誰か後ろからはがいじめにしてくれ

昨日五反田から宅配を頼んだ本が届いた。いっしょに、アクセスからセレクトした本別便で。前者は自分で買った本なのだが、買った時点で、一度興奮は封印されて、一日を置いて冷めている。それが、段ボールの箱をあけることで、ふたたび興奮が、二次使用でなく、別便で届けられる感じだ。これだから、やめられないのだ、古本買いは。昨日は結局あちこちで全部で32冊買って、総計が6670円。一冊、200円平均だから、均一小僧らしい買い方。コミガレでは、『展望 戦後雑誌』という保昌さんほかの共著が欲しかったのだが、あと2冊が決まらず、棚へ戻して、青木さんと打ち合わせして、また戻ったら消えていた。しかたないや。崎川範行『宝石のすすめ』文藝春秋新社という昭和38年の本は、装幀に引かれて買ったが、カバーは別の人だが、なかを開けたら扉は佐野繁次郎。なんで、こっちにしなかったのだろう。
五反田では、『毎日新聞九十年 その歩み』昭和37年の非売品は、大判の本で、毎日新聞の縮刷集。200円。吉田健一訳『ラフォルグ抄』小沢書店も200円。福永武彦『異邦の薫り』だって200円。なんちゅう安さか。もうとまらん、とまらん。誰か後ろからはがいじめにしてくれ。
昭和8年中央公論社版の堺利彦全集の4巻が買えたのもうれしかった。これも箱入りで200円。ニコニコ主義の牧野元次郎を2冊、これは月の輪。『体験戝話』500円、『上に立つ者の心得』は100円。倉本長治も戦前のものならあれば欲しくなる。昭和3年『生活安定法』は500円。思潮社から1968年に出た『フォーリンゲティ詩集』もたぶん珍しいと思う。ビートの詩人で書店シティライツの経営者……なんて書くと、フライングブックスみたいだな。ほか、あれこれ安く買ったが省略。
そいで、箱から『文藝別冊 小津安二郎』400円を出してぱらぱら読んでいたら、郵便がきて、そのなかに、河出文庫の新刊『百物語』があった。見ると、編集の西口徹さんからだ。あれえ、『小津』も西口さんの編集だぞ。
昨日、工作舎の石原さんと話していたら、工作舎がいまある本郷から、今度月島へ移るという。いままで民家みたいなところに20年も会社があったそうで、その間、たまった資料や荷物が1000箱分あるという。工作舎の歴史、記憶が、中身は月島へ移せても、消えるものがある。そこで、いま、ビデオ等で、現在の工作舎の記憶を残そうとしているという。おもしろい試み。神保町にあったころの筑摩、河出が、同じように映像になって残ってたら、そりゃ見たいものな。いったん、消えると復元できないものは、ビデオを回すぐらいは簡単なことだから、なるべく残して欲しいものだ。
昨日、積み残した世田谷パブリックシアターの演劇雑誌から依頼された「演出」本ガイド、10枚、ようやく書き終える。「週刊文春」から書評の稿料の振り込み通知がきたけど、たくさんくれたので驚く。朝日新聞東京新聞並みだな。
ゆうべ、須川栄三野獣狩り』という、藤岡弘主演の映画を見たが、日本の刑事ものとしてはかなりいい出来ではないか。ほとんど手持ちカメラで、ドキュメンタリータッチを狙った映像。カメラは名手、木村大作。父親の同じ刑事役の伴淳三郎が、息子の藤岡と二人暮しで、そのわびしい生活ぶりも描写されている。伴がコンロにマッチで火をつけ、インスタントラーメンをつくり、振り返ると、同じ台所に洗濯機がある。
洗濯物をほおりこむ。コップで冷や酒をのむ。いやあ、ルーティンとはいえ、なかなかのものです。音楽も洒落てるなあ、と思ったら、村井邦彦でした。
ナンダロウくんが帰ってきましたね。いやあ、ほっとしました。仕事も次々めじろおしみたいで、ぼくがフリーになったときと大違い。まあ、レベルが違うから当然だけど。ぼくのフリーの初仕事は、書くほうじゃなくて、エロ小説の名場面を抜き出す仕事で、段ボール箱に2つ、大晦日、正月と読み続けた。情けないったらありゃしない。