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2014-02-16

新書『高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか?』発売のお知らせ

以前にお知らせした新書が、18日(火) 発売になります(北海道、九州は19日)。

監修は『高学歴ワーキングプア フリーター生産工場としての大学院』(光文社新書、2007)の著者の水月昭道。著者は大理奈穂子、栗田隆子大野左紀子、水月昭道。『高学歴ワーキングプア』において扱われていなかった性差の問題に焦点を当てたものです。

タイトルに「貧困」という言葉が入っていますが、経済問題だけではなく、心理的問題にもかなり踏み込んでいます。そういう意味で当初は、「高学歴女子のゆううつ」というタイトル案が共著者たちによって支持されていましたが、やはり「貧困」の方が目を引くのではという出版社側の意向もあり、このタイトルになりました。


以下は、帯の惹句、カバー扉から紹介文抜粋、目次です。

女は女というだけで

貧乏になる──

見えにくい実態を明らかに。


女性を貧困に追いやる社会構造のなかで、教育、キャリア、結婚、子育てをどう考えればいいのか? 専業主婦を目指すのがもっとも賢い選択なのか? 当事者が自らの境遇と客観的なデータをもとに実態をあぶり出す。娘をもつ親子さんも必読!

現代日本社会のなかに厳然として横たわる、「男/女」という性差にまつわる一筋縄ではいかない社会問題。

本書は、そこへアプローチし、当事者の本音や立場、そして女子をめぐる日本社会の暗黙の壁や制度上の問題点を浮び上がらせることにトライした。

本書が「女子と学歴、そして人生との関わり」について、新たな視点を提示する一冊となっていれば幸いである。

はじめに‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥水月昭道      

第一章 どうして女性は高学歴でも貧困なのか

      二人の高学歴女子をめぐる現状‥‥‥‥‥‥‥‥‥大理奈穂子 栗田隆子 水月昭道

第二章 なぜ、女性の貧困は男性の貧困より深刻化しやすいのか?‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大理奈穂子

第三章 結局、女子の高学歴化は、彼女たちと社会に何をもたらしたのか?‥‥‥‥水月昭道

第四章 女なら誰だって女というだけで貧乏になるのだ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥栗田隆子

第五章 「アート系高学歴女子」のなれの果てとして、半生を顧みる‥‥‥‥‥‥‥‥‥大野左紀子

あとがき‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大理奈穂子


リケジョ”が注目され出した一方、ごく一部の成功例を除けば、学歴の生かし場所の見つかりにくい人文系高学歴女子。研究者という枠の中で隠然たる性差別にぶつかって忸怩たる思いを抱え、世間並みの「普通」を娘に夢みる親との葛藤に悩み、バイトに追われて研究時間の確保に苦しみ、生活苦に追いつめられ‥‥‥。そりゃ憂鬱も怒りもルサンチマンも溜まるというもの。

ではどういった対策が必要なのか? 女性が学歴を通じて「幸せ」を求めることが間違っているのか? そもそも「幸せ」ってなに? 

──などなど、「女子と学問と幸せ」をめぐり、広範な問いを(あるいは疑義や物議を)誘発する一冊です。「低学歴女子の貧困は?」「女性全体の問題では?」という議論にも繋がることと思います。

ジェンダー、貧困、教育、学歴、大学という制度、非正規労働者、そして女性研究者の生活の現実などに関心のあるすべての人にお勧めします。


2/27追記

売れ行き好調につき、重版がかかったそうです。累計13000部になります。買って下さった皆様、ありがとうございます。



(ここから個人的な話)

このブログ及び私の本の読者にとっては、大野が共著に名を連ねていることに違和感をもつ人もいるかと思うので、経緯を書いておきます。


編集者からのオファーを軽く引き受けた後で、「でも私、あまり高学歴とは言えないよ‥‥有名大学でも学部卒だし」と、やや心配になった。大理さんも栗田さんも(もちろん水月さんも)博士である。

「それにアート系って昔から、男女問わず貧乏がデフォルトだし」。たとえば東京藝大ファインアート系(油画、日本画、彫刻、先端表現)の就職率の低さは目を覆うばかりだ。

「でもって、経済的にはかなり夫に助けてもらってきたし」。仕事上は安定していないがいわゆる貧困を体験したことがない。

さらに大理さんと栗田さんはそれぞれ研究者、アクティヴィストとして活動しているバリバリのフェミニストだが、私ときたら‥‥(ry

そんな中途半端な者が、こういう本にうかうかと参加していいのかえ?


