さくらさひめの大しごと

今年度も残す所2回の読み聞かせとなりました。毎回自分の中でこれと思う本が決まれば、8割がた仕事が終わったように思えます。迷いながらでしたが先日ふと思い出したこの絵本にしました。15分をちょっと超えるようなお話です。今回は「さくら」という手話をはじめにやってみました。これは手の平をハの字にあわせて交互に2、3回表裏とかえして動かし、咲く様、散る様を表しているようです。

さくらさひめの大しごと (絵本・だいすきおはなし)

さくらさひめの大しごと (絵本・だいすきおはなし)

こどもたち(4年生)は、さくらさひめが足の長い男の巨人(アシナズチ)と手の長い女の巨人(テナズチ)を縁結びする所を面白がりました(アシナズチがテナズチを肩車すると手足の長さがちょうどよくなるんです)。また「おおつげひめ」を斬り殺した「みかずち」が、再び現れ、海中に突き立てた巨大な剣の上にあぐらをかいて、人々が作った米を「天に差し出せ!」と迫ったのを、さくらさひめとその友達の神々(あかがり、大とりひこ、オカミがみ、アシナズチ、テナズチ)が撃退する場面も息をのんで聞いてくれたようでした。後で会ったお母さんが「今日の話おもしろかった〜って息子が言ってたわよ。」と教えてくれ。。ほっ。。お話の力にゆだねればいいのですね。

あとがきを見ると、この物語は

日本伝説大系 (第11巻) 山陰編―鳥取・島根

日本伝説大系 (第11巻) 山陰編―鳥取・島根

の山陰編、「穀物の神•矮姫」が参考文献。この「矮」という字について、白川静の字統を開いてみると、

矮 ワイ•アイ•みじかい•こびと
声符は委(イ)。委は稲魂を被って舞う女の姿で、姿勢を低くする意がある。

矮姫(さくらさひめ)は稲と結びついています。また「さくら」という言葉の語源を見てみると、日本語の「さ」という音の響が、耕作(の神霊)を表す古語であり、「くら」はその神の「座」を現しているという説があり、この物語にもつながります。(サクラ・桜(さくら) - 語源由来辞典)さくらの花びらはそういえば、お米にも見えます。

今度「さくら」と発語する時には、ちいさな種神様を思いうかべてみましょう。音に宿る神さま。芥川龍之介のこの詩を、父がよく口にしていたのが耳に残っています。

修辞学
ひたぶるに耳傾けよ、
空みつ大和言葉
こもらへる箜篌(くご)の音(と)ぞある。