未成年者飲酒謹慎報道

未成年者飲酒禁止法
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050719/1121769411

飲酒謹慎中に番組出演 未成年メンバー、テレ東に
 ジャニーズ事務所の人気グループ「NEWS」のメンバー(18)が、フジテレビの社員と飲酒した問題で、無期謹慎中のこのメンバーが、テレビ東京系で20日未明放送のバラエティー番組「関ジャニ∞(エイト)の∞(無限大)のギモン」に出演した。
 テレビ東京によると、この番組は事前に収録済みで、差し替えなども検討したが間に合わなかったため、冒頭に収録日を明示して放送したという。次週からは全面的に撮り直す方針。
 同社広報・IR部は「局としては極めて遺憾だが、連休もあり、物理的に対応できなかった」と話している。
 フジテレビと関西テレビはそれぞれ、女子バレーボールワールドグランプリの中継番組と、ドラマ「がんばっていきまっしょい」へのこのメンバーの出演を取りやめている。
共同通信) - 7月20日1時41分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050720-00000007-kyodo-ent

あびる優の時の繰り返しだけど、ほんと「内博貴」って書かないだけだね。
「NEWS」のメンバー(18)からすると、

山下智久(リーダー)1985年4月9日生(20)
小山慶一郎     1984年5月1日生(21)
内博貴関ジャニ∞)1986年9月10日生(18)
錦戸亮関ジャニ∞1984年11月3日生(20)
加藤成亮      1987年7月11日生(18)
草野博紀      1988年2月15日生(17)
増田貴久      1986年7月4日(19)
手越祐也      1987年11月11日(17)
はてなhttp://d.hatena.ne.jp/keyword/調べ,年齢は更新日現在)

一応2人いるようなのでわからない。
ただ、「ドラマ「がんばっていきまっしょい」へのこのメンバーの出演を取りやめている。」
とあり、このドラマに出演しているのは、関ジャニ∞の2人。
ってことは、この時点で内博貴君だとわかる。
さらに、「関ジャニ∞」メンバーとは書いてないけど、「次週からは全面的に撮り直す」
ってことは、ゲストとかではなく、関ジャニ∞メンバーってことがわかる。結局「内博貴」君だとわかる。
なんだかねぇ。こんな意味のない匿名報道なら実名報道すれば?と思う。
かえって本人保護になっていないように思いますけど…。

参考:
テレビ番組で未成年タレントが犯罪自白?
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050219/1108750082
続 テレビ番組で未成年タレントが犯罪自白?
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050220/1108829608
テレビ番組で未成年タレントが犯罪自白?その3
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050222/1109072696
テレビ番組で未成年タレントが犯罪自白?その4
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050402/1112373979

