三月書房さんが「三月記」で、京都寺町通角にあった「鎰屋(かぎや)」の貴重な建物写真をアップさせ、地元の人らしい考察を加えている。これは、40年前近く、京都在住だった私が見たものと同じかどうか、ちょっと自信がない。ただ、近くの「八百卯」も含め、梶井熱に浮かされていた若者が、この寺町通りを往き来したのである。http://3gatsu.seesaa.net/article/459298514.html
この「鎰屋」の裏手だったか、木造の変則的な建物の最上階に、大学の友人が一時期、下宿していて訪ねたことがある。普通の部屋割りではない、不思議な構造をした部屋だったが、こんな文学的由緒のあるエリアに住めるなんて、とうらやましかった覚えがある。しかし、友人はさして文学に深い興味はなく、私の興奮は伝わらなかった。梶井については、いつか時間をかけて、隅々までじっくり読みたい。リタイア後の話か。
盛林堂書店店頭で、函の背文字が剥げ、汚点ありだが、まごうことなき細川書店の横光利一『寝園』を入手し、喫茶店でパラパラ冒頭を読んだが、やっぱりいい。仁羽と奈奈江夫妻に、奈奈江のかつての恋人でまだ心を寄せ合っている梶。霧深い山の避暑地で、西洋風のホテル、マスカットの果物皿とフランス小説みたいな描写で始まり、やがて霧がたちこめ始める。この避暑地とは、調べたら「伊豆」のようだ。この本が出た時、横光はもう死んでいた。
南阿蘇鉄道無人駅「南阿蘇水の生まれる里 白水高原」(これ全部が駅名)の木造駅舎に、週末の金土だけ、女性が古本屋を開いているという。名は「ひなた文庫」。うーん、とうなりました。南阿蘇には図書館も書店も(そうなると当然ながら古本屋も)ないそうです。南阿蘇鉄道は、週末だろうか、トロッコ電車が走っていて、観光客が来るというのです。いつか、行きたいですねえ。http://www.hinatabunko.jp/