おけぐわの日記

2ch系さいたまフラッシュサイト「おけぐわの微笑」管理人の OKGWA の日記です。かつては毎日更新を心がけていましたが、今は不定期更新です。

特集|無断リンク論日本語インクリメンタル検索 migemoデジカメマリみてと萌え

[2005-09-25]

今日はのまネコ問題についての三部作でやたらと長いです。その割に特に新しいことを見いだせなかったのでちょっと切ないですが、折角書いたので公表します(「モナーは著作物である」「モナー著作権者は不明である」という主張に特に疑問がない方は「モナーはこれからも守られない」だけ読めばいい感じです)。

[のまネコ問題] モナーを著作物として認めるか  [のまネコ問題] モナーを著作物として認めるかを含むブックマーク

商標登録されていたことが発覚したり、avexから新たな声明が発表されたりと、事態が大きく進展した今となってはいまさらな感がありますが、モナーにまつわる著作権について。

先日の記事「怒りのパターンマッチング」ではこの日記には珍しく色々なコメントを頂きました。興味深いと思ったのは次のコメントです。

よくわからないのは”受け付けない人”が「わた氏の仕事」を
どう評価してるのかということだ。

〜中略〜

・・・基本的な人間の創作物の権利としてイラストレータには
描いたキャラに対する権利が生ずる。たとえば猫の絵を見たときに
「現実の猫を画家は”絵に描いただけ”だから絵に著作権がない」なんて
言ったら正気を疑われるのは間違いない。
著作者は自分の著作物に対する権利を持つ。これが”あたりまえ”の1。

〜中略〜

「猫を描いた画家はすべての猫の絵に関する権利を主張できる」のだろうか。
答:できない。
これが”あたりまえ”の2。

〜中略〜

そんなわけで、端から見てると「モナーではなく、モナーを描いた
イラストレータの作品を、当然モナーではなくその人の絵として別の
名前で商標を取った」って話のどこに問題があるのかさっぱりわからない。

怒りのパターンマッチング - 「んー」氏のコメント

モナーを著作物として認めない」という立場であれば妥当な考え方だと思います。

ただ、基本的な人間の創作物の権利としてイラストレータには描いたキャラに対する権利が生ずる*のが「あたりまえ」だとすると、それと全く同じ理由でモナーの作者(どこかにいるはず)に著作権が生じるのも「あたりまえ」だと考えたくなります。

だとすると、モナーを描いただけで複製権の侵害になりますし、ちょっと変えただけでも同一性保持権や翻案権の侵害になるおそれがあります。

──が、そもそもモナーを著作物として認めるかについては一見諸説あるように見えます。

著作権法では、以下のように著作物が定義されています。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作権法 第二条

これについて、「のまネコ騒動」を正しく理解するという記事では次のように書かれています。

キャラクター単体では「思想又は感情を創作的に表現したもの」というのは微妙なものがあるし、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」というのもこれまた微妙だ。

音極道茶室: 「のまネコ騒動」を正しく理解する

この記事に限らず、抽象的な概念としてのキャラクターは著作物ではないというのが一般的な見解です。著作権とは「著作物」に関わる権利で、アイディアとか抽象的なキャラクターとかの実体がないものについては原則として生じないわけです。

その一方で、

   社団法人著作権情報センターの窓口で、
   「AAは切り絵のようなもの。立派な著作物」 という返答を得ているようです。

えっ!? AVEXが2chキャラを盗用!!? 5分で解る「のまネコ」問題 -- instant teller for Moner vs mimic Noma Neko --

という主張もありますが、これは抽象的な概念としての「モナー」についてではなく、「モナーを描いたAA」についてのコメントである点に注意する必要があります。

ウェブではかなり有名な小倉弁護士が言うところの

アスキーアートの場合、一般にこの「創作性のある部分」が狭いのでデッドコピーの場合を除くと著作権侵害は成立しにくい面があります。

benli: 「恋のマイアヒ」論争

というのもそういう意味をはらんでいて、誰かが作ったAAを印刷しただけとかフォントを変えただけとかトレスしただけとかの、まるっきりまるのまんまのコピー(デッドコピー)ならともかく、モナーっぽいものを自分で描いた「のまネコ」の場合は、著作権の侵害とは言いにくいという話なんですね。

したがって、上記で引用した三者は別々の見解を述べているのではなく、実は同じものの別の部分について述べているだけです。

じゃあ、

私がドラえもんに眉毛を加えたら私の創作物になるのでしょうか?