「児童ポルノ」と国会図書館

児童ポルノ」閲覧制限 国会図書館、摘発対象指摘受け 
2005年07月17日12時57分
 少女のヌードを写すなど法で禁じた「児童ポルノ」にあたる可能性がある本について、国立国会図書館が閲覧などの利用制限を始める。児童ポルノ禁止法で有罪とされた写真集を同図書館が閲覧・コピーできる状態にしていたことが今春、発覚。その写真集を利用禁止としたものの、同図書館はほかにも同様の写真集などを所蔵する。法務省に「摘発対象になりうる」と指摘され、あわてて対応に乗り出した。
 国会図書館は出版社に対し書籍や雑誌などの出版に際して納本を義務づけている。このため、99年の児童ポルノ禁止法施行以前には一般の書店にも出回った少女の裸を扱った写真集や雑誌を所蔵する。
 同法施行に合わせ、「利用制限措置等に関する内規」を改正、「児童ポルノに該当すると裁判で確定、あるいは係争中の資料」について、閲覧やコピーを禁止できるようにしていた。
 だが実態は、情報収集手段がなかった。「新聞に目を通す」(収集企画課)だけで、実際にどんなタイトルの本が児童ポルノとされたか把握できていなかった。
 今年4月、朝日新聞の指摘を受けた写真集を調べたところ、02年に同法違反(販売)で有罪が確定していたとわかり、法施行後初めて、利用禁止措置をとった。その写真集はそれまで、閲覧もコピーも自由だった。
 ほかにも漏れている可能性があるとして、同図書館は有罪、あるいは起訴された事件の写真集などの情報を法務省に求めたが、「リストアップしていない」と断られた。逆に、児童ポルノにあたる構成要件は法で明示していることから、「図書館で判断できるはず。もし児童ポルノを提供しているとわかれば、摘発対象にもなりうる」と、自主的な対応を迫られた。
 表現の自由との兼ね合いから、「検閲のようなことは難しい」としながらも、法の構成要件や判例を参考に該当しそうな写真集や雑誌を今年中にリストアップ。個別に全国各地で有罪認定か起訴されていないかを調べ、該当すれば内規に従って利用禁止、そうでないものについても、今後、違法性を問われるおそれがあれば何らかの制限を検討するという。調査は今月中に始め、リストアップしたものから利用を制限する。
 法務省刑事局の風紀担当は「有罪認定されないと判断できないという言い分はおかしい」と話す。
 国会図書館は「納本制度がある当館ならではの悩み。制限には議論のあるところだが、かたくなに内規だけ守っていては実態に対応できない」としている。
      ◇      ◇
 〈キーワード・児童ポルノ禁止法〉 「児童ポルノ天国」という国際的批判を背景に、99年11月に施行。18歳未満を「児童」と規定する。「児童ポルノ」の構成要件の一つに「衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ、または刺激するもの」とあり、性行為をしていなくても、裸やそれに近い姿を写していれば対象になりうる。製造や陳列、提供などを禁じている。
http://www.asahi.com/national/update/0717/TKY200507160368.html

立法府の機関である国会図書館が、立法府の作った法律の構成要件がよくわからないということになっていること自体がおもしろいですね。
表現行為に対する萎縮を防止するという観点から構成要件は明確に示されるべきであり、
この点の理屈は、法務省のいう「図書館で判断できるはず」「有罪認定されないと判断できないという言い分はおかしい」
ということに集約されているように思われます。
この構成要件で出版者が何が児童ポルノかどうかが容易に判断できるという前提であるのに、
法律をつくった国会の一機関である図書館が「何が該当するのかわからない」というのはどういうことか。
確かに、表現行為にあたっての構成要件の明確性と、第三者(特に国家機関)が表現行為を事後判断する場合とは異なるし、
本来閲覧複製するべきものをしないということになっては問題である。「検閲のようなこと」というのはそういう趣旨であろう。
ただ、そういうことを考えて国会図書館について何らかの配慮をする立法ということも可能であっただろう。
この点をあまり考慮しなかったということもおもしろい。
(議事録を「児童ポルノ 図書館」で検索してみたが、何もヒットしなかった)
お手盛りしなかったことを評価するべきなのか、問題視するべきなのかは難しいところであるが。
こんな事態になったのは、議員立法だから?参法145-14
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/kaiji145.htm
免責とまではいわなくても、何らかの対処をしておくべきだったのかもしれません。
もしかしたら、
「第三条  この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。 」
に読む込むことで、多少柔軟な対応も採りうるとは思いますが…。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8e%99%93%b6%83%7c%83%8b%83%6d&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H11HO052&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1
(定義)
第二条  この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2  この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
 一  児童 
 二  児童に対する性交等の周旋をした者
 三  児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3  この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
 一  児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
 二  他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
 三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
(適用上の注意)
第三条  この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。
児童ポルノ提供等)
第七条  児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3  前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6  第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

船橋西図書館焚書事件最高裁判決(2)

船橋西図書館焚書事件最高裁判決
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050714/1121312435

Library & Copyrightに、こういう指摘があった。

この判決では、「図書館が無分別に図書を廃棄する行為は、当該図書の著作者の人格的利益の侵害に該当する」しか言っていないわけです。「権利」となると、何やら著作者が廃棄を止めさせるよう請求できたりするような感じがしますけど、そんなことは一言も述べられていません。
著作者に「権利」が認められたのでしょうか?: Library & Copyright

