中央公論 2011年09月号に<徹底討論>放射線リスクの真実 〜ジャンクサイエンスに惑わされないために と題した記事が掲載されていました。
討論のメンバーは次の4名の方々。豪華メンバーといってもいいでしょう。
発売されたばかりの雑誌でもありますし,詳細は実際に読んでいただくとして,どのようなテーマが語られたかの概略と,私の印象に残った発言をご紹介します。
まず,基本の説明として確定的影響と確率的影響,低線量における防護の考え方などが甲斐氏によって行われました。ICRPの防護に対する考え方も説明があります。
影響があるという前提に立って放射線のリスクを定量的にとらえ,他のリスクなども考慮しながら放射線のリスクを容認できるレベル以下に制限することを目指す,というのがICRPの考え方です。
甲斐倫明(P139)
1か20か?といった形である意味「不毛」な議論におちいってしまった防護の基準についての考え方の解説がおこなわれました。
この数字が良いか悪いかはおいておくとして,国が何をやろうとしているかということが全然伝わらないのが問題なのです。
甲斐倫明(P141)
だからこそ,なぜ20なのかということ,20というものは絶対的なものじゃないということを,国は詳しく言わなければ行けなかった。
甲斐倫明(P142)
参考 ICRP3月21日声明 Fukushima Nuclear Power Plant Accident
食品安全委員会がリスク評価と言っているのは,実際のところリスク評価ではない。やってきたのは,安全性評価です。
(中略)
食品の暫定規制値の根拠となる基準値を決めたときの食品安全委員会の説明は,何が何だかさっぱり分からなかった。説明できず,逃げているなという感じがしました。
畝山智香子(P143)
放射線のリスクを回避しようとして,かえってハイリスクになっていないか?平時にリスクについて議論されてこなかった弊害が噴出してきているのではないか?
一つ一つの課題に対して,その場その場で生き延びるために選択してきている。それで,今のわれわれの感情システムがかたちづくられた。だからいろいろな情報を集めて総合的に考えるのは,なかなか難しいのです。
中谷内一也(P147)
ジャンクなリスク情報が氾濫して真偽を見分けることが難しくなっている問題。ICRPとECRRがメディアの両論併記により等価に見えてしまう問題点などについて。
震災の被害は放射線によるものだけではないにもかかわらず,食品の汚染や首都圏のホットスポットなど「安心」にリソースがさかれすぎて,地震と津波の被害に遭った被災地の人々のことが忘れられていないか?
地震と津波で二万人以上が亡くなっているんです。その人たちを放置したまま,放射線の小さなリスクにばかり対処しているということが,とてもいらだたしい。明日にでも死にそうな人が被災地、避難所にいるのにそれを無視して、安心がほしいと言っているところが、すごく嫌です。
畝山智香子(P148)
科学的な問題についてスポークスマンの役割を果たす専門家がいないことや科学的な根拠をもって政策決定を行う形になっていないことなど,国家の機能の不備について。
簡単に抜き出しましたが,14ページにもなるボリュームのある記事です。当日は3時間にもわたって熱い議論が交わされたとのこと。一人でも多くの方に,この議論を通じて考えるきっかけを得て欲しいと思います。
食の安全について書いてます。