手のひらを原子炉にかざしてごらん―なにもおこらないよ

ねえ、原発作三世(はら はっさく さんせい)どの、聞いておくれなさい。

おひさまは、太陽系最大の核融合タイプの原子炉なんだって。


そうとも。きらい嫌(きらい けん)さん。

中心部では、水素と水素がものすごい勢いで合体をしつづけているよ(核融合)。

この原子炉では、核融合の際、たとえば、ガンマ線という極めて高いエネルギーを有するおそろしい放射線(電磁波)を放出しているよ。

これをたくさん浴びてしまうと、体がおかしくなったり、死んでしまったりするよ。


クソ原発野郎め!

やっぱり原発絶対絶対絶対絶対絶対反対!原発反対!原発反対!原発反対!反対反対反対〜!


ところで、ほら。

今きみが浴びているおひさまの光は、あのおそろしい原子炉が送ってきた電磁波だよ。

ぼくらはみんな 原子炉により 生かされている

十億年以上前から 生かされてきているから 笑うしかないんだ

手のひらを原子炉にかざしてごらん


怖い原発!どうなるの!


なにもおこらないよ


えっ!


おひさまのガンマ線は、いろんなやつにもまれてエネルギーを失い、ぼくたち生き物が生きていけるくらいのやさしい電磁波になるんだよ。

そして、8分ほどかかって、はるか彼方のぼくたちが住む地球に到達するんだよ。


なるほど!

だから死なないんだね。


ところで、きみが見ている電磁波は可視光線といって、ぼくたちヒトが目により知覚することのできる虹色たちだよ。

赤橙黄緑青藍紫。いろいろあるね。全部混ぜると白くなるよ。


イリュージョンだね!


ある意味ではそうかもしれないね。

ちょうちょは、可視光線より高いエネルギーの電磁波(紫外線)を見ることができるらしいよ。

オスとメスではまったく違う羽根に見えるらしいよ。

そして、ヘビは、可視光線より低いエネルギーの電磁波(赤外線)を感じることができるんだ。

ねずみの体から放たれた赤外線を感知して、パクっと食べるよ。


へえ。みんな違う世界を見ているんだね。


おそらくはそうだよ。

そして、植物たちは、可視光線のうち、主に青色や赤色の電磁波を吸収して、二酸化炭素と水から炭水化物と酸素を合成するよ。

吸収されない緑色の電磁波を反射するから、葉っぱは緑色に見えるんだよ。


ということは、透明なものは、可視光線が全部通ってきているってこと?


まあだいたいそういうことだよ。

ちなみに、炭水化物は、体を作るときの材料として利用されたり、動いたり体に必要なものを作ったりするときのエネルギー源になったりするんだ。

シマウマやシカは、植物を食べ、酸素を取り込むことにより生きているよ。

そして、ライオンは、植物を食べて大きくなったシマウマを食べるよ。もちろん酸素も取り込む。

ヒトが食べているいろいろなお野菜も、おひさまから送られてくるエネルギーを使って合成されているし、

牛や豚、鶏などのお肉もぜんぶ、もとをたどれば、おひさまのエネルギーから作られているよ。


はああ!

驚いた!

おひさまはとんでもなくえらいんだね。

これはもう、原発絶対賛成だ!


まだあるんだ。

おひさまという原子炉のすごいところは、それだけじゃないよ。

地球は自分でコマのようにくるくると回っているよ(自転)。

一日かけて一周するよ。

だから昼と夜が順番にくるよ。

夜にはエネルギーがあまりこないから寒くなるよ。

さらに、地球はおひさまの周りを一年かけてぐるっと一周するよ(公転)。

地球の表面に降り注ぐ単位面積当たりのエネルギーが低いときを冬というんだよ。

逆が夏だよ。

そして、グリーンハウスエフェクトもあるよ。


なんだか流し気味だね。


説明が面倒になってきたんだよ。

こんなふうに、主には自転と公転により、刻一刻変化するエネルギーが降り注ぐから、風が吹いたり、曇ったり、晴れたり、雨が降ったりするんだよ。

雨が降り川の水が流れるのも太陽からのエネルギー(水力発電)、風が吹く(風力発電)のもそう。

結局はみんな太陽からのプレゼントだね。

火力発電所の燃料や車のガソリンとして使われている石油や石炭などの化石燃料だって、太陽が大昔にプレゼントしてくれたエネルギーの缶詰を掘り起こして使っているだけのことなんだ。

他にも、石油は、工業製品の原料としてもとても重要なんだ。


ヒトは一生懸命エネルギーを集めているようだね。

面白いなあ。

必死だなあ。


そう。ほんとに爆笑ものだよ。

まぎれもなく、地球に存在するぼくたち生命は、数十億年前から、この太陽という原子炉に生かされてきたし、おそらく今後も当面、その方向性自体は変わらない。

ぼくはこう推測するよ。

そして最後に、オチに関する安全性には十分に配慮してきたつもりなんだけど、今回にかぎっては想定外のことが起こったんだ。