avexのコメントが幼稚なのは顧客層がアレだから

前回の記事で、のまネコ問題について「続く」と書きましたけど、事態が大きく動いたので続きの前に商標登録撤回の件について。

しかしこれ、今までの愚行は何だったんだというくらい「賢い」戦略ですねー。

avexのコメントの文体が幼稚なのは、これがavexの顧客層のうちの、特に「のまネコ問題」に変に影響されてしまった中高生が対象だからでしょう。avexにとって2ちゃんねらは最初っから客じゃないですし。

これ以前のavexやZENのコメントは、反対運動を推進している人達(必ずしも顧客層ではない)に対してのものだったのに対し、このコメントは顧客層(必ずしも反対運動を推進している人達ではない)に対してのものです。

avexが想定していた主な顧客層は、中高生のうちの特にこの手の話題に疎い人達だったので反対運動なんて放っておいても良かったんですが、今やそういった人達にも「のまネコ問題」が知られることとなり、avexとしては「彼らに対しての言い訳」を用意しなければならなくなったんでしょうね、きっと。

これは反avex陣営の地道な活動の成果と言えます(「アンチオレンジレンジ」の活動では肝心の顧客層に対して効果が一向に実を結ばないのと好対照です)。

いずれにせよavexとしてはそういう人達さえ納得させられればよいし、そういう人達はあまりこの運動に深入りしてないのでこの説明で必要にして十分なのです。

これで納得しない人達はavexの顧客じゃないという意思表明とも取れますね。要は、のまネコグッズを買おうと思ってた人達に「買うのやめようと思ったけど、やっぱり買ってもいいかな」と思わせられればavexとしてはOKなわけです。反対運動を推進してる人達は最初から買おうなんて思ってないので、avexとしてはどうでもいい、と。

avexの顧客層のうち、特に厚いところにはそんなんばっかりしかいない──というのが私のavexに対するブランドイメージなので、文体が幼稚であることについては別に違和感は感じないんですよね(偏見ですけども)。あれを幼稚だと批判する人はもともとavexの顧客じゃないんじゃないでしょうか。

まあ、株主は怒るかも知れませんが。

反avex陣営の「実質的な負け」は確定かも

というわけで、結局モナーに似たキャラが登録されていた「米酒」が取り下げられ、「のまネコ」という文字が登録されているところの「のまネコ」は残るという結果に。

これ以降avexがだんまりを決め込めば反avex陣営の「実質的な負け」で終わりそうです。

avex陣営としては「商標登録は撤回、のまネコグッズは全て販売差し止め」が「最低条件」でした。

(2005-10-05 追記)
頂いたコメントによると、グッズの一部(特にモナーに酷似していたキーホルダー)の販売中止が決定したようです(Ref. 発売中止11月Yujin 『のまネコ 米酒缶フィギュアキーホルダー』)。

一見、この条件は最低条件としては厳しすぎるように見えますが、例えば謝罪とかしても商標もグッズもそのままでは誰も納得しません。商標登録だけ撤回されたとしても、そもそも登録されていることが判る前に「のまネコグッズ」が発表されただけで勃発したのがこの騒ぎなわけですから、あんまり意味がありません。グッズ販売を中止しても商標が残ってれば「avexが他のAAグッズに対して商標侵害訴訟を起こす可能性を残す」という意味で文句がでるでしょう。

逆に商標登録を撤回してのまネコグッズの販売を中止しさえすれば、仮に他の問題が残ったとしても一発で沈静化する類の話でした。

のまネコ」としてグッズが発表された時点で、実はこの問題は「商標を取る/取らない」と「グッズを販売する/しない」の2つが主な問題点で他は付帯的なものに過ぎなかったわけです。

タカラの例が思い起こされるためか、反avex陣営はこの2つの問題点のうちでも特に商標を問題にしていました。

avex陣営にとっては、avexが権利を「行使する/しない」ではなく「行使できる/できない」が問題点です。

「他のAA作品に対して商標侵害が認められる可能性は極めて低いわけだし、avexもそんな訴訟はしないだろう」という主張はそれなりに妥当なのですが、既存の作品についてならまだしも今後作られるものが商標侵害になるかどうかは「訴訟になってみなければ分からない」というのが慎重な立場です。

この立場に立つ人々にとっては、avex側が商標を持ってるかどうかが問題なのであって、「これこれこういう根拠でavexがそんなことするわけないので云々」あるいは「これこれこういう根拠で訴訟になっても侵害は認められないはずなので云々」とかいう理屈で納得させることは不可能に近いわけです。

