので自動的に遅くなり、必要なブレーキの量は少なくなる。地下駅の場合、低くなるので自動的に加速され、必要なブレーキ量は多くなる。

(エネルギー量の試算)

 この考えはかねてあったが、今回の開通を機会に試算してみた。高校生でも解る物理学だ。運動エネルギーは1/2mvv (mは質量、vは速度、vvはvの2乗)、位置エネルギーはmgh (gは重力加速度、hは高さ)とする。

 高架駅(地表からHメートルの高さ)からの出発の場合、駅に停車している時の運動エネルギーは0で、位置エネルギーはmgHだ。出発した後平地(高さが0)で速度がvになると、位置エネルギーが0で運動エネルギーが1/2mvv。すなわち、電車に与えるべきエネルギー量は、全エネルギーの増分(1/2mvv‐mgH)となる。

 地下駅(地表からLメートルの低さ、すなわち‐Lメートルの高さ)からの出発の場合、駅に停車している時の運動エネルギーは0で、位置エネルギーは‐mgL だ。出発した後高さが0の地点で速度がvになると、位置エネルギーが0で運動エネルギーが1/2mvv。すなわち、電車に与えるべきエネルギー量は、全エネルギーの増分(1/2mvv+mgL)となる。

 高架駅と地下駅との差は、1/2mvvが同じなので消え、差はmgL+mgH = mg(L+H)となる。

 駅からの出発する前に駅への到着がある。平地をvで走っていた電車が高架駅に到着する場合に、減速のためのエネルギーを加える必要があって、これは逆の方向の(1/2mvv‐mgH)だ。平地から地下駅に到着する電車にも(1/2mvv+mgL)の逆方向のエネルギーを加えなければいけない。その差はmg(L+H)だ。

 駅への到着出発のたびに、高架駅より地下駅の方が2mg(L+H)のエネルギーを多く使う。

 Lは「シモチカナビ」のパンフによれば約25メートル、Hは井の頭線の高さだがざっと5メートルと見て、L+Hは30メートル。重力加速度は9.8m/ss。質量mは、4000型電車の自重がざっと30トン×10両編成(300トン)と乗車定員が約1500人×50kg(75トン)で計375トン。*5

 これで、2mg(L+H)は、2×375トン×9.8×30 → 2,2×10^8ジュールとなる(10^8は10の8乗の意味、以下同様)。

 電力の1kW時 = 3.6×10^6ジュールを使って換算すると、2mg(L+H) = 2,2×10^8ジュール = 61kWhだ。1日当り運行本数を上下で600本とすると、1年365日では1300万kWh。1kWhが10円とすると、年当り1.3億円だ。高架駅と地下駅で建設費の差がどの程度になるか判らないが、それを左右するほどのものとは思えない。以上正直言って、計算してみただけということになったのは否めない。

 ただ、地下工事もシールド工法など使って大変だったようだし、後に述べるように工期も延びているし、これなら地上3階の高架の工事とどっちが有利だったか判らない。私としては、高架の方が眺めがよくて好きだ。それに地下は、携帯やワンセグラジオ電波は大丈夫だろうか。と負惜しみのタネは尽きない。

3) 複々線化の時期が遅れる

 今回の地下化は、その区間の沿線の人にとっては踏切が無くなるという利点がある。しかし、私のように乗客としてだけの利用者にとっては、ダイヤ本数が増えるでもなく、速くなる訳でもなくメリットは無い。むしろ、2階の井の頭線までの乗換えが長くなる、携帯などの電波は大丈夫だろうかの心配があるだけだ。ひたすら待たれるのは最後の段階の複々線化で、それへのステップが進んだという認識しかない。

 かねて複々線化は2013年度末(来年の3月)と言われていた。ところが、昨日、携帯電話に入ってきたウェブニュースによると、小田急電鉄は3月14日、複々線化の完成が2017年度へ延びると発表した。 

http://www.odakyu.jp/program/info/data.info/7934_4502300_.pdf

 全く抜き打ち(私にとっては)の発表でがっくり来た。理由は書いてないが、地下3階の線路を供用できるまでに来たのに、その上の地下2階が予定より4年も遅れるというのは何故だろう。やっぱり高架の方がよかったのではないかと思ってみたりする。あと5年間も生きていられるだろうかと不安になる。

*1小田急線の連続立体交差・複々線化事業は1986年から開始された。全長10.4km、今回はそのうち残された最後の2.2kmの区間だ。

*2:「島式」ホームに対応する方式は、2つの線路の両側にホームがある「相対式」。

*3急行が常に停車しない駅は、急行線にホームを作らない。

*4:この受付嬢の説明を聞いた後暫くの間、私は最初の開通は地下2階の緩行線からと思い込んでいた。

*5小田急線4000型(2代)電車(2007年以降運用)の仕様から推計。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E7%94%B0%E6%80%A54000%E5%BD%A2%E9%9B%BB%E8%BB%8A_(2%E4%BB%A3)