このコメントに関連して、少し勝手に考察してみたい。
確かに、判決文は「権利」だとか「人権」だとかは直接的にはいっていない。「人格的利益」というにとどまる。
では、「権利」とはいえないのか?
「権利」といっても請求権、自由権などと分類でき、必ずしも「権利=請求権」ではない。
「権利」というと、「何やら著作者が廃棄を止めさせるよう請求できたりするような感じが」するから、
「権利」というべきではない、という点にはついてはまさに「感じ」にすぎない。
本判決は、人格的利益侵害を認めている。
本件が対公立図書館の事案であることも考えると、(もちろん議論の余地はあろうが、)
実質的な権利(人権)性を認めることができるように思われる。
少なくとも、妨げられない権利という自由権としての権利性は認めたといっていいであろう。


では、なぜ人格権ではなく「人格的利益」なのか?
地裁における原告の主張をみると、

(エ) 被告Aは,原告つくる会やその運動に関与し,あるいは賛同している保守的な思想家の本につき,その思想的な立場ゆえに西図書館から排除しようとして本件除籍等を行ったものであり,これにより原告らは,上記権利を侵害され,図書館利用者への思想・表現等情報伝達を妨害されない地位を侵害されたことは明らかである。
 エ 名誉毀損・人格権等の侵害
 原告らは,本件除籍等により,図書館から与えられていた「読むに値する良識ある作品」という評価を一方的に撤回され,原告らは,文筆家としての社会的地位の低下を被るとともに,表現者・文化人としての誇りを傷つけられ,名誉を毀損されるとともに,名誉感情や人格的利益を著しく侵害された。また,被告Aによる本件除籍等は,著作者として自らの著作を公衆に広く提供し,または提示する権利その他著作者人格権著作権法18条〜20条,50条,113条3項,82条等)の根底を形成する著作者の人格権(著作者が自己の著作物について有する人格的利益)を侵害するものである

としている(下線部筆者)。上告審においても同様の主張はされているであろう。
これに対して、最高裁は、

公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは,当該著作者が著作物によってその思想,意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない。そして,著作者の思想の自由,表現の自由憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると,公立図書館において,その著作物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は,法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり,公立図書館の図書館職員である公務員が,図書の廃棄について,基本的な職務上の義務に反し,著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは,当該図書の著作者の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。

としている(下線部筆者)。
裁判所が、「著作者の人格権」とはせずに、著作者が自己の著作物について有する「人格的利益」を用いて
判示した意図を考察してみるのもおもしろいかもしれないが、
憲法に明文化されたものではないし、名誉権のように一般化された権利でもないということだろうか?
この点、最高裁判決で「人格的利益」を用いた判決は、最高裁判例集で検索すると5件ある。
(ただし、あくまで判決文中に「人格的利益」という語があるということである。)

H17.07.14 第一小法廷・判決 平成16(受)930 損害賠償請求事件 (本判決)
H15.12.09 第三小法廷・判決 平成14(受)218 保険金請求事件
H06.02.08 第三小法廷・判決 平成1(オ)1649 慰藉料 (『逆転』判決)
H01.12.21 第一小法廷・判決 昭和60(オ)1274 損害賠償等
S59.01.20 第二小法廷・判決 昭和58(オ)171 書籍所有権侵害禁止

有名な判決としては、前科についての「『逆転』判決」である。
http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/VM2/CF4088374AF5102C49256A8500311E44?OPENDOCUMENT

最三小判平成6年2月8日民集第48巻2号149頁
 ……原審は、……本件著作が出版されたころには、被上告人は、右の事実を他人に知られないことにつき人格的利益を有し、かつ、その利益は、法的保護に値する状況にあったというべきところ、上告人が本件著作で被上告人の実名を使用してその前科にかかわる事実を公表したことを正当とする理由はなく、……
 ある者が刑事事件につき被疑者とされ、さらには被告人として公訴を提起されて判決を受け、とりわけ有罪判決を受け、服役したという事実は、その者の名誉あるいは信用に直接にかかわる事項であるから、その者は、みだりに右の前科等にかかわる事実を公表されないことにつき、法的保護に値する利益を有するものというべきである(最高裁昭和五二年(オ)第三二三号同五六年四月一四日第三小法廷判決・民集三五巻三号六二〇頁参照)。

