コンテンツ大国に必要なもの

精神活動である創作活動とは、本来的に何らかの形で他の創作物の影響をうけて創造されるものである。
つまり、他の著作物の利用は必要不可欠であるといえる。

コンテンツクリエイターとユーザーの「大国」に――知財戦略本部提言
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0602/22/news081.html

コンテンツクリエイトを推奨するには、他の著作物を利用できる環境も整える必要があろう。
しかしながら、

IPマルチキャスト放送普及へ、著作権法改正も
 ユーザーが多様なメディア・価格のコンテンツを楽しめるよう、コンテンツの出口を増やす。IPマルチキャスト放送の著作権法上の取り扱いを明確化し、法改正を含めた再検討を行うことで、ネット上でのコンテンツ流通を促進する。通信企業によって仕様が異なるSTB(セットトップボックス)の標準化も検討する。

コピープロテクトにユーザー視点を
 コピーワンスなど放送のコピープロテクト技術は、ユーザーやクリエイター、メーカーなど関係者の視点を盛り込んだ見直しを促進する。これまでの技術は、使い勝手が十分に配慮されていなかったり、クリエイターの利益が確保できず、コンテンツビジネスの拡大につながらなかったとし、バランスの取れたシステムの策定を支援する。

「クリエイター大国」へ
 コンテンツ業界の契約慣行は非公正で、クリエイターや制作会社に不利との指摘があるため、公正な仕組み作りを検討する。コンテンツの売り上げに応じて追加報酬が得られる仕組みの導入や、クリエイターの組織化、著作権を円滑に処理できる仕組み作りなどを促進する。
 制作会社が市場から制作資金を調達しやすくする法整備などを進め、コンテンツ作りの環境を整える。

人材育成や国際化も
 人材育成も進める。クリエイターや、コンテンツに強い法律家、コンテンツをビジネスにつなげるプロデューサーなどを、大学や産業界が協力して育てる。関連する新技術の開発も、産学で促進する。
 コンテンツの国際化も進める。国際共同制作などで、海外でのコンテンツ販売を促進するほか、外国人クリエイターの受け入れも進める。コンテンツ関連のイベントを一定期間に集約した「ジャパン・クリエイティブフェスタ」創設を検討するなど、コンテンツの発信の場も整備する。

 アニメや漫画、ゲームなどのアーカイブ化や再利用を推進する。アーカイブ化に向けた技術開発や、アーカイブを手軽に検索できるポータルサイト構築の取り組みも支援する。

という。
もちろん、著作権が創作者ではなく、その周辺の者の食い物にされることは避ける必要がある。
その意味で「「クリエイター大国」へ」にあるように、クリエイターの権利の移転、行使について、不利が生じないようにする必要がある。
著作権が本来、創作者のインセンティブのために認められたものであるならば、
社会構造上の不平等による著作者の不利益は是正する方向での政策が指向されることになる。
一方で、コンテンツの創造については、ある程度の他の著作物への依拠は避けられないことは先に述べた。
単に権利者の創造したものの権利を確保しても、創造そのものが妨げられては、コンテンツ大国は望めない。
そうだとすれば、コンテンツの創造を推進するためにもっとも必要なことは、他の著作物の利用を容易にする環境づくりではないだろうか。
このことは、著作権そのものが不要であるというのではない。
使いたくても、許諾されない(不当にされにくい)、権利者がわからない、という状態をなくす政策が必要なのである。
この記事は最後に「アニメや漫画、ゲームなどのアーカイブ化や再利用を推進する。」としているが、
コンテンツ(=文化)の発展には、まず利用の容易性がまず考えられるべきではないだろうか。
(単に記事の順序が最後になったのはないだろう。)
それにより、許諾料もはいり、ますます創作意欲がわくと思うのである。
著作権は、権利者保護をもって、文化の発展に寄与するためにあるのである。
どうすれば、権利者の利益を図ることができるかだけでなく、
それによって、どう文化の発展を図るか、ということもあわせて考える必要があろう。
権利を保護して文化が衰退しては本末転倒である。