「みちくさ市」で買った本

okatake2009-11-25

今回の「みちくさ」では、珍しく客として本を買った。これは一時間も店番をしてくれた晩鮭亭さんのおかげ。塩山さんの箱からは、海野弘『モダン都市周遊』中央公論社400円。いや、これは『モダン都市東京』と対になるホンですが、見ないですよお。1920年代、海外に渡航した日本の作家達を扱う。
ユーセンくんの箱からは五十公野清一『皇太子さま』500円。いまの天皇が皇太子時代、ご成婚の際に作られた本で、コドモ向け偉人伝の体裁を取っている。
「くちびるゴウ」からは、コドモ店長が「さあ、いまからぜんぶ200円」という声がかかったので、ひとわたり一般市民が漁った後のこぼれ玉として、昭和9年の児童書『フシギナ火ノ島』を買う。最初の数ページが抜けているが、なんとも好ましい色づかいの本。
そしていちばんの買物がパインブックスさんから買った、古いアルバム。表紙に「欧米旅行記念 上山元市」とある。これが2000円。なかを開くと、1936年に上山(石材所の経営者らしい)が、モスクワから北欧、仏独伊、そしてアメリカまで外遊した写真が貼られている。おもしろいのが、写真の説明がすべて印刷されて添付されていることで、どうやらこれは外遊記念として、上山が関係者に50部とか100部とか複数製本して配ったものらしい。上山自身が何度も映っていることや、写真が玄人っぽいことから、撮影したのは別の人、写真家かカメラの趣味のある人だと察しがつく。あ,違うな。ムッソリーニの大演説のところで、キャプションに「私は早速(中略)銅像からカメラに入れました」とあるから、撮影も本人だ。
その他、細々と買った本は、善行堂送付の箱に入れてしまった。
昨日書いた原稿。
ビッグイシュー」は杉本秀太郎『半日半夜』講談社文芸文庫
「buku」には、川越「スカラ座」で小津を見たことを書いた。川越が映る映画として「鬼畜」に触れたが、また「鬼畜」が見たくなる。詩誌「飾粽」に参加していたとき、伊藤アツムさん(いま、アツムの文字がすぐ出ない)が松竹で働いていたとき、助監督として「鬼畜」についた話を憶い出した。妾の生んだ女の子を捨ててこいと、妻(岩下志摩)に言われ、東京タワーの展望室に置き去りにするシーン。下まで降りてきた緒形拳が、後ろを振り返り見上げると、ちょうど東京タワーがライトアップされる。そのタイミングが難しかったんだと、おっしゃっていた。伊藤さんには、もっといろんな映画の話を聞いておけばよかった。
ほかの誰も書けない、という意味で、南陀楼綾繁さんの『一箱古本市の歩きかた』光文社新書は唯一無二の本だが、ぼくは勝手に人物索引を扉うらに作って、生年も書き込んだ。1970年代生まれの人が多いという印象。また、いつもブログ名や出店する屋号で呼んでいた方の本名が、これでずいぶんわかった。
そして、いちばんこの本で驚いたのが、2005年の第一回「一箱」で、「マドアキ文庫」(窓の開いた封筒に文庫を入れ、一部だけ見せる売り方)を仕掛けたのが、「ふぉっくす舎」の根岸哲也さん、と書いてあるのを読んだとき。「あれえ! あれはネギさんだったんだ」。この「マドアキ文庫」のことはよく覚えているが、それが、その後しょっちゅう顔を合わせることになる、あのネギさんだったとは。すでに知り合っていたんだ。まあ、こういうオドロキが随所にあるわけです。関係者はたまらない本であるわけです。