長いものに捲かれる仕組み

[リニア新幹線]

これからの日本に時速500キロで走る鉄道が不可欠だろうか? 

速ければ速いほどよいという意見もあろう。だが代償が大きすぎる南アルプスの壁に全長50キロもの長大トンネルをぶちぬき、その掘削土で谷を埋め立てるという。残土量950万立方米といえば、約1キロ四方を高さ10米で埋め立てる容量だ。それだけでも未曽有の自然破壊である。

そして東京大阪間9兆円超の建設費用。時代が異なるとはいえ東海道新幹線の建設費用は3800億円だった。

解散時の旧国鉄には37兆円もの債務があった。そのうち28兆円は国民の税金で返却し、残部をJR各社に割り振った。JR東海は、15年かけて、当時の5兆円の負債を3兆円まで減らした。それも金利の低下によるところが大きい。ここでまた9兆円超の借金。リニア新幹線の投資で景気がよくなるという声があるが、JR東海に余裕があるなら、運賃を下げてもらった方が、はるかに経済効果が大きいのではないか。

もちろんこれだけの大プロジェクトだ。賛否がわかれるのは当然だろう。だからこそ、運行の安全性を含めて熟議が必要だ。

ところが、議論の場をつくってほしいと要望しても、JR東海は応じない。というより議論を避けたい様子がありありと見える。しかもやるべきことをやっていない。新しい環境影響評価法では、環境の保全をめぐり、計画段階で代替案を複数作成し、国民に提示することが要求されているのだが、それをやっていない。ことあるごとに国交省の交通政策審議会の認可をふりかざすが、交通政策審議会も代替案を検討していないのである。

そしてリニア用の新型車両を誇示して国民の期待を煽る。反対運動する側は、マスコミが取り上げてくれない限り、到底太刀打ちできない。

その結果、交通政策審議会の認可から、わずか2年余で環境影響評価を終わり、最終決定段階に入ろうとしている。実質的には環境評価などしていない。しかし、原発でも同じだが、国民は何も知らされないまま、長いものに巻かれてしまう。

米軍のシリア砲撃を避けることができたのは、米 英 仏の世論調査で、国民の大半が戦争を忌避していることがわかったのが大きい。政策の決定に、世論調査をとりいれて、力の暴走を阻む方法はないだろうか。

画像上でダブルクリックすれば大きくなります。写真は「リニア新幹線 南アルプスに穴をあけちゃっていいのかい」からお借りしました。あわせてご一読ください。(http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/folder/441658.html)