『あそびにいくヨ!8』

あそびにいくヨ!〈8〉バレンタインデーのおひっこし (MF文庫J)

あそびにいくヨ!〈8〉バレンタインデーのおひっこし (MF文庫J)

今回の話は、バレンタインでドキドキってーのと、軌道エレベータの引っ越しという二つの話です。

前半部分で広げるだけ話を広げておいて、後半部分できっちり複線を消化するという書き方はさすがです。

 エリスと「定やん」が出て行った後、不意に騎央が足を止める。
「あ、あのね、双葉さん」
 ふと、騎央がアオイに話しかけた。
「…………!」
 思わず緊張するアオイに、
「エリスと仲良くしてくれて……ありがとう」
「え、あ、あの……あ、あ、え、えとあの」
 へどもどしていると、騎央は真っすぐにアオイを見つめた。
「僕…………凄く、嬉しい」
 言葉以上の意味のある声と、表情で騎央は言った。
「あ…………」
「その、あの…………ふ、ふたりとも大事な人…………だから」
 それだけようやく口から言葉にすると、騎央はギクシャクと回れ右をしてアオイの部屋を後にした。
「…………」
 アオイは、閉まったドアの向こうをいつまでも見つめていた。
 いつまでも。

印象に残ったシーン。「このままだと、逆三角関係になるかもしれない、ってこと!」と真奈美に言われてどうなるかと思ったけど、とくにどうにもならないで日常が延長される中で騎央が思っていることを話すっていうところが好き。アオイの家で騎央・エリス・アオイの三人で食卓を囲む挿絵も好きです。