2013/03/02 (土)

[][]日本人の火葬への執着

 日経新聞夕刊で2月26日から始まったルポ連載記事「公共財としての火葬」は、2年前の東日本大震災の多数の犠牲者を火葬にする際の関係者の苦労をレポートしている。その3回目「改葬 知られざる過酷」(2月28日(木)夕刊) *1を読んで驚いた。火葬施設の被災犠牲者の多さによって止むを得ず土葬にした遺体が2,108体あった。それが約半年後の11月までに全て掘り起して火葬にされたという。後述するが、日本で火葬が多くなったのは戦後でせいぜい60年の歴史だ。それまでは土葬も半分ぐらいあった(戦前はもっと多い)。その土葬が許されないというのが私には理解できない。私は現代日本人とは言えないのだろうか。ということで、古い蔵書を読み返し、新しい電子書籍も読んで、以下、1)日本の火葬、2)東日本大震災での遺体処理、3)感想を述べる。

1) 日本の火葬

 世界の中で日本は火葬率が高い国だ。次の資料にもあるように、2010年の日本の火葬率は99.94%で圧倒的に高い。*2

http://www.j-sec.jp/spot-gaikokuritu0910.pdf

 世界ではカソリック国や中東諸国は火葬率が極端に低く、土葬が多い(イスラム教ユダヤ教は全て土葬)。アジア仏教国は火葬が多い。プロテスタントの国は割に火葬が多い。その他の地域も一般的には土葬だが、都市化の進展に伴い、火葬も多くなってきた(松濤弘道「世界の葬式」岩波選書、1991年)。

 同書によれば、世界から見た日本人の葬送慣習の特筆は、遺体、遺骨に対する執着だとされる。他の国の火葬は、全て焼いて灰にする(遺灰)。インドではその灰を川に流す。日本の火葬率の高さを知っている外国人も、骨上げ(2人の箸で収骨)の習慣を聞くと、余りの文化の違いに絶句するという。

 日本での火葬の歴史は、天皇では8世紀初めの持統天皇が最初だとのこと(田豊之「火葬の文化」新潮選書、1990年)。その後も土火葬併存で、火葬率でみると1900年29.2%、1940年55.7%、1950年54.0%で、その後1970年79.2%、1980年91.1%と激増してほぼ100%になる。地域的な分布については、1950年の全国の火葬地帯の地図というのがあるそうで、火葬地帯とされているのは、秋田の一部、北陸地域、滋賀の一部、山口から広島にかけての地域、香川の一部に留まっていたとの話が、次の書に紹介されている。(島田裕巳「葬式は、要らない」幻冬舎新書、2010年)*3

 このようなことから、東北地方でせいぜい60年ほど前まで普通だった土葬に、これほど拒否感があることが理解できなかった訳だ。

2) 東日本大震災での遺体処理

 冒頭で述べた日経新聞の記事を改めて紹介すると、宮城県東松島市の事例だ。火葬場が被災したことにより止むを得ず2011年3月22日に土葬が始まった。これを皮切りに石巻市など6市町(全て宮城県と思われる)が計2108体を土葬した。ところが、ある遺族が市外の火葬場の予約を取り、自分で重機を調達して、4月15日に自分で遺体を掘り起こした。これを機に多くの遺族が改葬を希望し、これに応え同年11月までに全て掘り起こし、火葬したとのことだ。しかし、夏場でのこの作業(市町から業者に委託)は、遺体の変質による凄惨さ、腐臭、ハエの大量発生などで、極めて過酷なものだったという。

 この大震災での遺体処置と言えば、最近映画評によく登場した映画「遺体−明日への10日間」(西田敏行主演)*4を思い出した。原作があると聞いていたので、映画館に行くよりもてっとり早いと思い、記事が出た31日の夜に、電子書籍で購入した。

〇 石井光太「遺体−震災津波の果てに」(新潮社、2012年4月。ただしリアル書籍は、2011年10月新潮社から発行)

関連がありそうなので、もう1冊次の本も買ってしまった。

〇 佐々涼子「エンジェルフライト−国際霊柩送還士」(集英社e学芸単行本、2013年1月30日。ただしリアル書籍は、2012年12月23日第3刷集英社学芸単行本)

 余談だが、電子書籍Amazonなどの配送注文より早い。購入ボタンを押せばその瞬間から読める。ただ衝動買いの危険がある。今回は2冊も買うことはなかったかと反省。

 閑話休題。石井著は、もっぱら岩手県釜石市の話だ。遺体収容の関係者の献身的な行為が書かれている。遺体の腐敗の恐れに直面した市長は苦渋の末、先ず身元不明遺体を対象に、3月25日から土葬にすることを決定した。しかし、県外の火葬場が受入れを了解してくれたことから、この土葬方針は撤回され、関係者が胸をなでおろすという話が紹介されている(新聞記事は宮城県)。