編集者に聞いてみると、私の参加は大理さんの提案であり、「本全体として見た場合でも、テイストの違う内容が入っていたほうがいいように思う(共通の要素のほうが多いと思っているが)」とのことだった。

それで、提案された論点をある程度押さえつつ、美術方面に進学した経緯、芸大卒業生の進路、自分の制作と生業、結婚生活と経済、就職の失敗、アーティスト廃業とその後の生活など、これまであちこちにばらばらで書いたり、インタビューなどで喋ったりしたことを、個人史としてまとめて書いた。*1

あとがきで大理さんが、(年代が一回り上である)大野の参加によって、高学歴女子の貧困がロスジェネ世代限定的ではないことが証明された、という旨を書いてフォローして下さっている。たしかに私のテキスト全体から、本書のテーマと通じることは十分読み取れると思う。「でもやっぱりちょっと浮いてるかも。あまり”怒り”の感じられないところが‥‥」という感触は残っているけれども。

お読みになった方の率直な感想を聞きたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します。



付記

10代半ばから50代半ばまでのこの40年を振り返って原稿を書きながら、自分にとっては大きかった父の存在について、改めて考えた。14歳で「アート系高学歴女子」への道を選択したのには、紛れもなく父の影響があった。父に認められたい気持ちと反発する気持ちが、いつも相半ばして私を引き裂いていた。

文中に父への言及はしばしばあるが、その言葉を端的に「男社会」と言い換えてもいいと思う。父は、なぜ私が大学に”就職”しないのか(できないのか)最後まで理解しなかった。


第一稿を書いていた去年の初秋、老人ホームで寝たきりの父の体は徐々に衰弱の度合いを強めていた。年内だと言われていたのが年を越しずいぶん持ちこたえていたが、先週新書の見本が届いた翌日、小さくなった蝋燭の火が消えるように亡くなった。

この本の第五章を父の霊前に捧げる。

*1:原稿を書いたのが昨秋だったことから出た言葉「今年はじめ」「去年」を、今年に入っての校正でうっかり直さないままになってしまいました。細かいことですが、私がホームヘルパー2級の資格を取ったのは「去年はじめ」、父が老人ホームに入居したのは「一昨年」です。ここに訂正させて頂きます。

印貢陽子印貢陽子 2014/02/17 14:43 私はお父様の大野健二先生の教え子です。昭和高校3年の時に担任して頂きました。
大野先生が「瑛太」だった頃に生まれました。
卒業してからも先生の小さな字でびっしり書かれたお年賀状が欲しくて毎年出していましたが、いつしかそれも途切れて、先生どうしていらっしゃるかなと思いながらも日々の暮らしに追われ、そんな中でこのサイトに出会いましてそれ以来数年ずっと拝見しております。
いつもブログ内容の面白さはもちろんですが時折出てくるお父様のトピックにも惹かれながら、でも段々と人生の終わりを迎えようとしているお姿に心を痛めながら読ませて頂いていました。
お亡くなりになられた事を知り、心から哀しんでいます。
ご著書、拝読させて頂きます。
大野健二先生大好きでした。

ohnosakikoohnosakiko 2014/02/17 15:29 印貢陽子さん
はじめまして。
拙ブログお読み下さって、どうもありがとうございます。また、父へのお言葉、大変有り難く存じます。

昭和高校に赴任していた当時は、父が一番元気で気力が充実していた頃です。多くの生徒さんから慕って頂いたことが、父の教員人生の最大の喜びであり支えであったと思います。

先週の雪の日、ごく身内だけのお別れ会を行い、生前の父の意志で遺体は市立大学病院に献体致しました。医学部の学生さんの勉強の役に立ちたいというのが、父らしいんじゃないかなと思います。

六文錢六文錢 2014/02/17 23:00  お父上が亡くなられたとの由、お悔やみを申し上げます。
 私自身、まだつい数年前、親を見送ったばかりなのですが、自分が確実にそちらへ移行しつつあるという自覚をもちながら、お父上についてお書きになったものを拝見いたしておりました。
 施設へお入りになって以降のご様子については、やはり自分がそうなった場合も、そこに馴染めず、ぽつねんと取り残されるのだなぁとどこかでお父上に共感いたしておりました。
 さほど苦しんだりなさらず逝かれたご様子、それがせめてものことでした。

 お母上とともども、ご看病にお心を尽くされたご様子、これまでお書きになったものから受け止めさせて頂いております。
 お疲れ様でした。
 改めてご冥福をお祈りいたします。 合掌

ohnosakikoohnosakiko 2014/02/18 09:01 六文銭さん
父へのお言葉、誠にありがとうございます。
親が死ぬとは「再び大人になること」だという記事を昨年末書きましたが、それがいよいよ自分に返ってくる身となりました。

父は晩年は何の趣味もなくなってしまいましたが、何より母への気持ちが強かったので、ホームで周囲に馴染めなかったのもそれが大きいのではないかと、今更のように思っています。
最後は点滴だけで半月ほど生きていました。私が本を枕元に届けるのを待っていたかのように、その2時間後に亡くなりました。耳は聴こえていたようで、何か言おうとしていましたが言葉になりませんでした。