MUSICLIFE v2:誰がAAを殺したのか

という話になるわけですが、これはこれで別の話になるようです。

こういうパチモンからキャラクターが守られる理屈には一般には二つあって、一つは商標登録によるものです。

もう一つはアニメや映画など、まずベースになる著作物があって、その構成要素として派生的に登場キャラクターも著作権保護の対象になるという解釈*によるものです。

デッドコピーでなくても、例えばドラえもんだったら「『ドラえもん』に出てくるドラえもん」だと判れば、複製権や同一性保持権の侵害になるようです。

それでは、モナーの「ベースになる著作物」に相当する作品はあるのかというと、これはいくらでも挙げることができます。

シルカ!!のキャラクター考察には次の記述があります。

最初はコピペでセリフを喋らせるだけのキャラクターでしかなかったが、「ギコニャー’00 旅立ち」「勇者モナ太vs田中」「神聖モーナ帝国」「日本映画黄金伝説」等を経て「モナー童話集」で「ストーリーを作る」というAAのジャンルが確立する。

モナー キャラクター考察

特に「勇者モナ太vs田中」は私も当時リアルタイムで楽しんでいて、AAで物語を綴るとはなんて画期的なんだと感じた記憶があります。

これらの作品は当然著作物とされますし、その結果として登場キャラクターであるモナーにも著作権が及ぶという考え方は妥当だと思われます。

2ちゃんねるのような文字主体の掲示板に限らず、お絵かき掲示板や個人サイトなどで、様々な人がこれらを源流とした作品を作ってきました(私もそのうちの一人です)。そして厳密に言えば、これらの作品も先行作品の著作権を「侵害」しながら成り立ってきたわけです。

従って、AAを使ったありとあらゆる作品は著作権侵害のおそれが前提としてあると言えます。

少なくともマイヤヒーフラッシュがそういった作品の延長線上にある以上、この事実には変わりはなく、キャラを「のまネコ」に変えたところで「複製権の侵害」が「同一性保持権や翻案権の侵害」になるだけで本質的には変わらないと考えられます。

しかしながら、著作権の侵害の場合は原著作権者にしか諸々の権利がありません。ここで論点は「のまネコによって権利を侵害された著作権者は誰なのか」という点にシフトします。

[] 権利を侵害された著作権者は誰なのか  権利を侵害された著作権者は誰なのかを含むブックマーク

モナーを著作物として認めるか」の続きです。

AAが単体で存在するだけでは、抽象的なキャラクターとしてのモナー著作権が認められる可能性は低く、「思想又は感情を創作的に表現」する役割を果たす意味で作品に登場することで初めてキャラクターとしてのモナー著作権が及ぶのでした。

しかしながら、これらの作品に登場するモナーやら何やらの多くは既存のAAのコピペ(デッドコピー)とその改変によるものです。したがって、これらの作品にはその元になった単体のAA著作権が及ぶと考えることができます。

いわゆる「コピペ文化」のおかげで、モナー単体のAAが、モナーやその派生のAAが登場するほぼ全ての作品の原著作物と見なされる可能性があるわけです。

それではその大本の元のモナーを作ったのは誰なのでしょうか。

モナーの源流についても色々な説があるようですが、日本虚業組合オタクちゃんねるの過去ログにおける議論が参考になるかと思われます。

AA史の黎明期は史料が少なくて、当時の証言も記録に残ったものが少なく
検証が困難を極めてますが (;´Д`)
モナー&ギコの起源については
http://siruka.milkcafe.to/
↑ここのAA系統図&キャラクター考察が、現時点では最も信頼されています。
少なくともAA描きの間では。

雑談スレッド2

この系統図によると、「あやしいわーるど」の

 ヽ(´ー`)ノ

に手足が付いた

   ∩ _∩ 
 ( ´ー`)
 (    )
  │ │ │
 (__)_)

が、「あめぞう」で作られ、それが2ちゃんねるにコピペ改変されて

  ∩_∩
 (´ー`)
 (   )
  | | |
 (___)__)

となり、やがて耳や口が変わって

  ∧_∧
 ( ´∀`)
 (    )
 | | |
 (__)_)

となったようです。

どの段階のAAモナーの起源とするかは議論の余地がありますが、いずれにしても問題になるのは作者が判明していないという点です。

モナー(およびギコ猫)の作者はヤクバハイル氏であるという説があり、本人のブログでも作者としての発言が見受けられます。

この説の根拠になっているのはゲームラボ2002年2月号に掲載された「ギコ猫モナーの謎を追え!!」という記事なのですが、特設@あめざーねっとIII板ギコ猫スレでの議論から判断するに、この話の信憑性は極めて低いと思われます。