一方、avexにとって本当に重要なのはグッズ販売の方です。

冷静に考えれば、商標登録は飽くまでグッズに付随するもので、avexが既存のAAについて何かしらの権利を得てそこから利潤を得ようとすることは、まあ、考えにくいわけです。avexとしてはのまネコグッズが無事売れさえすれば良いわけですから、既存のAAに対して権利を行使する必要はありません。

しかも、のまネコブームなんて一過性のものですから、商標なんて使い捨てで全然構わないわけです。まあ、売れ方によってはアニメ化するとかも考えられますが、可能性はちょっと低すぎです。

つまり、モナーっぽいキャラの商標は、反avex陣営にとって重要である割には、avexにとっては利用価値の低いものだったわけで、今となってはむしろマイナス要因ですから撤回しないほうが馬鹿です。

問題はグッズです。

avexが自主的に取り下げるのでなければ、グッズ販売への対処としては差し止めの仮処分以外は考えにくいと思います。

仮処分というのは、裁判をしてもその結果が出る頃には原告の被害は拡大し意味がなくなってしまっている──という事態を回避するための制度です。

クロマティ高校の映画の件でクロマティ氏がやろうとしたのがこれで、調べたら仮処分についての専門家による解説がありました。

この解説にもあるとおり、仮処分を執行してもらうにはそれなりの保証金を用意する必要があります。強制力が強すぎるので、そう簡単にはできないようになってるんですね。そして後で正式な訴訟をするわけですが、のまネコの場合は、誰が原告になるのかも問題ですし、そもそも訴状の内容をどうするかという本質的な問題が絡んできます。

前の記事で書いたとおり、著作権者が判明しない限り著作権法ではどうにもなりませんし、反avex陣営が商標を取ってるわけでもないですから、グッズの販売については法的にはどうしようもありません。

そんなこんなで反avex陣営がもたもたしている間にavexはグッズを売り尽くしてそこそこの利益を上げるでしょう。早々のうちに仮処分申請をしなかった(できなかった)時点で、この点については反avex陣営の事実上の敗北は決定していたのです。

『avexの黒い霧』

反avex陣営の「実質的な負け」は確定かもの続きです。

そんなわけで、法的には事実上可能な手段がなかったわけですから、反avex陣営のやり方が多少なりともゲリラ的になったのは必然でした。

そこに目をつけてavexがカウンターとして殺人予告が云々という話を持ってきたのは上手い手です。

真っ当にのまネコ問題へのクロスカウンターを放つなら、avexの楽曲を無断使用しているいわゆる「黒フラッシュ」の完全排除が妥当でしょう。「先に著作権侵害したのはそっちだろが」という理屈ですね。ここまでこじれた今となってはほんとはavexはこれをやりたくてしょうがないと思います。

でも、黒フラッシュの功罪については議論の余地がある(少なくとも私はそう考えています)わけですし、何よりネットユーザからの猛反発は必至です。それより、その善悪について議論の余地が全くなく、判例も出ている脅迫の事実を持ち出した方がavexにとって有利に働くわけです。

各報道機関は馬鹿正直に、商標撤回の件と脅迫の件を合わせて報道しました。

さらにこれに対して、ひろゆき氏がわざわざ2件目に関しては、avex社のグループ会社の会員回線からの犯罪予告でしたと書いてavexを挑発してるそうですから面白いですね。

殺人予告はavex関連会社から?によると、この「グループ会社」というのはUSENだそうです。前年度末の情報によるとUSENavex筆頭株主になっています。

USENはただの回線業者ですから、そこの回線から書き込まれたからって自作自演の証拠になんてなりゃしないんですけども、まあ、何にしてもひろゆき氏は嘘は書いてないわけで、読んだ人がどう思うかは自由なわけです。

なお、最初の殺人予告とトリップが一致していることから、漏れてない限り一連の書き込みが同一人物によるものであろうことは間違いないようです。何にしても、これらがavexと無関係ならavexにとって不運もいいとこですし、自作自演ならワキが甘すぎです。

のまネコの方がオリジナルであるという怪情報も流されているようですし(不発のようですが)、ここまで来るともはや情報戦ですねぇ。

果たして自作自演の決定的証拠は出るのか。出ないとしても疑惑は残るわけで、グッズについてはもはや販売停止は絶望的である以上、反avex陣営にとってはどこまでその疑惑を濃いものにできるかが勝負どころになりそうです。