2回目の鬼蔵巡り&買い物ツアー!(二日目)

いつもの定宿、勝沼ぶどう郷YHにて宿泊したボクは、度々お邪魔してます菱山中央醸造さん→シャトー酒折さんの植樹祭に招待されました→「大御所」丸藤葡萄酒工業さんの蔵巡りツアー午後の部で締め、という段取りで当日回りました。
菱山さん>
丁度この日は10月に仕込みしたワインの瓶詰めです。少ししか出来ないけれど、お手伝いしに参りました。昨日訪問したイケダさんのお父様(池田俊和氏)も仕上がり具合を見にきてました(勿論、お互い挨拶したのは言うまでもありません。)
一年ぶりの瓶詰め作業に最初はおっかなビックリで戸惑いましたが、体が憶えていたのか次第にコツを掴んできました。思い出すと大分はかどります。回りの皆さんは当然慣れた手つきで、後でユースから助っ人で来た人達も加わり交代しながら作業をテキパキと進めてます。いつもの美味な名物、「ねじりドーナツ」をエネルギー源として頂き、そして、瓶詰めの分の小分けしたワインを味見させてもらいました。流石旨いです!!
次の訪問先へ行かねばならないので、今回は早めに交替させて頂きました。名残惜しいのですが仕方ありません。若旦那の三森斉氏はじめ、農家の皆様やYHからの助っ人の方々にはお礼をし、酒折さんへと向かうのでした。
シャトー酒折さん>
お天気に恵まれたこの土日ですが、本当に晴れになってよかったです! まるで、酒折さんの新たな門出を祝うかのような晴天です。この日は、ワインフェスの記事でも触れましたが、「こだわりの葡萄生産者」((C)リカーショップながさわさん)池川仁氏がアドバイザーとして参画することとなったマスカット・ベリーAの垣根栽培の自社畑で植樹祭が開催されるのです。
池川氏を始めとする腕利きの農家さんと醸造酒折さんがタッグを組み、より高みを目指して「真の日本ワイン」を造り出すための第一歩が踏み出されたのです。
小生は、2006年7月2日にシャトー酒折さんを訪問させて頂きましたが、この時の記事で書きましたように普通に手の届く「プレミアム・ワイン」造りへ本格的に踏み出したのです。
その池川氏のベリーAワインを頂いた時の感想はワインフェスの記事を見て頂くとして、新たに酒折さんにて垣根式での栽培を行い、池川氏自身の畑で栽培されるベリーAと比べながら農家と醸造家が手を携え共同でワイン造りに踏み出すセレモニーに立ち会えた事は感無量でした!
実際に手取り足取りの指導にて苗を植えるのもとても勉強になりましたが、それと共に農家と醸造家との絆が深まり、農業とワイナリーの関係が新たなステージに移る予感を感じました。池川氏と酒折さんの取り組みが皆が喜ぶワインとなって結実し、日本ワイン界に一石を投じ刷新へと繋がることを祈ってます。
(シャトー酒折の木下社長・井島正義氏、池川仁氏、他皆々様には改めて御礼申し上げます。有り難うございました。)
<丸藤さん>
今回のツアーは118年の歴史を誇る名門・丸藤葡萄酒さんがトリです!
締めに相応しい貫録ある建屋を見ると身が引き締まります。売店ではワインフェスでお目にかかった狩野高嘉氏(狩野氏も実は自転車大好きなのだという事が後で分かりました。笑)一般客の応対をしており、その横で社長の大村春夫氏が自ら蔵巡りの受け付けをしてました。
大村氏は、勝沼だけでなく日本ワインに関わっている人なら知らない人はいない有名人ですが、単に有名なだけでなく年齢問わず誰からも尊敬され、人望を集める存在です。ボクもこの日までに幾度か会ってますが、今回の蔵巡りツアーでじっくりお話を聴き、異口同音に皆さんが「この人とは会うべし!」と言うのをひしひしと感じたのです。
さて、蔵巡りツアーでは最初に自社畑を三ヶ所案内してもらいました。その三ヶ所は、

  • 「旧屋敷」(「ふるやしき」と読みます)=シャルドネ主体の垣根式。
  • 「滝の前」=メルロの垣根式。
  • 「試験園」=現在はプティ・ヴェルドーが殆ど。一文字短梢の実験場。