 この本も次の佐々著も遺体処置が大きなテーマだ。「国際霊柩送還士」とは、外国で死んだ日本人の遺体(遺骨の場合もある)を受け入れて日本の遺族に引き渡すことと逆に日本で死んだ外国人の遺体を外国に送り出す仕事だ。何れも非業の死が多く、遺族への対応が難しい。外国での死亡は不慮の事故で遺体が損傷している場合が多いことに加え、飛行機で運ばれる際に機内の気圧が低いことによる体液の膨張があり、送り出す側の処置が悪いと(往々にして悪い)、悲惨な形で日本の空港に到着し、とても遺族には見せられないという。遺体処置をする人の役割は、遺体を生前のきれいな顔にして、悲しみにくれる遺族に、生前の故人との想い出に浸りつつ別れを言える時間を用意することだという。

 これは、石井著が語る東北の震災でも全く同じで、津波犠牲者の遺体の状態は凄惨だった。遺族の悲しみと関係者の献身には思わず涙ぐむ。

 両著を読んで改めて思ったのは、不慮の死で親しい人を喪った遺族の悲しみを癒せるのは、周囲の思い遣りも必要だが、重要なのは時間だ。故人の想い出とそれを喪った悲しみは相当の時間をかけて癒して(忘れて)いかなければいけない。無理をして早く忘れようとか元気になろうとするとストレスに陥る(例えば、PTSD心的外傷後ストレス障害)。

 佐々著の主人公は、日本で唯一の国際霊柩送還業務の専業会社エアハース社*5の社長だ。遺族の一番辛い時に、遺族に寄り添い、遺族の信頼を得、感謝される。しかしその後も親交のある遺族はごくわずかで、大半は忘れられる。その社長の言葉が胸を打つ。

「(遺族が)自分の顔を見ると悲しかった時のことを思い出してしまう。だから(遺族が自分を)忘れてもらった方がいい」

3) 感想

 東北の遺族が火葬に拘ったことについて私は理解できなかったと書いた。1つ理解できそうな部分は、松濤著で紹介した、日本人の遺体、遺骨への執着に起因する心情だ。多分それは、遺体を遺族の家に帰して、次に家族の墓に入れることを希求する心情だ。土葬では家に帰れないということだ。かつての日本の土葬の場合も、家で供養し、埋葬場まで野辺送りするということだから、家に一度帰っている。腐臭みなぎる中で凄惨な姿になった土葬の遺体を必死に掘り起こしている遺族は、それにより故人と家に帰すよと対話しているのだろう。

 しかし、遺族がいない身元不明の遺体まで何故掘り起こしたのだろう。火葬して遺骨にした後の行先は無縁墓地だ。帰る家は無い。これに関して紹介したいのは、宮城県の市町の要請により、同年5月24日に、改葬費用が災害救助法の補助対象になって国の負担になったことだ。

http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/danmen/danmen2011/0503_2.html

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001dcp7-att/2r9852000001ddxy.pdf

 後者の厚生労働省通達には「身元が判明する等により改葬を行う場合」とあるが、先の新聞記事に「全て改葬」とあることから、「等」を拡大解釈したのだろうと想像する。身元不明者数については、震災後1年3か月目の数字があるが(宮城県136人)、改葬をしていた時点ではもっと多かったろう。

http://www.asahi.com/national/update/0906/TKY201209060499.html

 私は、身元不明者まで改葬した当局を批難しているのではない。遺族がいる場合に改葬を認めたら、遺体を差別してはいけないということになる。土葬では十分な弔いにならないという共通認識があったのだろう。

 しかし、と思う。相手は死体ではないか。もう少し合理的に考えられないかと思う。ほんの60年前まで土葬も普通だったではないか。世界でも土葬が普通ではないか。そんなに遺体、遺骨に執着することが重要か、と秘かに思う。非業の死を遂げた故人も、きっと遺骨になってでも家に帰りたい、墓に入りたいと思っている筈だと言われる。そうでないと故人の霊は決して浮かばれないというが、私自身はどう考えてもそうは思わない。死んでしまえばどうでもいい。むしろ死者は生者を拘束してはいけないと秘かに考える。基本的に私は現代日本人の心性に沿っていないのだと思う。

*1http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52247710Y3A220C1CR0000/ なお、3/1、3/2の夕刊に4回目以降が掲載されるかと思ったが出ていない。来週続編が再開するかも知れない。

*2:余談だが、塩野七生ローマ人の物語」によれば、古代ローマ帝国と現代日本との共通点(かつ現代世界では珍しいもの)は、火葬、共同浴場多神教とのことだ。

*3:ただ、島田著では挙げられていない地域として、鯖田著によれば、京都市1906年時点で既に火葬率80%と非常に高い。

*4:2月23日公開、http://www.reunion-movie.jp/index.html

*5http://www.airhearse.com/