児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「盛り場うろつくのどうか」広島県知事発言が波紋

 強姦事件の弁護人は当然、被害者の過失として主張しますし、裁判所も多少考慮すると思います。
 知事が、「日本女性会議2007ひろしま」で、そんなこと言ってはダメという趣旨なんでしょうか?

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/071021/crm0710212004012-n1.htm
 山口県岩国市の米海兵隊岩国基地所属の海兵隊員4人が広島市内で10代後半の日本人女性に集団で乱暴したとされる事件を受けて、同県の藤田雄山知事が「盛り場でうろうろしている未成年もどうかと思う」などと発言していたことが21日、分かった。
 県によると、藤田知事は20日に広島市内で開かれた「日本女性会議2007ひろしま」でのあいさつで、「朝の3時ごろまで盛り場でうろうろしている未成年もどうかと思うが、米兵による暴行事件が起きた。誠に遺憾で強く抗議したい」と述べた。
 藤田知事は「本意は犯罪に遭わないためのリスク管理について、一般論として言及しようとした。事件が事実であれば、その原因は当然加害者側にある」と説明している。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200710210015.html
藤田知事発言に非難の声 '07/10/21
 米海兵隊岩国基地の隊員4人が女性を集団暴行したとされる事件をめぐり、藤田雄山広島県知事が、広島市中区で20日あった「日本女性会議2007ひろしま」で、「盛り場でうろうろしている未成年もどうかと思う」と発言。参加者から「被害者に事件の責任を負わせている」と非難の声が上がった。
 藤田知事は開会セレモニーで、あいさつ。事件に言及し、「朝の3時ごろまで、盛り場でうろうろしている未成年もどうかと思うんでありますけれども、米兵による暴行事件が起きました。誠に遺憾であり、強く抗議したい」と述べた。知事の真意をただす質問が、引き続きあったシンポジウムの会場で出た。大阪府の女性(65)は「被害者に責任を負わせる発言は、人権をさらに侵害している」と憤った。

弁護士も、被害者の過失とか、過失相殺とかを、公然と発言すると非難されるかも知れません。公判廷で量刑上考慮した裁判所も同様か?

強姦・強制わいせつ事件の裁判例における被害者の帰責性

 出会い系サイトを通じて知り合った初対面の男性の誘いにのって、夜間被告人らの車に乗り込んだ被害者に軽率さがある
 深夜まで飲酒し仮眠していた点で軽率さ
 被害者にも警戒せずにホテルに入った点で軽率
 携帯電話のメールで知り合ったばかりの被告人を自宅に招き入れた点で落ち度がある。
 被害者は夜間薄着でヒッチハイクしていたという落ち度
 初対面の被告人らの誘いにのって夜間人気ない場所に同乗したのは軽率であり落ち度
 被害者も売春しようとして見知らぬ男性とホテルで2人きりになった経緯は落ち度
 被害者は被告人のナンパに応したという軽率な面 落ち度
 被害者も被告人との性交を前提として現場ホテルまで同行しているという落ち度
 深夜初対面の被告人の車に乗り込んだ点は落ち度がある
 深夜帯に、親に無断で外出して出会い系で知り合った見知らぬ男の車に乗った点には落ち度がある

 さらに言えば、保護者も責任問われます。条例で明記されているので、弁護人の格好のターゲットとなる。

http://www.pref.hiroshima.lg.jp/soumu/bunsyo/kenhouki/reiki_honbun/ar20004471.html
広島県青少年健全育成条例
(県民の責務)
第四条 県民は、青少年の健全な育成についての理解と関心を深め、青少年の発意と自主性を尊重し、かつ、青少年との間に心の通いあつた援助、指導関係をもつて青少年の健全な育成に努めなければならない。
2 県民は、自らの行為を律するとともに、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為又は環境から青少年を保護するように努めなければならない。
(保護者等の責務)
第五条 保護者(親権者、未成年後見人、児童福祉施設の長その他青少年を現に監護する者をいう。以下同じ。)は、青少年を健全に育成することが本来の義務であることを強く自覚し、愛情ある環境の中で青少年を監護し、教育しなければならない。
2 家庭を構成する者は、互いに協力し、健全で明るい家庭づくりを進めることによつて、青少年の健全な育成に努めなければならない。
(深夜外出の制限)
第四十二条 保護者は、特別の事情がある場合を除き、青少年を深夜に外出させないように努めなければならない。
2 何人も、正当な理由がある場合を除き、保護者の委託を受けず、又はその承諾を得ないで深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。

まあ、こういう見解を女性会議で述べるのが相当かということで見ていきましょう。

撮影と性交を児童淫行罪として家裁に起訴して、販売(提供)を地裁に起訴した事案(大津地検→大津家裁H19・大津地裁H19)

 児童淫行罪の公訴事実は「販売目的で、撮影しつつ性交・性交類似行為しもって児童淫行罪」なのですが、罪名として製造罪はどちらにも起訴せず、いわゆるかすがい外し(製造罪と提供罪を牽連犯とするとね)。

 後から判決した地裁が気を利かせて執行猶予にしているのですが、刑期を合計すると懲役4年に執行猶予が付いていることになります。
 後の地裁事件で、どうして二重起訴とか一事不再理を主張しないのかが不思議です。
 併せて審理すれば実刑かも知れないのに、分ければ「懲役4年執行猶予」となるという意味では、被告人に有利になっているともいえるので、ややこしい問題です。
 両方の判決ともに、執行猶予付きのために刑期が水増しされている部分があって、併合審理されて実刑になっても懲役2年〜2年6月くらいだと思われます。水増ししすぎで、取消が怖いです。
 分けて起訴するからこうなるわけで、少年法を改正して、一括審理できるようにして欲しいものです。
 常套手段としては、前の判決は控訴して確定させないでおいて、後の判決を待つことです。

都施設でポルノ漫画即売会、過去6回開催

 2次元への規制ですね。
 違法じゃない場合、違法じゃないのに規制できるかは気になりますね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071022-00000305-yom-soci
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071022i305.htm?from=navr
都施設でポルノ漫画即売会、過去6回開催
 同公社は「詳しい内容を確認してこなかったが、公共施設にはふさわしくないと判断した」と説明している。
 同公社によると、このイベントは「アブノーマルカーニバル」などと銘打たれ、1回に100以上の同人誌サークルが出品。少女に対する性行為や猟奇的な描写などを売り物にしたコミックも販売されたという。

「児童の保護」をやったNGOってあるんですか?

 15条、16条ではNGOが被害児童を保護してくれるという条文なんですが、やってるんですか?
 実績をアピールしてくれないと、やっぱりキャッチアンドリリースなんじゃないかと考えますよ。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
第16条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。

何回くらいやると罰金刑を超えますか? 何回くらいやると実刑になりますか?

 1〜2回前科なしで実刑というのがあるので、回数だけじゃなくて、
  回数×年齢×態様
がわからないと答えようがありません。
 
 1罪でも逮捕勾留されたら、重い社会的制裁が待っています。
 なお、「逮捕!」という報道は賑やかですが、実刑になっても判決は報道されないことが多いですね。