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2015-01-29

「芸大」という呼び名にまつわる意識と心理

先日、ブックマークコメントで見事に噛み合わないやりとりをした。

発端は疲れたというタイトルの増田の記事で、この中に、芸大を受けたが志望校は失敗し、「別の一番入りやすかった芸大」に入ったという記述が出てくる。これに対してブコメで「芸大落ちたのならそれ以外は美大って言うでしょう普通」「芸大と美大の区別ができてない」という意見を見たので、

ohnosakiko (↓芸大ったら東京芸大だけと思ってる人がいるかもしれないが、京都愛知沖縄、大阪、名古屋など美大ではなく芸大とつくところはピンキリで一杯あるんですよ((つか私の知ってる学生じゃなかろうな‥‥

というブコメをつけたら、その後

okxiav 芸大と略せる学校は東京藝術大学以外にもあると言うのは東大と略せる学校もいっぱいあるよねみたいなもんだから、意図的に誤解を招きたい時以外はやめといたほうがいいかと

との意見が別の人からあった。

参照:http://b.hatena.ne.jp/entry/anond.hatelabo.jp/20150127000024


「名称に芸大とつく大学は東京芸大以外にも複数ある」という単純な事実の指摘に対して、「芸大と略せる学校は東京芸大以外にもあると言うのは〜」という意見が来る理由と理路がわからず、この後、メタ、メタメタ‥‥と5階くらいまでやりとりをしたが、平行線で終わりになった。不毛な会話に関心のある暇な人は辿ってみて下さい。

ここではその顛末ではなく、相手の人の論点であった「芸大と略して言うと東京芸大だと思われる。それを利用して相手をわざと誤解させることもできる」という話について、書いてみる。


「芸大」と言った時、東京芸大を指す(場合が多い)ということは、もちろん私も知っている。

私のいた愛知県の高校の美術科では、東京芸大を「東芸」、愛知芸大を「県芸」、名古屋芸大を「名芸」と呼び分けていたが、上京したら予備校では、東京芸大は単に「芸大」と呼ばれていた。そこには東京芸大を目指す受験生ばかりいるのだから、わざわざ「東京」なんてつけないんだなと思った。それに関東圏に「芸大」とつく大学はそれ一校しかない。

しかし関東エリア限定で言っていなくても、一般に「芸大」と言えば東京芸大を指すという空気があるらしいことに、だいぶ経ってから気付いた。

たとえば大阪でも、「どこの大学ですか?」「芸大です」「大阪芸大ですか」「は? 東京芸大ですけど(芸大つったら東京芸大に決まってるっしょ!)」。名古屋でも、「彼の出身大学はどこでしたっけ?」「芸大です」「えーと県芸ですか、それとも名芸?」「は? 東京芸大ですけど(芸大つったら東京芸大に決まってるっしょ!)」。

いや実際にこういう会話が交わされているかどうかは知らないが、一方が「芸大=東京芸大」という固定的思考回路の人だとそうなる。これに近い感じは何度か見たことがある。


「東京芸大はどこでも単に芸大で通すことができる」としてそれを疑わない‥‥‥‥そこに漂う非常に鼻持ちならない権威主義、「芸大だけでわかるだろうが」という知名度に胡座を掻いた尊大な態度に、私は忌避感を覚える。

東京芸大は日本の芸術系大学の中で最も歴史が古く伝統があり、最も多くの優れた芸術家を輩出し、最も難関とされる大学だが、だからといって「東京芸大だけがモノホンの芸大」みたいな特権意識を呼び名でダダ漏れにしなくたっていいじゃないの。

東京から名古屋に帰ってきて以降私は、出身校を聞かれた時に「芸大です」と答えたことはない。「芸大」と言うのは、「普通の総合大学ではなく芸術大学」という意味を込める場合に限っている。


「東大って言ったら東京大学のこと。東洋大学東海大学を指さないのは当然」と同じノリで言われるらしい、「芸大って言ったら東京芸大のこと。京都芸大や沖縄芸大や大阪芸大を指さないのは当然」。前者はまあそうだろうが、後者はそんなに当然と言えるのだろうか。

大阪芸大に通っている人が、地元で「大学は?」と聞かれて「芸大です」と答えるのは、自然ではないだろうか。大阪に芸大とつく大学は一つしかないのだから。沖縄芸大の学生やOBが、地元で「大学は?」と聞かれて「芸大です」と答えるのも普通だ。沖縄にも芸大は一つしかないのだから(愛知や京都の場合は二つ以上あるから、それぞれの通称で答える)。

その時に、「大阪芸大出身者だけど、芸大と略して言って東京芸大だと誤解されたい」なんてセコいことを考える人がいるのだろうか。そんなちょっと調べればわかるような学歴詐称して、何かいいことがあるのだろうか。

「東大です」と言えば束の間「凄いな、アタマいいんだな」と思われるかもしれないが、(東京)芸大OBと思われたところで、今日日感心してくれるのはほんとに素朴な人だけで、大抵は表向き「へえ〜」とか一応感心したふうを装いながら「ああ喰えないコースを選んじゃった人なのね。頑張って東京芸大まで行って卒業後は売れない絵を描きながらフリーターとか悲惨よね」と思っているのである。


芸大出身であるないに拘らず、「芸大と言ったらいついかなる場合も東京芸大」と無意識に思っている人は、高輪台とか二子玉川とかいう首都圏の地名とそのイメージは誰でも知っているだろうと思っているようなタイプの東京の人と似ている気がする。

どちらも本人としては全然悪気がなくむしろ無邪気で、「パンがなければお菓子を食べればいいのに」的なことを素で思っていそう(無理矢理断定)。というか、『マルサの女2』に出てきた益岡徹演じる東大出のキャリア官僚が、「東大では〜」と言わず「僕の学校では〜」を振り回すあの軽くムカつく感じ。後ろからドつきたくなるような。うん、そうだ。そういうタイプが苦手なんだ私は。

ブコメでやりとりしながらこういうことを漠然と思い浮かべてモヤモヤしていたので、一層噛み合わない会話になってしまったのかもしれない。



●参考

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