みずほ銀行の暴力団融資

 みずほ銀行暴力団へ融資していたことが明らかになって、問題になっている。10月4日には同行が初めて記者会見し、副頭取が事実を認めたとして、大きく報道されている。例えば、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131004-00000121-jij-bus_all
 銀行が暴力団へ融資することについては、損をしなければいいのではないか、損をすれば責任者の行内処分でいいのではないかとの説もあるが、暴力団対策のためにわざわざ立法措置(1991年の暴力団対策法、1999年の組織犯罪処罰法)まで講じて、暴力団への資金提供を防ぐ措置を社会全体で実施してきたのだから、それに違反したみずほ銀行の罪は大きい。私は、それとは別に、消費者ローン契約上のある条項との関係について、個人的な経験を含めコメントを述べたい。
 銀行が消費者とローン契約等を締結する時には、いわゆる暴力団排除条項が盛り込まれる。その概要は、借主(保証人を含む)が、a)暴力団やこれに準ずる者とは関係ないことと、b)暴力的な要求行為その他を行わない(第3者にも行わせない)ことを確約させるものだ。これに違反した場合や虚偽の申告をした場合のペナルティは、借主が「期限の利益を失う」ことだ(要するに、即時全額償還しなければならない)。
 この条項は、政府が2007年に、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(犯罪対策閣僚会議、2007年6月19日)を定めて以来、金融関係や公共事業関係を中心とした業界に、契約上のモデル条項を作成するよう指導してきた成果だ。その後、犯罪対策閣僚会議は、2010年12月9日の「企業活動からの暴力団排除の取組について」においても、このような契約条項を盛り込むことを推奨した。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hanzai/kettei/101209/honbun.pdf
 ここで、3年ほど前の個人的な経験を述べると、私が保証人とならなければならないローン契約があり、その中に「反社会的勢力の排除」の見出しで、前述の条項があった。貸主は今回のみずほ銀行とは別の大都市銀行だったが、みずほ銀行でも同じような条項を設けているであろう。私は保証人として、事前に渡された契約条項をチェックしておいて、幾つか質問した。そのうちの1つがこの暴力団排除条項だった。
 私の主張は、この規定が借主の義務だけを述べている片務契約なのはおかしい、貸主の銀行についても同じことを規定する双務的な契約にしてほしいということだ。先方の銀行員が変な顔をするので、貸主が借主に対し暴力的な行動に出てくる可能性などを排除したいからだと述べると、銀行員は苦笑した。(法律上?)銀行はそのようなことをしてはいけないことになっているから大丈夫だと言った。余り論理的な説明ではなく納得しづらかったが、既に印刷された契約文書であって、1行員が修正するのは大変だろうと思ったし、保証人の分際で折角のローン話をぶち壊すのも本意ではなかったので、それで引き下がった。
 今回のみずほ銀行のケースで言うと、(泣く泣く片務契約条項を飲まされた?)多くのローン契約の借主を裏切ったと思う。暴力団との関係を一方的に借主に禁ずるなら、暴力団と関係していた貸主にもペナルティを課さなければ不公平ではないか。ローンの返済を免除してくれれば有難いが、それは貸借契約としてはあり得ない。例えば利子の免除ぐらいはペナルティとしては適当だろう。みずほ銀行のローンの借主が一緒に訴訟を起せば、法廷で争えないかと思う。そのようなペナルティでも課さなければ、一部の銀行と暴力団との関係は断ち切れないのではなかろうか。せめて、モデル条項を双務的なものにできないだろうか。