児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

[児童ポルノ・児童買春][ハイテク犯罪・サイバー犯罪] 掲示板管理者は違法画像を見つけたら削除すべき法律上の義務があって、義務違反は幇助。(某簡裁)

 作為義務(削除義務)の根拠と内容はよくわかりませんが、プロバイダの刑事責任としては、民事責任とパラレルに考えて、この線で行きたいですね。
 名古屋高裁事件に備えて、探していました。

 しかし、この被告人、唐突にこんな削除義務を言い渡されて、納得して罰金払ったんでしょうか?弁護士と相談して欲しいところです。

被害弁償1完了。

 軽い事件では不要です。しかし、侵害法益を理解して、被害児童に悪いと思うのなら、謝る必要がある。
 重い事件(一審国選弁護事件・慰謝なし)ばっかり持ち込まれたので、あと12人。
 国選弁護人の報酬に関していえば、「全員との示談」が報酬の加算事由となった(全員と示談できないと1円も加算されない)ので、やらない人が増えたようです。
 それでいて、量刑理由には「なんら慰謝の措置を講じていない」と書かれます。努力してできる範囲で慰謝の措置を講じれば減軽されるという高裁裁判例多数。

 被告人がお金とお詫びの手紙を用意したのに、被害者に届けない国選弁護人もいました。お気の毒です。

未成年者事件:女性被害者や知能犯、大幅増−−06年の県内 /静岡

 携帯電話での製造事案が増えたことと、撮影データから児童買春事件を掘り起こしたことが大きいような気がします。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070525-00000023-mailo-l22
06年に県内で未成年者が関与した事案を県警がまとめたところ、出会い系サイトを利用した児童買春事件が増えたことなどで、女性被害者が107人と前年より30人増えたことが分かった。
 06年の児童買春事件は前年比22件増の50件。携帯電話の出会い系サイトを利用した買春事件などの被害者は24人だった。浜松市では同じ中学の女子生徒12人が被害にあい、買春客の男性15人が逮捕された。

掲示板管理者が作為犯・正犯とされた判例(最高裁決定h19.3.29)

 こんなですから、詳細は「平成16年6月23日東京高等裁判所」を読んでください。

上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成16年6月23日東京高等裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から上告の申立てがあったので,当裁判所は,次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人奥村徹の上告趣意のうち,憲法違反をいう点は,原判決が所論のような趣旨を判示したものではないから前提を欠くか,実質において単なる法令違反,事実誤認の主張であり,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
よって,同法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
平成19年3月29日
最高裁判所第一小法廷

画像掲示板閉鎖の連鎖

 3年前の判例が今頃効いてきた感じですが、
  横浜地裁h15.12.15(管理者正犯説)
  東京高裁H16.6.23(管理者正犯説)
を探して読んでもらえば、何をすれば何罪になるのかが具体的にわかります。
 制定法ではなくて判例ですが、知らなくても有罪です。
 判例によると、何でもOKの画像掲示板を設置したら作為犯の「実行の着手」で、UPされたら未必の故意でも、正犯の「既遂」だというんですから、犯罪の成否については、掲示板閉鎖しても一緒ですよ。既遂だから中止犯にもならない。将来的に捜査機関に見つからないという効果はあるでしょうけど。まあ、素人判断ではなく最寄りの弁護士に相談して欲しいものです。

画ちゃん管理人逮捕を受け「がむしゃら」「VIPろだ」閉鎖
http://www.new-akiba.com/archives/2007/05/vip_24.html
この一連の閉鎖の裏には「画像ちゃんねる」の管理人の逮捕がある。違法な画像をアップロードしたユーザーではなく、管理人が逮捕されてしまうようなリスキーな状態では運営できないと判断したのだろう。

 それで、くどいようですが、この本を頭から一読してください。古い本なので、探してください。第3章に上記の判決を紹介しています。

インターネット上の誹謗中傷と責任

インターネット上の誹謗中傷と責任

http://www.shojihomu.co.jp/newbooks/1224.html
第3章 プロバイダの刑事責任をめぐる諸問題
 第1節 プロバイダの刑事責任(山口 厚)
 第2節 プロバイダの刑事責任――判例の考察(奥村 徹)
 第3節 プロバイダの刑事責任について――プロバイダの立場からの一考察(落合洋司
 ■座談会 プロバイダの刑事責任をめぐる諸問題
  (山口 厚/落合洋司/奥村 徹/丸橋 透/森 亮二)


