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リプロな日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-10-24 中絶という罪の構築〜発表資料(2)

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2006/10/8に私のからだから合宿で発表した際の資料の一部です。引用の際には,下記の発表資料であることを明記してください。

SOSHIREN主催 女のからだから合宿  2006年10月8日

分科会 ザ・中絶〜嘘と沈黙を超えて

発表題目「中絶という罪の構築」

金沢大学大学院社会環境科学研究科 塚原久美

なお,発表時の資料に若干手を加えた部分があります。

「胎児」観の変遷

エンブリオロジー以前

前成説〜ホムンクルス仮説など,子宮のなかに最初から「小型の人間」がいるとする説

後成説〜徐々にかたちが形成されていくとする説


卵子の発見

1826 バイアーの卵子の発見→エンブリオロジー創設

1875-79 ヘルトウィフィ,フォルによる精子の発見

以後,エンブリオロジーが盛んに

→1940年頃までに ヒト発生標本の完成


胎児治療の開始

1960-70s 分娩監視装置の登場(ドップラー,エコーetc.)

(c)K.Tsukahara 2006/10/8

※バイアーの卵子の発見は,人間を含む胎生動物の発生の仕組みが解明される端緒となった。その後の精子の発見とは,受精過程の発見を意味している。

参考 http://d.hatena.ne.jp/okumi/20060516

エンブリオロジーとは?

  • 胎生学(医学用語)→発生学に同じ。
  • 発生学(生物学の一分野。生物の個体発生を研究する科学。手法や対象などにより,実験発生学・比較発生学・発生遺伝学などに分けられる。

広辞苑第5版〕

・様々な動物の種にはある共通した発生の段階があり,外胚葉と中胚葉,内胚葉が層を成す有機体に他ならないことを明らかにした

(c)K.Tsukahara 2006/10/8

※「胎生学」の定義が「発生学」に依拠しているのは,「発生学」という言葉が先にあったためだと考えられる。胎生学が医学,発生学が生物学の用語であることに注意。

ヒト標本完成前の発生学/胎生学

ここにはコピーできないが,発表時の資料では魚,鶏,豚,ヒトの初期胚と後期胎児を並べて描いた図を示している。4種とも初期胚はそっくりだが,後期胎児は成体に近い。

初期のエンブリオロジストたちが驚きとともに見出したのは,通常,卵から成長するとは考えられていない豚や人間も,当初は卵から始まるということ,しかもそれが魚や鶏とも共通した成長過程を経ていくことであった。当初,エンブリオロジーは生物学分野の学問だった。

図の出典:New Webster's Universal Encyclopedia, Bonanza Books, 1987:327.

カーネギーのヒト発生標本

図の出典: http://embryo.soad.umich.edu/carnStages/carnStages.html

上記標本の排卵後の日数(産科学の妊娠週数):No.13=28日(妊娠6週)〜No.23=56日(妊娠10週)

※カーネギーのヒト発生標本が完成したのは1940年頃と言われる。この標本の完成後,生物学者たちの「発生」への興味は急速に失われた。その一方,第二次世界大戦後の医学教育(日本を含む)では,もっぱらこの種の標本が用いられるようになった。戦後,日本語でエンブリオロジーを「発生学」ではなく「胎生学」と訳すようになったのも,そうした関心の変化の現われであろう。つまり,人間の発生を他の動物との類比で説明することはなくなり,ヒトの卵子から成体としての人間までの連続性でもって説明されるようになった。*1

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21世紀美術館の新しい特別展示――川崎和男展――を観てきた。じつはあまり期待していなかったので,思わぬ掘り出し物を見つけた気分だった。館内の各所に置かれた椅子もシンプルでおしゃれで座り心地がよくてよかったけれど(なかでもブランコ型の椅子がいい!),まるびぃの象徴,白い円形の展示室のなか,川崎さんが会ってみたいと思っている(故人,外国人も含んだ)有名人の一人一人のために選んだビートルズ・ソングのオルゴールが鳴り響くオマージュの部屋がわたしは気に入った。人選,選曲はもちろんのこと,インスタレーションの微妙な違いや組合せなど,いろいろ思わされることがあり,しばらく楽しめそうです。

ガラス張りの部屋に刃物を突き刺した円柱が並んでいる展示も悪くなかったけど,どこかで観たような気がするのは……なぜ? 川崎さんはもともとインダストリアル・デザイナーで,ご自分が車いすに乗ることになったとき,そのデザインの悪さに一念発起して美しい車いすを作った人だと聞いている。展示されていたあれがたぶんそうなのだと思うけど,思わず乗ってみたいと膝を打ちたくなるシンプルでカラフルで美しい車いすだった。足腰が弱ってもなおおしゃれな気分になれる車いす,すてきです。

展覧会の主旨が下記にありました。わたしの下手な説明より,こちらがいいかもしれません。

◎展覧会主旨

タワシ、メガネ、インテリア、車椅子、コンピュータ、ロボット、家庭用原子力発電機から人工臓器まで、常に新たな地平を目指して飛行するデザイナー川崎和男の大規模な個展。キーワードは「いのち・きもち・かたち」。「21世紀はデザインが日本を変える、世界を救う」と主張し、最先端の技術を駆使しながら、あくまでも「手でデザインする」ことの価値を唱える川崎のデザインワークを映像と音楽を取り込んだ体験型の展示空間によって紹介する。とりわけ、ビートルズの曲を仕組んだ12のオブジェによるインスタレーション《PLATON'S ORGEL》(プラトンのオルゴール)は必見。

http://www.kanazawa21.jp/ja/04event/event_one.php?id=262

もうひとつコレクション展のほうに追加された奈良美智さんの「小夜曲」。思ったより大きな作品で,薄暗くした部屋全体が絵の中の世界みたい。なかなかポップなノリですが,この方の描く少女って,ちょっと怖いところがあるんだよね。薄暗い部屋の中心に作られた家の上窓からかろうじて覗けるメッセージには,くすっと笑ってしまった。(こういう芸の細かさ,好きです!)こちらの展示会の主旨は以下のとおり。

国際的に活躍するアーティスト、奈良美智の世界観絵画・彫刻作品の展示によって紹介します。また、奈良自身が金沢にて滞在制作を行いながら、音楽、パフォーマンスといった他分野の活動を始動させ、制作プロセスから成果までをトータルに展観します。新作インスタレーション《Voyage of the Moon》の展示をはじめ、2003年以降、共同制作を続けている大阪のクリエイティブユニットgrafが構築する「小屋」や「カフェ」を舞台に、巨大ぬいぐるみの共同制作プロジェクト「Pup Up the Dog」や小学生の子どもが犬の着ぐるみを着て美術館を探検するプロジェクト「Pup Patrol」、イヴェント開催などジャンルを横断したクリエイティブな時空間が創出されます。

http://www.kanazawa21.jp/ja/04event/event_one.php?id=265

*1:ただし,20世紀後半は分子生物学の発展により,再び「ヒト発生学」という呼び方が主流になっていった。