私に学歴をつけてくれたのは父です。父は学歴こそが人を「幸せ」にする鍵だと信じているような人でした。この本をもし父が読んだら、何と言っただろうなと考えています。

micmic 2014/02/18 21:04 お父様のこと、お悔やみ申し上げます。
大野さんが心の準備をする時間があったことが、慰めですね。
どうぞ、お気を落とされぬよう。

私の両親も学歴を疑うこと無く信仰していました。そういう世代なのかもしれません。
お父様につけてもらった学歴がなかったら、「学歴は女にとってなんなのか」を考えるような人にならなかったかもしれないですから、一歩、前に進んだとも言えないでしょうか?
本を読んだら、また、コメント欄にうかがいますね。

ohnosakikoohnosakiko 2014/02/18 22:01 micさん
お悔やみのお言葉、恐縮に存じます。
2年近く前から、かつての父はどこかに行ってしまったという感じがあったので、お別れは段階的な感じではありました。
父の残したものが、良い面もそうでない面も含めて自分の中に大きくあることは、これからも何かにつけて考えていくことになると思います。
新書の方、どうぞよろしくお願い致します。また気楽にコメント頂けると嬉しいです。

takoponstakopons 2014/02/26 06:53 遅れ馳せながら、ご冥福をお祈りいたします。

ohnosakikoohnosakiko 2014/02/26 08:45 takoponsさん
ご丁寧に、お気遣いどうもありがとうございます。

縷衣香縷衣香 2014/03/01 11:41 早速、「高学歴女子の貧困」を購入させてぃただきました。

私の家はたまたま主人が教授、娘が大学院生をへて旧帝大の研究生を2年やり、全く興味を失い今は家事手伝い。妹も義弟も教授です。

私は女子美術、デザインをでて、66歳の今日までアートをしてます。個人的に学歴で困った体験がないので、アーティストに限り学歴はいらないと今も思ってます。

私の両親は女子美術のデザイン科に限って受験を許してくれ、2ヶ月の受験勉強で入学しました。

私の生まれも名古屋で、母は小学校の教師でした。父は呉服屋でしたので、戦後、手に職のない女性が未婚、死別、離婚で路頭に迷うのを山ほど観て、手に職をと純粋芸術の道はゆしされませんでした。

それは岡崎にいた母の祖父が画家で七つの蔵を潰した放蕩者で、絵描きはごくつぶしと家族の間のイメージがあったからです。

女性の研究者が辛酸をなめていることも、多くの女性アーティストが家庭の幸福を選んでいることも知ってますが、それでも思いの有るものは、絵を続けられルと思ってます。

私はたまたま、ボストン美術館付属の美大やハーバード大学で5年ほど若いとき許されなかった油絵や、受験で足りなかったデッサンを50近い年で学ぶ機会がありました。

アメリカの教育では、いかにプロアーティストが食べていけるかを教えてました。サバイバルていう授業で、売り込みやファィルの作り方や美術館学芸員が何を求めているか話に来るのです。

日本の美大で欠けているのが、それだと思います。

貧困から脱け出す節約の仕方まで教えてくれました。

☆私の父もー昨年92歳で亡くなりました。1円も応援したこともなく、授業料だけ払っをれましたが、厳しい親の教育には感謝してます。

主人とは小学校の入学式でとなりでした。たまたま互いの職業がそうなりました。

☆大野さんも貧困アーティスト予備軍の女性達を食べられるようになる教育者になってくださいませね。

ohnosakikoohnosakiko 2014/03/01 18:55 縷衣香さん
新書を買って下さいまして、ありがとうございました。
そこにも書きましたようにアートと学歴は関係なく、食べられるか否かはむしろ選択するジャンルの問題になってきますね。
アメリカの教育の話は聞いたことがあります。日本の大学で職業教育がほとんどされてこなかったのは、教える側もそういうことを教わってこなかったのと、そもそも大学の先生は専業アーティストではないので、教えられないということもあるのではないかと思います。

お父様、長生きされたのですね。うちの父も大変厳しかったですが、今では感謝の気持ちでいます。

misonikomiodenmisonikomioden 2014/03/03 20:57 記事拝見させていただきました。
よくわからないまま☆マーク連打してしまい私のつけた☆マークが連続してしまいました・・・すみません。

ohnosakikoohnosakiko 2014/03/03 21:17 misonikomiodenさん
どうもありがとうございます。
☆については、どうぞお気になさらずに。

miko21miko21 2015/09/29 20:41 大野さんが参加されてよかったと思いますよ。ただ、大学であれ、アートであれ、好きでやっているというのが一番大事なのではないでしょうか。個人の問題である側面が強いと思います。そうはいっても、生活に困るとか、男性中心的であるといったことは個人の問題に還元していいのかわかりませんが。(*_*;)

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