追記
 判例の表示がちょっと違うけど、状況はこうですね。

http://www.j-cast.com/2007/05/25007936.html
「もう事前承認制にするしかない」
しかし、ネット上のわいせつ画像の投稿などの事件に詳しい奥村徹弁護士は、「画像ちゃんねる」管理人の逮捕から同型サイトの「閉鎖連鎖」を「驚くことは何もない」と話す。というのも、画像投稿サイトについて児童ポルノ公然陳列罪が問われた事件で、問題の画像を放置していたサイト管理人が「正犯」として投稿者より重い罪が課された最高裁判例があったのだという(平成16年6月23日最高裁判決が上告棄却で確定)。「これで状況が変わった」と奥村弁護士は指摘している。つまり、サイト管理人がわいせつ画像やポルノ画像の投稿を「放置」していても、投稿者より、重い罪が課せられる可能性が出てきたのである。
「捜査関係者はこの判例をみんな知っている。(この判例に)ビックリするのはサイト管理人と一部の弁護士だけです。(「悪いのは投稿者」などと)管理人はもう何を言っても無駄なんですよ」
しかも、この事件を担当したのは神奈川県警で、「画像ちゃんねる」管理人を逮捕したのも神奈川県警である。
「当然、県警もこの裁判の行方を見ていたでしょう。とすれば、『画像ちゃんねる』の管理人が逮捕されるのは時間の問題だったと思いますよ」
となれば、画像投稿型の掲示板も次々と閉鎖に追い込まれるのも十分頷ける。奥村弁護士は「もう事前承認制にするしかない」と指摘している。

画像掲示板管理者の刑事責任についての主張・判断の変遷

 こう見ると、バラバラですよね。
 弁護人は一応、判例に従っているつもりです。

横浜事件

横浜地裁h15.12.15
  検察官の主張:不作為犯・正犯
  弁護人の主張:不作為犯・幇助
  裁判所の見解:不作為犯・正犯
  ↓
東京高裁H16.6.23
  検察官の主張:不作為犯・正犯
  弁護人の主張:不作為犯・幇助
  裁判所の見解:作為犯・正犯
  ↓
最高裁H19.3.29
  弁護人の主張:不作為犯・幇助
  裁判所の見解:作為犯・正犯
  ↓
確定 作為犯・正犯

名古屋事件

名古屋地裁H18.1.16
  検察官の主張:作為犯・共謀共同正犯
  弁護人の主張:不作為犯・幇助
  裁判所の見解:不作為犯・幇助
  ↓
名古屋高裁h18.6.26(差戻し)
  ↓
名古屋地裁H19.1.10
  検察官の主張:作為犯・幇助(掲示板設置行為のみ起訴)
  弁護人の主張:作為犯・正犯の未遂(掲示板設置行為のみでは不可罰)
  裁判所の見解:作為犯・幇助(掲示板設置行為のみについて)
  ↓
名古屋高裁h19(審理中)
  弁護人Aの主張:作為犯・正犯の未遂(掲示板設置行為のみでは不可罰)
  弁護人Bの主張:不作為犯・幇助犯(掲示板設置行為のみでは不可罰)
  検察官の主張:?
  裁判所の見解:?

webに掲載した画像を、閲覧者が利用可能になる事実の証明

 昔、不同意・撤回になりました。
 間違ったことは書いてないよね。

弁22号証

事件名:児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律違反
事件番号:平成 年 第 号

平成年月日
裁判所刑事部 御中

弁護人弁護士 奥  村   徹  

報告書

インターネットの画像を閲覧した者は、画像を閲覧者のパソコンに保存しており、その画像データを再利用可能となること、被告人の行為は「公然陳列」ではなく「提供」であることを立証するために、弁護人自ら、インターネット閲覧者における画像ファイルの動向を解析して報告する。

第1 実験用ブラウザの設定
1 閲覧用ソフト
 弁護人のパソコンにインストールされているマイクロソフト社製インターネットエクスプローラーsp2を用いた。

2 ブラウザの設定
 実験外のデータと区別するために、インターネット一時ファイルを「C:\Documents and Settings\弁護人\Local Settings\Temporary Internet Files」とした。(以下「一時ファイル」とする。)

3 一時ファイルの内容確認
 実験開始前には「C:\Documents and Settings\弁護人\Local Settings\Temporary Internet Files」が空であることを確認した。


第2 A高裁webサイトの表示
1 A高裁webサイト
 A高裁webサイトhttp://courtdomino2.courts.go.jp/K_home.nsf/CoverView/HP_K_A/
は、最高裁webの一部であって、
アクセス情報
裁判所の紹介
長官(所長)の紹介
法廷担当一覧
手続案内
書式例
お知らせコーナー
主要判決速報
等で構成されている。
 今回は、写真のデータの残留を立証するのであるから、そのうち、大きな写真が掲載されている
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_access.nsf/3e7559fdc45c994e49256b13000483a3/da07166f0764c87649256b5e00124935?OpenDocument&ExpandSection=2#_Section2(以下「外観ページ」という)
を用いて、画像データの保存状況を解析することにした。
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_access.nsf/3e7559fdc45c994e49256b13000483a3/da07166f0764c87649256b5e00124935?OpenDocument&ExpandSection=2#_Section2(以下「外観ページ」という)
をブラウザに表示させたもの

