映画ポスターの展示と著作権

少し前のことだが、

2005年10月28日(金)
洋画グッズ6万点 公開断念、寄贈者に返還へ
甲府市著作権手続き煩雑」、見通しの甘さ指摘も
 今年三月、横浜市の男性(75)からポスターなど約六万点に及ぶ外国映画グッズを譲り受けた甲府市は二十七日までに、近くこのコレクションを寄贈者側に返還することを決めた。イベント時の企画展示などで市中心部の活性化に役立てようと考えた市だったが、公開には著作権所有者に了解を得る必要があり、数が多いため「法的手続きが煩雑で困難」と活用を断念した。お披露目の機会がないまま、梱包(こんぽう)された寄贈時の状態で返還されることになったコレクション。市民からは市の見通しの甘さを指摘する声も上がっている。
 コレクションは、横浜市在住でリゾート開発会社を経営する小原利康さんが集めた一九二○年代から最近までの外国映画グッズ。「風と共に去りぬ」(一九三九年)や「カサブランカ」(四二年)、「タイタニック」(九七年)に至るまで、約二万点のポスターのほか、パンフレット、ビデオテープなど。
 八○年−九二年に北杜市内で喫茶店を兼ねた施設内でコレクションを公開していた小原さんは今年三月、「甲府市中心部の活性化に役立ててほしい」と寄贈。市側は運搬費など約八十万円を予算計上するなどし、ポスター展示に向けて美術館の研究員や映画関係の専門家、弁護士らとの相談に入った。
 市の顧問弁護士らによると、映画ポスターには著作権法に基づき、著作権が発生することがあるという。市側は著作権者の調査と交渉に着手しようとしたが、協議を進めるうちに「グッズの数があまりにも多い上、海外の関係者相手の交渉は困難」(担当者)な状況になった。
 市商工振興課は「著作権などの権利関係の問題があって展示は難しいことは知っていたが、寄贈を受けるまで本格的に考えていなかった」と釈明。返還の理由については、「コレクションの展示は事実上不可能。小原さんの意向に沿えず、お返しすることにした」と説明している。
 返還されることについて、小原さんは取材に対し、「仕方がないが、なぜ展示できないのか。キツネにつままれたような気持ちだ。自分が再度保管し、県内、市内で活性化に活用したい人がいれば協力したい」と話している。
 コレクションは現在、市の倉庫で寄贈時の梱包された状態で保管されている。同市桜井町の会社員男性(41)は「貴重なコレクションで展示を楽しみにしていたのに残念だ。市側は具体的な活用の見通しを立てずに譲り受けていて、著作権に対する認識が甘いのではないか」と指摘している。
http://www.sannichi.co.jp/DAILY/news/2005/10/28/2.html

という記事があった。
「映画ポスターには著作権法に基づき、著作権が発生することがある」という市の顧問弁護士らの言の引用があるが、
どういうことだろうか。
まず、映画ポスター等の著作物性については認めて問題ないように思う。
問題は、どういう場合に著作権が及んでくるのか、ということである。
つまり、ここではポスター等の掲出について著作者のコントロール権が及ぶかということである。
まず思い浮かぶのが展示権である。もっとも、展示権が及ぶのは、
「美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する」場合(25条)のみである。
ポスターを「美術の著作物」というのは困難だろうし、そうだとしても原作品ではない。
仮に原作品だとしても、寄贈を受けた所有者たる市は展示できるのであるから(45条)いずれにせよ著作権侵害とはならない。
それとも展示権が及ばないものの、ポスター掲示は「上演」「演奏」に準ずるというのだろうか?
ただ仮にそうだとしても、非営利無料なら38条1項にあたるのではないだろうか?顧問弁護士の主張がいまいち理解できない。
映画ポスターのグッズも「映画の著作物」で頒布権侵害ともいいたいのだろうか?(譲渡権なら消尽)
しかし、かなり無理のある解釈ではないだろうか?
肖像権などの問題は生じうるが、どの点に展示を躊躇するだけの著作権法上の問題点があるのか、
ここ数日間考えたが正直よくわからない。
何か重大な見落としをしているのか。どなたかご教示いただければと思う。