です。特に垣根の畑では、仕立てだけで無く樹間や畝と畝の間の距離でヨーロッパの受け売りではなく日本の風土にあったやり方を模索して土造りにも手を入れ、「丸藤さんなりのブドウ造り」を通じその土地に合った方法とは何かを追求している姿勢に大いに感心しました。そして、それこそ「垣根」を越えて日本ワインに携わる人々がその精神を学んで欲しいと痛切に思いました。
それからは醸造場と発酵タンクと貯蔵庫の見学に移るのですが、内側がエポキシコーティングされているコンクリート製の発酵槽が現役で稼働していることと、ガイド本でもよく掲載される酒石の輝きが美しい地下の貯蔵庫(昔の発酵槽を改造)には驚かされました。地形を利用し上手く配置されたこれらの設備は使い込まれていても色褪せない雰囲気を感じさせるのでした。特に、地下の貯蔵庫の扉にはめ込まれたステンドグラスの美しさには見とれてしまいます。


また、貯蔵庫に通じる地下の廊下には展示物が有り、ブランドネーム「ルバイヤート」の元となった日夏耿之介の書国産ワインコンクールの金賞ワインが展示され歴史の重みをズシリと感じさせられます。訪れた際には是非見学して下さい!
そして、ラストはお楽しみのデギュスタシオン、わざわざ東京からチーズを取り寄せた程で有難い話です。お宝物もありましたので、ざっとですが振り返りたいと思います。

爽やかな「本家」柑橘香が心地よい。やはり「オリジナル」の方が良いですね。スッキリとした味わいですが、大村氏によるともう少しブドウの凝縮感があればとの事です。

世間ではバッド・ヴィンテージといわれているこの年ですが、丸藤さんのは樽香に負けないよいバランスの果実香がハッキリと感じられます。これには驚きました!

言わずと知れた丸藤さんの代名詞的ワイン。いつもでしたらシュール・リーの旨みたっぷりに感じるのですが、この日はグラスのせいか円やかにより美味しく感じます。

ハードチーズのコンテとの組み合わせがピッタリでその美味しさに感動! 樽貯蔵の甲州ワインでは比較的強めの樽香を感じますが、さっきのシャルドネと同様負けるどころか凌駕してます。

  • プティ・ヴェルドー(2006ミレジム、バレルサンプルを瓶詰め)

濃色のガーネットですが、落ち着いた味で適度なボディーと渋味が心地よいです。新樽ですが樽香はこちらはあまり感じさせません。山梨産のブドウで濃縮感が出せるのはやはりこの品種だそうです。

薔薇の香りがし華やかです。同時にセカンドのノーマルラベルも味見しましたが、やっぱり金ラベルの方が当然上でセカンドは若干青臭さと薄さを感じたので別の産地(セカンドは最初何も告げられずに出たので、、、失礼しました。)かと最初は思いました。

2003ミレジムでは2006年国産ワインコンクール金賞を受賞したワインの2004年物で、アッサンブラージュ比が、カベルネ・ソーヴィニョン=25%、メルロ=36%、プティ・ヴェルドー=36%です。王道過ぎます!批評なんてほっぽり出したくなる、一言「エレガント!」
試飲を通じて、この日の出来事全てを振り返りながらつくづく思ったのが、かつて海外の濃厚なものに対し日本のが薄いのを「エレガンス」と捉える段階は終り、本当にブドウそのものから醸し出される自然な凝縮感を引き出して行く必要があるステージに移ったという事です。それは、大村氏が試飲で「もう少し濃縮感が、、、」と語ったのに対し、ボクがその言葉の真意を訪ねたからです。
以前の日記で「アルコール入り濃縮ブドウジュース」ではなくナチュラルな造りを志向したワインについて書きましたが、そこでは突っ込んで書いてなかった「ブドウそのものの凝縮感の大切さ」を痛感させられたと共に、日本ワインは醸造技術は極みに達しているが本当に美味しい味の詰まったブドウ造りはまだまだでそこを克服すれば本当にハンディーを越えて出来た素晴しいワインとなる事です。それは、いかにブドウのポテンシャルを最大限に栽培でもって打ち出して行くかという議論になるのですが、結局は以前述べた人智と自然の力のバランスを高次元で保つことに行き着きます。それを実践しようとしているのが、前述の池川氏でもあり、大村氏でもあるのです。
ルートは多少違っていても、素晴しい日本ワインを造り出すというゴールは同じ。飽くなき「挑戦者」のスピリットを持つ大村氏の実直でもあり、懐の深い心にはもうゾッコンです。(話も聴いていると「大村さん、おもてなし上手でその上自身も楽しんでいて熱弁だなぁ〜!」と感心しました。) 丸藤さん、ココもまた訪れたくなるワイナリーです! 日本ワインを知る上では見逃せませんし、ワイン初心者にこそ絶対に訪問して欲しいですネ!