2 「外観ページ」をブラウザに表示させる。
ブラウザに「外観ページ」のwebアドレス
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_access.nsf/3e7559fdc45c994e49256b13000483a3/da07166f0764c87649256b5e00124935?OpenDocument&ExpandSection=2#_Section2
にアクセスして、A高裁の外観写真のwebページを表示させた。

3 ブラウザ表示中の一時ファイルの内容
 上記の「外観ページ」は下記のファイルで構成されていることがわかる。


第3  インターネット接続の切断
1 インターネット接続の切断
 ここで、pcのlanケーブルを抜いて、インターネットを切断した。

2 インターネットから切断された時のブラウザの表示
 切断しても、A高裁の外観写真のwebページが表示されている。

3 インターネットから切断された時の一時ファイルの内容
上記の外観のwebページは下記のファイルで構成されていることがわかる。

 このとき、ファイル名「0」1233kbのファイルをクリックすると、上記ページの外観写真が表示された。

 すなわち、ファイル名「0」1233kbのファイルが、御庁外観の写真の画像ファイルであることがわかる。

 また、このとき、ファイル名「0」1kbのファイル2個をクリックすると、それぞれ上記ページのボタンの画像が表示された。


 なお、実験中、上記ファイルが開かない場合があったが、その場合でも、上記ファイルを別のフォルダーに移動してクリックすると、ファイルを開き、画像を表示させることができた。

第4 ブラウザを終了させた
 ブラウザを終了させると、ブラウザが表示されないから、A高裁の外観写真のwebページを表示は失われる。

 このときの一時ファイルの内容は、従前と変化がない。
すなわち一時ファイルには下記のファイルが保存されている。


 このとき、ファイル名「0」1233kbのファイルをクリックすると、上記ページの外観写真が表示された。

 すなわち、ファイル名「0」1233kbのファイルが、御庁外観の写真の画像ファイルであることがわかる。

 また、このとき、ファイル名「0」1kbのファイル2個をクリックすると、それぞれ上記ページのボタンの画像が表示された。

 なお、実験中、上記ファイルが開かない場合があったが、その場合でも、上記ファイルを別のフォルダーに移動してクリックすると、ファイルを開き、画像を表示させることができた。

第5 パソコンを数回再起動させた
1 再起動後の一時ファイル
 ブラウザを起動することなく、パソコンを数回再起動させたところ、一時ファイルは構成が変化していた。
 「ContentIE5」というフォルダーが作成されていた。

2 「ContentIE5」の内容
 「ContentIE5」を開いたところ、さらに4つのフォルダーが現れた。

 このうちC:\Documents and Settings\弁護人\Local Settings\Temporary Internet Files\Content.IE5\Y12N2ZORを開いたところ

 先ほど見た外観の画像データ(0[2].JPG)が現れた。
 ファイルをクリックすると、画像が大写しになった。

 次に、C:\Documents and Settings\弁護人\Local Settings\Temporary Internet Files\Content.IE5\WFML05G7を開いたところ、左右の青色の三角印の画像が保存されていた。

 これは、webで項目を示す三角形だと思われる。


 さらに、C:\Documents and Settings\弁護人\Local Settings\Temporary Internet Files\Content.IE5\6H2PCVQ5を開いたところ

 backのボタンの画像が保存されていることがわかった。


第6 一時ファイルの画像データの利用可能性
 ここで外観の画像データ(0[2].JPG)が閲覧者において利用可能であることを説明する。
 複製やメール送信も自由である。


 添付メールとして送信できる。これが児童ポルノであれば、電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供(7条1項又は4項)する行為にあたる。


 さらに、これはjpgファイルという形式で圧縮された画像ファイルであるから、「ペイント」などのパソコンに標準装備されているソフトで加工できる。
 例えば、色を反転させてみる。

 一部をトリミングすることもできる。

 上下左右の縮尺を変えることもできる。

モザイクソフトを使えば、モザイク処理も可能である。

 弁護人に対するこの画像の出所は、外観ページ以外にはないから、御庁が、インターネット上に画像を掲載したことによって、閲覧した者が特段の操作せずとも画像を取得しており、さらに、画像を再利用可能となったことは明かである。


以上