児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

聖神中央教会事件は法律上の「児童虐待」ではないが、「児童虐待」として保護している。

 児童虐待防止法の定義では主体が保護者に限定されています。

 児童ポルノ・児童買春の被害者は、児童相談所から救済の手を差し伸べないというのが現在の実務です。

 被害者の支配関係があれば「家庭内虐待に準じるケース」だというのなら、児童福祉法違反(淫行させる行為)や児童ポルノ・児童買春も多かれ少なかれ支配関係があるから「家庭内虐待に準じるケース」として扱って欲しいものです。

閉ざされた叫び(2)聖神中央教会事件 子どもの性被害 支配 魂殺して、従うしかない 愛着が入り混じる感情
2005.06.24 朝刊17版 30頁 対向面 (全1301字)  京都新聞社
≪児童への性虐待≫
 児童虐待防止法では「保護者が監護する児童にわいせつな行為やわいせつな行為をさせること」を性虐待と定義。欧米では施設や学校など家庭外の虐待も含む国がある。京都府聖神事件を「家庭内虐待に準じるケース」と見なしている。

児童虐待の防止等に関する法律
(平成12年5月24日・法律第82号)
施行、平12・11・20
改正、平11-法160(平12-法82)、平13-法153、平15-法121、平16-法30
第1条(目的)
この法律は、児童虐待が児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼすことにかんがみ、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等を定めることにより、児童虐待の防止等に関する施策を促進することを目的とする。
第2条(児童虐待の定義)
この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

刑法233条の信用毀損,業務妨害罪と虚構申告罪(軽犯罪法1条16号)の関係

 業務妨害罪の適用もあり得る事件です。 

http://www.police.pref.osaka.jp/jyoho/03.html
6月24日(金)掲載
 軽犯罪法(警察官に対して虚構の犯罪を申告した)違反被疑者の検挙
 5月19日(木)未明、被疑者は、「大阪府警の近くに爆弾を仕掛けた」と虚偽の110番通報をし、通報を受けた東警察署員が爆弾を捜索しましたが、発見に至りませんでした。その後、捜査の結果、被疑者が判明したため検挙し、6月23日(木)に、軽犯罪法(警察官に対して虚構の犯罪を申告した)違反被疑者として、大阪区検察庁書類送検したものです。

 国選弁護人としてこんな判例を作ったことがあります。
 法条競合で軽犯罪法のみが成立すると主張したんですね。
 信用毀損罪なんて誰もやったことがないので、残りくじとして回ってきた事件でした。
 最近行かないのですが、大阪高裁の第1刑事部ではいろいろ勉強させてもらいました。

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/WebView2/3FDA5339A86D26BA49256CFA0006EDBB/?OpenDocument
H14. 6.13 大阪高裁 平成14う52 信用毀損,業務妨害,窃盗被告事件
事件番号  :平成14う52
事件名   :信用毀損,業務妨害,窃盗被告事件
裁判年月日 :H14. 6.13
裁判所名  :大阪高
部     :第1刑事部
結果    :棄却
判示事項  :
1 刑法233条の虚偽の風説の「流布」に当たるとされた事例
2 刑法233条の信用毀損,業務妨害罪と軽犯罪法1条16号の関係
裁判要旨  :
1 警察官に対し,コンビニエンスストアで購入したジュースに異物が混入していた旨虚偽の申告をする行為が,刑法233条の虚偽の風説の「流布」に当たるとされた事例
2 警察官に虚偽の申告をして虚偽の風説を流布し,業務を妨害した場合には,軽犯罪法1条16号の虚構申告罪が成立するほか,刑法233条の信用毀損罪及び業務妨害罪も成立する。
4 【要旨2】軽犯罪法1条16号との関係について
 所論は,虚構の犯罪を申告する場合,軽犯罪法1条16号の虚構申告罪は刑法233条の信用毀損罪及び業務妨害罪の特別法と解すべきであるから,被告人の原判示第1の所為については軽犯罪法を適用すべきである旨主張する。
 しかしながら,軽犯罪法1条16号は,異常な事態に対処すべき公共の機関が無駄な活動を余儀なくされ,ひいては公共の利益を害することになるおそれのある行為を防止する趣旨で規定されたものであるのに対し,刑法233条の信用毀損罪等は,人の経済的面における社会活動に対する侵害を内容とする犯罪で,信用や業務の安全を保護するものであり,このような軽犯罪法の立法趣旨,両罪の罪質,保護法益の相違等を考え併せると,両罪が特別法と一般法の関係にあるとはいえない。したがって,捜査機関に虚偽の申告をし,これが公表されて人の信用等が害された場合は,軽犯罪法1条16号の虚構申告罪が成立するほか,刑法233条の信用毀損罪等も成立すると解するのが相当であり,これと見解を異にする所論は採用できない。

地元の弁護士曰く「真摯な承諾があれば、児童との性交等は逮捕されない。」とのことですが本当ですか?

 迷回答シリーズ。
 ウソですから信じないでください。
 逮捕されますからご注意下さい。弁解にもなりません。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/archive?word=%2a%5bFAQ%bb%f9%c6%b8%a5%dd%a5%eb%a5%ce%a1%a6%bb%f9%c6%b8%c7%e3%bd%d5%5d
 希望的観測というんでしょうか?
 相談者にも都合がいい回答なので、信じられがちですが、真っ赤なウソ。


そもそも、児童は判断能力が未熟だからその「真摯な承諾」を得ても可罰性は除去されないから、承諾があっても処罰するというのが法律・条例の趣旨。
 承諾がない場合は、(準)強姦・(準)強制わいせつ罪の守備範囲となる。

 青少年条例等の判例の基準も、被害者の「真摯な承諾」では満たされない。


追記050724
 不正確に掲示板へ引用されているのを発見しました。

 この判例の定義を前提にしても児童・青少年との性行為について「承諾があれば許される」ということにはならない。当てはめは省略。

福岡県青少年保護育成条例違反被告事件
【事件番号】最高裁判所大法廷判決/昭和57年(あ)第621号
【判決日付】昭和60年10月23日
本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいうものと解するのが相当である。けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。

 そもそも、淫行条例や児童買春罪の保護法益は児童・青少年が健全に成長する権利という処分不可能な個人的法益であるし、児童・青少年の判断能力は成人のそれに比べると劣るからたとえ「真剣な承諾」を得ても法益を完全に放棄する効果は望めないからである。
 要するに、保護法益の重大性と判断能力の未成熟とで、承諾があっても犯罪成立は阻却されない。

 他方、判例によれば「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為+青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為」でなければ、罪にはならないことになる。