児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

増上寺の垂れ桜↑→

 空港のロビーと機内のテレビでさんざん貨物機炎上の画像を見せられました。
 午後は相模原支部へ。
 往路は新幹線。

 会合やってる最中に記事が出ていますね。

http://mainichi.jp/life/electronics/news/20090323ddm010020043000c.html
デジタルトレンド2009:安全ネット利用へ促進協発足
 安心で安全なインターネット利用環境を整備することを目的として、産業界や教育関係者などで作る「安心ネットづくり促進協議会」(会長・鷲田清一大阪大学長)が発足した。これまで各界各団体で個々に行ってきた健全なネット環境づくりのための取り組みや情報を持ち寄り連携、国民全体のネット活用力向上を目的とする。

名刺がなくなりました。

強制わいせつ罪と3項製造罪が観念的競合になることには断固反対するという反児童ポルノ団体

 観念的競合とした一審判決に、奥村弁護人は併合罪説を唱えて、検察庁高等裁判所が観念的競合だというのですが、奥村弁護人を攻撃するようです。どうしろというのでしょうか?とりあえず噛み付きやすいところに噛み付くんですか?
 仙台高裁とか札幌高裁に怒鳴り込んでくださいよ。

 昔、詐欺の児童買春の場合、準強姦にならないという高裁判決について、抗議を受けたことがあります。奥村弁護人は、準強姦と主張したからそういう判断が出ているのに。

都市圏での児童買春の相手は、意外に遠い県から家出しているときもあって、そういう場合は犯情重いです。

 東京なら新潟とか仙台、大阪なら三重とか鳥取とかだったりします。
 警察も出張捜査になるし、弁護人は可能な限り謝りに行くのですが、親御さんは単純に怒るというより複雑な心境だと思います。

強制わいせつ罪+3項製造罪+脅迫という逮捕罪名で、保護観察執行猶予の事例(福岡地裁H21)

 罪名の組み合わせも珍しいし、執行猶予も珍しいです。
 傍聴に来た刑事も首かしげていました。
 検察官が主張する法令適用と弁護人が主張する量刑をつなぎ合わせて、間をとったような判決になっています。

「自己淫行罪」

 最近検事さんの著作でよく見かけます。
 児童淫行罪の淫行相手が被告人自身である場合をいうんでしょうが、こういう呼称が今頃生まれること自体、児童淫行罪に異質の行為類型を含ませてしまったことを意味します。
 語感として雌雄同体である者や被告人一人だけで淫行している様子を想像してしまうので、奥村は使いません。

児童福祉法
第34条〔禁止行為〕
1 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為

第60条
1 第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

違法情報として削除依頼を行った6,414件のうち5,451件(85.0%。前年84.8%)が削除。

 裏返せば
 「削除依頼された違法情報6,414件のうち963件(15%)は削除されず、おとがめなし」
ということになっています。(絶対におとがめなしかというと、ときどき管理者が検挙されてます。)
 道義に基づく削除義務しかなく、警察が言ってきたからとりあえず消しとこうという事実上の強制力に頼っているからですよ。
 こういうのこそ、予見可能性がなくて、萎縮効果が出てきますよね。削除義務の根拠と内容を法定する必要があると思います。

平成20年中の「インターネット・ホットラインセンター」の運用状況について
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h20/pdf48.pdf
(5)削除結果
平成20年中にセンターからプロバイダ等に対し、違法情報として削除依頼を行った6,414件のうち5,451件(85.0%。前年84.8%)が、また、有害情報として削除依頼を行った2,260件のうち1,713件(75.8%。前年71.9%)が削除。

4 今後の課題等
(1)体制の強化
通報件数が予想を上回って増加し、処理に時間を要していることから、体制の強化を図り、業務処理の迅速化・効率化に努める。
(2) インターネット・ホットラインセンターについての広報啓発の促進センターの利用を促すとともに、センターが削除依頼する情報が何であるかについてより理解を深める。
(3) 関係行政機関・団体との連携の強化
インターネット上の違法情報、有害情報対策の更なる推進を図るため関係行政機関・団体との連携をより一層強化する。

