「瓢箪から出た駒ならぬワイン」天童ワイン訪問

将棋の駒の名産地として名高い天童市ですが、さくらんぼに代表される果樹王国である山形県は果物の栽培に適している恵まれた土地なのです。前述の朝日町ワインしかり、そして8月1日に訪問しますタケダワイナリーといったワイナリーが数多く存在するのも山形県の特徴です。(11社存在し全国でも3位のワイナリーの数です。ちなみに、1・2位は山梨県と長野県。)
そんな天童も例外なく果樹も多く植えられており、かつては日本酒の酒倉で嘉永5年(1852年)3月創業で200年の歴史ある鷹正宗酒造さんが前身となり、果樹栽培に適した気候を生かして地元に根ざしたワイナリーへとして思い切った転身をしたのがこの天童ワインさんです。
戦時の企業整理に伴い酒造廃業を余儀なくされた時、杜氏は勿論のこと日本酒造りに関わって来た人々はあちこちへ散り散りに移り、人材は殆ど流出してしまったそうです。そこで1984年に復活する際には地元のブドウ農家との連携を重視し、全て契約栽培でブドウをまかなうことで再出発を遂げる事が出来たのです。契約栽培でのブドウ調達ですが、企業規模がそれほど大きくない代りに身動きが取りやすいので緊密な関係を築くことが出来るのではとボクは考察しております。そんな天童ワインさんでは今でも年1回は山梨へ研修に出かけており、あちこちのワイナリーへ行かれたりするそうです。
今回は縦走が取りやめになった日なので一日空いたのを急遽埋める形で申し込みをしたのですが快く受けて下さり、見学に応対された方は総務の方でしたので詳しい研修先までは存知あげてないのですが、試飲の際には一生懸命説明して下さりました。誠意溢れる対応に好感度○の印を躊躇無く付けたいです!
さて、試飲したワインですが、総じてレベルの高いワインでした。前日の朝日町ワインさんはモノによってはまだまだの感が正直申して有りましたが、天童さんはユニークなワインも造っていながらシッカリとしたものでどれも申し分ないものでした。頂いた順にコメントを記していきます。
○ナイアガラ(N.V.)
2005国産ワインコンクールで銅賞を受賞したワインで、低温醸造によりナイアガラ特有のキツイ孤臭が少なく、また独特のしつこい甘さも無く上品で良くまとまったワインです。
○フラグラント(N.V.)
セイベルを用いた、長期熟成型のやや甘口に仕立てたしっかりした造りの甘口ワイン。古酒に近い趣の少し蜂蜜がかった香りと甘さが特徴のワインです。
オリンピア(2005)
東京都国立市のぶどう育種家、澤登晴雄氏により創製された品種を使用したワイン。非常に甘味が有る栽培困難な品種で、天童ワインさんだけがこれをワインに仕立ててます。
濃厚な甘口ワインでアルコール度数は5から6%と少ないが、あふれんばかりの上品な甘さがそれを余り補うほどの独特の魅力を持ったワイン。
(参考)
Webページ「幻のブドウ オリンピアの上原果樹園」より「オリンピア物語」の項
○山形シャルドネ(2005)
瓶熟成タイプのシャルドネワイン。都農さんの「アンウッド」が開放的でサッパリした感じであるのに対し、こちらは良い意味で田舎臭い地味さが垣間見える素のシャルドネワイン。
○山形シャルドネ樽熟成(2003)
辛口度No.1のシャルドネワインで、後述する「原崎シャルドネ」よりキレがあります。樽香はきつく無く果実味もチャンと味わえますがもう少し瓶熟成したのを飲むのがさらにGood!かもしれません。
原崎シャルドネ(2004)
天童ワインさんのワインの中で最も完成度の高いイチ押しの逸品。樽熟成に耐えうるしっかりした果実味のある厳選された原崎地区のシャルドネを用いている事から「山形シャルドネ樽熟成」よりまろやかで味わい深いので食中酒としてじっくり味わいたいです。
○天童ワイン(ロゼ・赤、N.V.)
共に1,000円という安さながら、飽きのこない味のレギュラーワイン。お勧めです。
赤はメルロとマスカット・ベリーAを用いた瓶熟成の赤ワインで、ロゼは朝日町のワインと同様マスカット・ベリーAからブラッシュ製法で造られたもので、日本ワインで辛口もしくは中口の良質のロゼワインが少ない中貴重な存在で、どんな人にも勧めたいワインです。
○山形ルージュ(N.V.)
弾けるようなブラックベリー系の香りが特徴のミディアムボディ系のカベルネ・ソーヴィニヨン種使用の赤ワイン。渋味も適度でまろやかな味です。「山形シャルドネ樽熟成」と同様にもう少し瓶熟成したのを飲むのがよりGood!になる事請け合いです。
○わんだふる(N.V.)
コンコード種使用の甘口赤ワイン。五一わいんさんのコンコードに匹敵するぐらいの出来栄えと感じました。甘さの中にもしっかりした味わいが感じられます。
地味な存在でありユニークな出自ながらも、着実に地に足を付けた進化を目指している地元重視の名ワイナリーだと小生は感じました。今後、どのような道を目指して行くのかが本当に興味が湧く一寸気になる好印象のワイナリーです。