Wikipediaモナーの項においても、ヤクバハイルとの関係について言及されており、同様の結論に至っています。

したがって、現在のところはAAの原著作権者を特定することは不可能です。

[] モナーはこれからも守られない  モナーはこれからも守られないを含むブックマーク

権利を侵害された著作権者は誰なのかの続きです。

モナー著作権が認められたとしても、原著作権者は不明のままでした。

この事実により生まれる問題点は2つです。

一つめは、のまネコのような利用について「著作権法に基づく対応が極めて困難である」という点です。

これはひとえに著作権侵害が基本的に親告罪であるからで、原則的には第三者が騒いだところでどうにもなりません。

このことはかなり早い段階から専門家によってさんざん指摘されています。

本来、コミュニティの中の共有財産とすべきもの(一種のコモンズ)と現代の知財関連法規は明らかに相性がよくないので、この問題は必然的に生じたものだと言えます。

「のまネコ」問題にコメントしてみたりする - 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 [ITmedia オルタナティブ・ブログ

他人の著作物を盗用しても、そこに、創作を加えて作れば一応2次著作物となって保護される。(ただし、盗用された者との関係では著作権侵害となるので、損害賠償義務や刑事罰もある。)彼らはモナーのコピーとは立場的に口が裂けても言えないであろう。
だいたい、モナーって誰が著作権者かもわからないのである。

壇弁護士の事務室: のまねこ騒動

匿名掲示板系の流行作品の場合、そもそも「創作性のある部分」を付加して新たに作品を創作したのが誰であるのかを把握するのが困難なので、逆に言うと、そのような作品を無断で利用してもどうせ誰も訴えてこられないだろうと考えてるのはある意味合理的です

benli: 「恋のマイアヒ」論争

ちょっと言い方は悪いかも知れませんが、いかに盗人たけだけしいと思われることでも法的な根拠がなければそれを制限できないわけで、あとはみんなに盗人だと思われて、これはまずいというところまで追いつめるしかないのですが、どこまで追いつめることができるかでネット文化の今後が試されているような気がします。

大西 宏のマーケティング・エッセンス:「のまネコ問題」は、avexがそういう会社だということ

専門家はおしなべて「今の制度じゃしょうがないよね」という論調です。

でも、もっと致命的なのは、もう一つの問題点であるところの「著作権者が不明である場合はクリエイティブ・コモンズのようなライセンスを付与することができない」という点です。

クリエイティブ・コモンズとは、本来著作権者が持っている権利の一部を意図的に放棄することで、著作物のより自由で活発な流通・利用の促進を図る*というもので、commonsphere.jpで啓蒙活動が行われています。

クリエイティブ・コモンズライセンスの項目には、非商用条項や、同一条件許諾があります。これにより商用利用や二次利用の制限について規制することができますから、一見するとこの問題に対する強力な解決策のように見えます。

しかしながら、クリエイティブ・コモンズに限らずあらゆるライセンスの拘束力の源泉は著作権法です。ライセンスそのものには全く拘束力はなく、違反があった場合は著作権者が著作権法に基づいて権利を行使する、という形になります。

したがって、どのようなライセンスを付与するにせよ、それが機能するためには著作権者が明らかになっていなければなりません。

ライセンスを付与できない」という事実は、将来にわたってモナーを商用利用から守ることは不可能であることを示唆しています。

これはもう著作権法を改正して、いわゆる「フォークロア」の扱いについての条項を策定するしかないわけですが、フォークロアって何?で指摘されているように、AAのコミュニティーの意向って何なのかと言えば、現状でははっきり言って統一見解があるわけでもない*のが現状です。

コミュニティ間の確執のほうも実は深刻で、id:kyoumoe氏の日記を読むと明らかなように(avexにしてみれば)内ゲバの様相を呈している有様です(まあ、前掲の雑談スレッド2の>>20を読む限りそれもやむなし、なんですけども)。

さすがにここまで騒ぎが大きくなった以上、avexと同じ轍を踏むような真似をする企業が現れるとは考えにくいわけですが、逆に言えばこれをケーススタディとして同じことをもっと巧妙にやる企業が現れてもおかしくありません。

まあ、そういう場合は恐らく多くの人が問題にせず、むしろ歓迎するという形になるのでしょう。

と、なんだか妙な結論になりましたが、この結論に関連してこの話はもうちょっとだけ続きます。