飛翔

日々の随想です

トーク・イベント

今日は晴れてお花見日和の週末。
 晴れていても寒くてコートは手放せない。
 今日は翻訳家の柴田元幸氏をお招きして名古屋市内の隠れ家的名店JAZZ茶房「青猫」でトークイベントがあった。柴田元幸トーク・イベント「柴田元幸が選ぶ3冊」と題してお話をうかがうことができた。
 夕方5時から7時までの二時間。「柴田元幸が選ぶ3冊」=『肌ざわり』『シカゴ育ち』『外套』を中心にお話をうかがった。

肌ざわり (河出文庫)

肌ざわり (河出文庫)

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)

一部が終わったあと、ワインを飲んでリラックスするか、濃いコーヒーを飲んでしゃきっとして二部に望むかと言う選択でワインを飲んでリラックスをお選びになった柴田氏は選択が良かったのか(?)大変リラックスしてユーモラスに、しかし丁寧に質疑応答に対応してくださって好感度は100パーセント。
たくさんの質問に丁寧にお答えになってくださって、頭が下がった。
 翻訳とは何かと言う質問に
 例えば一人しか乗れない踏み台の上に子どもが一人乗って、壁の向こうの景色を下にいる子どもたちに伝えること。それが翻訳に似ているとお答えになった。
 踏み台の子どもが下にいる子どもたちに見た通りを伝えないで面白く自分の主観を入れて伝えるのは良い翻訳ではなく、それはだめである。
 つまり翻訳者とは再生するだけである。自分の痕跡をのこしてはいけない。翻訳は原作とほぼ100パーセント同じと言うわけには行かない。つまり原作と全く同じにはいかないものである。

翻訳家は音楽で言い換えるとオーディオアンプを通してでる音楽をいかに良い音かと思わせるのが翻訳家であるという。

 無人島に持っていくとしたらどんな三冊を持っていくかと言う質問には「ドンキ・ホーテ」「聖書」(旧約)フランス語の「ボバリー夫人」だそうだ。

英語とは何か?という質問には:
 ・いまだに外国語であるという認識である
 ・英語を読めただけで嬉しい。
 ・マスターしたとは思っていない

 今の若者に対する感じは?
 物事の沈み方が浅くなっているように思う。
十代のうちにいろいろなことをひとまず沈み込ませておくことだ。
体の中にしずみこませたものはいつか身になるとのことであった。

冒頭の三冊についていろいろ語ってくださったが、今日のところは先ずはアウトラインだけをまとめたレポートしたい。
※東大教授であり、翻訳の世界の第一人者である柴田元幸氏におめにかかるというのでどきどきしていたが、大変温かな人柄で、ユーモアがあり、それでいて折り目正しい方であって感動しました。特に座って質問するものには座って同じ視線上でお答えになり、「青猫」のマスターが立って質問したら柴田さんも立ち上がってお答えになった。同じ視線上で語り合おうという真摯な態度が大変好感が持て印象的でした。

名古屋から30分ほど離れた閑静なところに「JAZZ茶房 青猫」はある。


左の壁面は陶板でできていて地下を降りていく。


コンクリートの打ちっぱなしの簡素な室内。椅子やテーブルも驚くほど質素なのがかえってひなびた趣があって良い。

JBL project k2 S9800SEとGoldmundのシステム
デジタル伝送で原音を余すところなく「再生」する。
JBLに向かうように椅子が十数脚並び、リスニング効果満点のホールにぞぞぞぞっと肌があわ立つような素晴らしい音が響いてしばらく椅子から立ち上がれなくなる。


昭和の初期のガラスがはめ込まれてこれまた別世界がかもしだされる。
リスニングホールの壁際には本棚が。
マスターは文学にも造詣が深く、本棚にはジャズの本のほかに、向井敏の本がずらり。開高健、「風の恭三郎」こと、百目鬼恭三郎 の「風の書評」あり。村上春樹カフカ柴田元幸と、集められた本の趣味のよさはちょっとしたライブラリー。

ここでは月一回、読書サークルによる「読書会」が開催される。

わが家からはあまりにも離れているので毎日通うことが出来ないのが残念。

名古屋へ起こしの皆さん、一度は訪れておいしい珈琲とジャズにしびれてください。

JAZZ茶房 青猫
名古屋市名東区藤が丘49 B1
052-776-5624
13:00-24:00
日曜日のみ-19:00
木曜定休