現状では
 プロバイダさんに「管理者として検挙されないコツは?」聞かれたら、
「いつ検挙されるかわからないし、検挙されたら、裁判所も児童ポルノに関する限り『理屈はわからないけど有罪』というので、とりあえず、警察と仲良くしておくことですね」と回答しています。
 難しい理屈はありますが、そういうことですよ。

安心ネットづくり促進協議会の特別会員として、調査企画委員会の児童ポルノ対策作業部会になった件

 なかなか会員名簿が来ないので、お互い匿名の秘密結社かと思っていましたが、行ってみると、知ってる顔もありました。
http://www.fmmc.or.jp/anshin-net/about5.html

http://www.fmmc.or.jp/anshin-net/about4.html
にあるように、児童ポルノについては、ブロッキングが中心です。
 調査検証作業部会は、ネットの陰陽を調査するそうで、福祉犯は陰の極致ですから、こっちの方にもお手伝いできそうです。
 ほんとは児童ポルノ・児童買春法14条の調査研究結果があるはずなんですが、権限と義務がある国がやらないので、権限も義務もない民間がやることになっています。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第14条(教育、啓発及び調査研究)
国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。
第16条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。

大阪地裁の改変urlの判決

 リンクが公然陳列かという問題をすっ飛ばして、リンクなしのurlの掲載について有罪になっています。
 プロバイダの人に聞かれたんですが、こういう事例です。
 たとえば、見知らぬ奴が、

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/xxx.jpg

に違法画像を公然陳列していたとして、それを自分のサイトに、

http://d.hatena.ne.jp/(オクムラオオサカ)/xxx.jpg
※カタカナを英語に直してください

と表示したのが、児童ポルノ公然陳列罪の正犯になっています。
 判決理由中で、リンクも同様とされています。

 この事件では、もとの画像掲載者は罰金、改変url掲載者は懲役。

追記
 この判決書は公開しないことになりました。
 どうしてもみたいという方は、大阪地検に問い合わせてみて下さい。


追記
 森山先生の本を読んでも、正犯か幇助か、提供罪か公然陳列罪かがよくわかりません。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P202
事案にもよりますが、児童ポルノ公然陳列罪(第7条第4項)の共同正犯、幇助犯や、児童ポルノを不特定多数の者に提供する罪(第7条第4項)の共同正犯、幇助犯が成立する可能性があります。
たとえば、事案によっては、その児童ポルノサイトにアクセスすることが困難であったのが容易になったとみることができますから、ハイパーリンクを張る行為について、やはり従前とは別に提供の対象が広がり、取得可能性が新たに設定されるという意味で、新たな対象として不特定多数の者に対する提供があったと評価することも可能です。そして、新たな取得可能性が広がったという程度、児童ポルノサイト開設者との意思の連絡の有撫等にもよりますが、不特定又は多数の者に提排する罪の正犯、共同正犯又は幇助犯が成立しうると考えられます。
また、公然陳列罪について、ハイパーリンクを張ることによって、当該サイトヘのアクセスが困難であったのが容易になったのであり、従前とは別に閲覧対象が広がり、認識可能性が新たに設定されるという意味で、新たに公然と陳列したと評価することも可能です。たとえば、会員制の方式をとり、パスワードを入力しなければアクセスできないような児童ポルノの画像について、このパスワード入力の段階を踏まなくても直接画像に到達できるようなリンクを張った場合、新たな公然陳列があったとみることができ、もとの画像の公開者との意思の連絡がない場合は公然陳列罪の単独正犯、意思の連絡がある揚合は公然陳列罪の共同正犯が成立すると考えられます。
また、このように会員以外は画像に到達するのが不可能な場合でなくても、全く手がかりのない状態からアドレスを入力して画像に到達するのは、通常著しく困難であり、これを可能にする点で、不特定多数の者が閲覧するのを容易にしているといえ、もとの画像の公開者との意思の連絡がある場合は公然陳列罪の共同正犯、意思の連絡がない場合は公然陳列罪の幇助犯が成立すると考えられます。
以上のように、児童ポルノ公然陳列罪(第7条第4項)の共同正犯、幇助犯や、児童ポルノを不特定多数の者に提供する罪(第7条節4項)の共同正犯、幇助犯が成立する可能性があります。