金井美恵子訳『悲しみよこんにちは』ってのはどうだ

ただいま、深夜一時。ジャッキー・テラソン、ピアノトリオ「アイ・ラブ・パリ」を聞きながら、やっと原稿を書こうかというところ。いままでなにしてきたんだろう。中央公論倉橋由美子訳『星の王子さま』を取り上げるため、内藤訳などを参考に、ちくま学芸文庫『「星の王子さま」をフランス語訳で読む』も片目で追い、あれこれ準備。結論としては内藤訳はやはり名訳だということ。芸がある。
もうひとつ、Jノベルの小説時評のため、川上健一『四月になれば彼女は』、恩田陸『蒲公英草紙』、伊坂幸太郎『死神の精度』など、突っ走って読む。
夕方、煮詰まって国立へ自転車で。谷川、ブ、ディスクユニオンと回る。谷川では、おやじさんが客相手に、「詩の関係の本がやたら入って、それもこの二日で、あっというまに売れちゃった」などと話している。聞き捨てならぬ話なり。ぼくはおとなしく、佐々木幹郎編『在りし日の歌 中原中也詩集』角川文庫80円、金井美恵子『愛の生活/森のメリジューヌ』講談社文芸文庫230円を買う。そうだ、サガンの『悲しみよこんにちは』を新訳で出すとしたら、金井美恵子がやるといいんだ、と思う。よしよし、これは原稿のネタに使えそう。
「ブ」ではレビュファ『星と嵐』白水社を100円で。文庫では新潮と集英社、二種持ってるが、そうか元本はこういうのだったんだ。ほかちょこちょこ。「古書流通センター」均一に、大判の『アサヒグラフに見る昭和の世相』シリーズがずらり並んでいる。なかをパラパラ見ると、古いアサヒグラフの版面をそのまま印刷してある。これはおもしろい。いちばん興味のある、1「昭和元年―5年」と、2「昭和6年―8年」を買う。これは、なにか書けそうだ。一冊300円。
夜、BSで「時の旅人」、「フランソワーズ・サガン その愛と孤独」(旅人 瀬戸内寂聴)を見る。昼間、金井訳『悲しみよこんにちは』を考えたからだ。サガンは「悲しみよこんにちは」の大ヒットで、十代にして日本円にして360億円を得る。途方もない金額。カジノで数億、というような浪費。晩年は借金と病気で苦しんでいたという。生地カジャールに墓がある。真っ白な、一字も刻まない簡素な墓。数珠に袈裟着た寂聴が祈るシーンがなんとも不思議な光景。