心暖まるもてなしにありがたや。

原茂ワインさんの瀟洒な母屋

前日は、見学後夕方から晩までいろんな出来事がありドタバタしましたが、とっても楽しい一日でした。これもひとえにBlogを通じての縁からです。そんなもてなしに感謝しつつ、この日も暖かいもてなしを受けたのでした。(本当に、暖炉の温かさが身に染み入った。)

いぶし銀の存在から一歩一歩と高みを目指す古豪〜原茂ワイン訪問

勝沼のワイナリーってどんなトコがあるの?」と聴かれて大手以外で真っ先に思い浮かぶのが、丸藤さん・中央さん・勝醸さんの所謂『御三家』ですが、負けず劣らずの地位を占めかつ地元に根ざした歴史あるワイナリーは昨日訪問した大泉さんやシャトー勝沼さんもしかりですし他にも色々と挙げられますが、1924年創業の原茂ワインさんの実力は侮れないものがあります。
一般の方々には、JR中央東線の特急列車「あずさ」「かいじ」の車内販売で「ハラモワイン」の銘柄のカップワインが馴染み深いかと思います。(かつて小生も飲んだことあります。) また、日本ワインファンが注目している『国産ワインコンクール』では、「ハラモヴィンテージ甲州樽熟成」がミレジム(=ヴィンテージ)問わずコンスタントに銅賞以上に入賞しています。(初回の2003年は2001年物が銅賞、2004年では2002年物が同じく銅賞、2005年では2003年物が銀賞、そして2005年では2004年物が銀賞兼最優秀カテゴリー賞。連続銅賞以上は数少ない銘柄に限られます。改めて調べて見まして驚きました!)
このように、普通の方から日本ワイン通まで何気に知られてはいますが、声高に存在を主張するのでは無く、さり気なさで勝負している激渋仕事人(例えて言うと、野球では二番バッター・サッカーでは守備的MF・ラグビーならフランカーといったトコでしょうか。)的な佇まいというのがボクが原茂さんに抱いていた第一印象です。
でも、激渋仕事人だけには留まってへん!と驚嘆させられたのが、2006年5月27日の「新田正明氏−ワインを楽しむ会」で頂きました「ハラモヴィンテージ・シャルドネ(2004)」で、当時山梨から戻り暫くはあの味が忘れられず、結局"馴染みの酒屋さん"に拝んで取り寄せて貰った程です。(たった一樽分の限定物で既にワイナリー直販では売切れてるのが残念です。) その後、小耳に挟んでいましたがイタリア系品種のブドウ栽培に取り組む等、新しい風を日本ワイン界に吹き込んでいます。
ようやく今回、待望の機会が訪れまして、まずは今日の発展を築いた専務の古屋真太郎氏からワイナリーのいきさつについての話や醸造設備の案内をして頂き、続いて古屋氏と共にワイナリーを支える杉山啓介氏から栽培を中心にいろいろとお話を伺いました。
杉山氏がイタリア系ブドウの試験栽培に取り組むようになったのは、ワイナリー巡りで良く耳にする温暖化の影響を見据えてということがありますが、何よりも縁あってイタリアで修業されたことが大きいのです。期間はおよそ3年間で内1年間はなんとピエモンテ州ロエロ地区の名門モンキエロ・カルボーネにてお手伝いも兼ねて滞在されてました。
そういうことから、イタリア系品種がメインですが、中には丸藤さんでも注目されているプティ・ヴェルドー、カベルネ・フラン、シラー等も手掛けておられ色々な品種の中で勝沼に適応しているのはどれかを見極めている最中で、決してイタリアにこだわらない柔軟な姿勢で取り組んでおられます。
ちなみに、そのイタリア系品種は覚えるだけでも大変な上にそれぞれ異なるクローンも植えていて、悲しいかな素人では見た目サッパリ区別がつきません。(枝だけの冬場なら尚更です。苦笑) 名前を挙げると、黒ブドウでは「キアンティ」で有名なサンジョベーゼ、「バローロ」で有名なネッビオーロだけでなく、バルベーラ、レフォスコ(refosco、フリウリ=ヴェネツィア=ジューリア州や国境が接しているスロヴェニアクロアチアで栽培。)、ラヴォーゾ(Raboso、ヴェネト州で栽培。酸味と濃ーいタンニンが特徴だそう。)、白ブドウではピコリット(Picolit、フリウリ産。干して甘口に仕立てるのが一般的。)、フィアーノ(Fiano、カンパーニャ州等南部で栽培。DOCGワインのフィアーノ・ディ・アヴェリーノで使用。)等です。もし見に行くのでしたら、展葉してからと結実した時が良いかと思いますが何せその時期はブドウ栽培が繁忙期となるので、あらかじめアポをちゃんと取るべきなのは言うまでもありません!(勿論、オフシーズンもです。) 植え始めてから約2年になりますが、結果が出るのは早くて今年で来年ぐらいには大方出るそうらしく、これから見極めをして選択に入るとのこと。選ばれし品種が将来の原茂ワインの一翼を担うと思うと、楽しみですね。
(困ったことですが、2006年11月9日の記事で取り上げた『この雑誌』の32ページの写真、正しくは左からラヴォーゾ、ピコリット、レフォスコ、サンジョベーゼ、フィアーノです。(で、大丈夫ですね。杉山様。笑) 他にもこの雑誌誤植しまくりで初めて見た時から頭抱えました。トホホ、、、。
その好奇心溢れる姿勢(本人はまだまだと謙遜しておられましたが、貪欲に良いトコロを取り入れる気持ちにはおみそれしました!)は栽培に限らず、醸造にも現れてます。杉山氏は前述の'04物の自社農園シャルドネに関してはバランス重視と語ってましたが、目指すのは本来持つ果実味がタップリの味に仕上げたいとキッパリと述べておりそのためには栽培でまだまだやることが沢山あり、そうしてこそ本当に良いのが醸造出来るとの一言が響くのでした。そうした試行錯誤の過程の一例として、自社農園のメルロをマセラシオン・カルボニック(MC法)により試験的に仕込んだワインのサンプルを頂きましたが、意図されているまろやかな口当たりと穏やかながらも香りたつブルーベリー系の香りが出ており、美味しかったです。これは、日本人の口に合うのでは!と思いました。
こじんまりとし激渋なポジションながらも、通好みでもあり親しみやすい存在でもある原茂さん、素敵な日本家屋が目印で気持ちが休まります。1階が直売場で2階はカフェとなっており、勝沼・一宮近辺では勝醸さんやルミエールさんとならぶ人気のワイナリー直営カフェです!(但し、営業は4月から11月。) 今後が気になると同時にオススメかつ期待のワイナリーの一つですよ!
(専務の古屋真太郎様、それから杉山様には本当にお世話になりました。改めてこの場を借りて厚く御礼申し上げます。)
○参考資料
The Oxford Companion to Wine
The Oxford Companion to Wine(Third Edition)
Jancis Robinson (編集)