ただ、ここでは原審の判断として、「人格的利益」を用語を用いたにすぎず、最高裁自身の判断では、
「法的保護に値する利益」というにすぎない。そして、ここで引用された昭和56年判決は前科照会事件判決である。

最三小判56年4月14日民集第35巻3号620頁
前科及び犯罪経歴(以下「前科等」という。)は人の名誉、信用に直接にかかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するのであつて、……
http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/VM2/9A166D777E9B28B349256A8500311FF4?OPENDOCUMENT

この判決について、芦部信喜憲法』103頁(岩波書店,1996)は、
憲法上の権利として広義のプライバシー権を認める趣旨と解される見解も示している」とする。
「利益」とはするものの、裁判上の救済を受けることができる具体的権利であるいえ、
憲法13条により導かれる一般的人格権の一内容としての憲法上の権利性を認めているということができる。
前科事実を知られずに平穏に生活することを、前科を「みだりに公表され」ることによって侵害されない、
という自由権としての権利性があるということができる。「利益」であるとしても権利性を認めることができよう。


ところで、今回の判決を理論が少し分かりにくい。

公立図書館が,上記のとおり,住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは,そこで閲覧に供された図書の著作者にとって,その思想,意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができる。したがって,公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは,当該著作者が著作物によってその思想,意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない。そして,著作者の思想の自由,表現の自由憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると,公立図書館において,その著作物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は,法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり,公立図書館の図書館職員である公務員が,図書の廃棄について,基本的な職務上の義務に反し,著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは,当該図書の著作者の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。

という。
この「利益」侵害は、図書館が無分別に図書を廃棄するような場合といった特段の状況
(これに限られるかどうかは本判決の射程の問題であるが)でのみ、違法な侵害行為となる。
書籍の処分は、本来有体物所有権者の自由であって、図書館であっても異ならない。
思想の自由や表現の自由があるといっても、書籍の処分について通常文句はいえない。
これによって、表現が妨げられるとはいえないからである。
しかし、公立図書館の所有図書の場合、これを廃棄することは、
図書の受入によって間接的になされる表現行為(図書館を通じた表現行為)を妨げることになる。
その役割により所有権が一定の制約を受け、人格的利益が優越するということであろうか。
ここでは、著作者の著作物上の利益というよりは、著作者の物を用いた表現の利益と言う方がよいのだろう。
ごく簡単にかけば、著作者人格権侵害というよりは、表現の自由の侵害ということであろう。
図書館が(少なくとも一旦受け入れた本について)恣意的に廃棄することは、
表現行為上の人格的利益を害する行為ということである。


そして、この判決の射程であるが、まず「受入」の恣意性が表現上の人格的な利益侵害となるものではないであろう。
これを認めると請求権を認めることになる。これについては、法律による具体化が必要と思われる。
また、恣意的でない図書館の保有能力や書籍の物理的状態による処分などについても、違法とはならないであろう。
この点は、所有者としての権限事項と考えてよいように思われる。
問題は、恣意的廃棄を事前に察知した場合に差止が認められるかである。
おそらくは図書館関係者が気にするところであろう。
裁判所があえて人格「権」とはせずに、「人格的利益」としたのは、請求権的性質を否定するためのということもできる。
人格権としてしまうと、それに基づく差止請求…となりかねないからである。
実質的にも、恣意的破棄を違法としたにすぎず、受け入れ義務がないことを前提とすると、
損害賠償の問題というにすぎないというにすぎないように思われる。
また、本件では差し止めを求めるものではないし、弁償されており回復請求が問題にならない事案である。
この点については何ら判断されておらず、判決の射程もきわめて限定的に考えるべきであろう。