児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害児童7名で懲役2年6月執行猶予5年(青森地裁h23.7.11)

 これはちょっと軽い。

http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2011/20110711222149.asp?fsn=eb33f76037153e93cde084f7e7644d6f
判決によると、被告は2010年4月〜11年2月にかけ、青森・八戸両市内で未成年女性7人にわいせつ行為やみだらな行為をしたほか、そのうち1人の半裸の写真を携帯電話で撮影・記録した。
被告の弁護人は閉廷後、判決について「控訴しない方針。本人は『二度としない』と話している」と取材に答えた。青森地検は「判決結果・内容を検討した上で適切な判断をしたい」とした。

福島地裁h23.3.8なんて一回結審で実刑確定。これはちょっと重いというか、情状弁護が薄い感じ。

少女買春:元巡査に懲役3年を求刑 /福島
2011.03.08 毎日新聞
 少女買春などをしたとして児童買春禁止法違反と県青少年健全育成条例違反の両罪に問われた、元県警巡査(20)の初公判が7日、福島地裁(加藤亮裁判官)であり、被告は起訴内容を認めた。検察側は懲役3年を求刑し、即日結審した。判決公判は25日に開かれる。
 起訴状によると被告は、いわき南署地域課に勤務していた昨年4〜12月、同市内の自宅やホテルで、当時14〜17歳の浜通りの中学生、高校生計4人が18歳未満と知りながらみだらな行為をし、現金を支払う約束をしたりカメラで裸を撮影したとされる。
・・・・
元巡査懲役2年6月 児童買春などで判決=福島
2011.04.05 読売新聞
 2010年に当時14〜17歳の女子中高生を買春するなどしたとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春、児童ポルノ製造)と県青少年健全育成条例違反に問われた元いわき南署地域課巡査(懲戒免職)の(20)の判決が4日、福島地裁(加藤亮裁判官)であった。加藤裁判官は「常習的でこうかつな犯行。現職の警察官による犯行で社会的影響は大きい」として、懲役2年6月(求刑・懲役3年)を言い渡した。

プロバイダのサーバー上に、犯人の児童ポルノがある状況

 プロバイダのサーバー上に、犯人の児童ポルノがある状況では、没収するためには、プロバイダに対して、第三者所有物の没収手続を取れということなんですが、同じサーバーにデータを置いているその他のユーザーは参加できず、知らないうちに没収されてしまうおそれがあります。

http://www.moj.go.jp/content/000072565.htm
 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律
(刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法の一部改正)
第四条 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和三十八年法律第百三十八号)の一部を次のように改正する。
 第一条の次に次の一条を加える。
 (適用対象)
第一条の二 この法律の適用については、被告人以外の者に帰属する電磁的記録は、その者の所有に属するものとみなす。

◎刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法
(昭和38年7月12日・法律第138号)
施行、昭38・8・1
第1条(この法律の趣旨)
刑事事件における被告人以外の者の所有に属する物の没収手続については、当分の間、この法律の定めるところによる。
第2条(告知)
検察官は、公訴を提起した場合において、被告人以外の者(以下「第三者」という。)の所有に属する物(被告人の所有に属するか第三者の所有に属するかが明らかでない物を含む。以下同じ。)の没収を必要と認めるときは、すみやかに、その第三者に対し、書面により、次の事項を告知しなければならない。
一 被告事件の係属する裁判所
二 被告事件名及び被告人の氏名
三 没収すべき物の品名、数量その他その物を特定するに足りる事項
四 没収の理由となるべき事実の要旨
五 被告事件の係属する裁判所に対し、被告事件の手続への参加を申し立てることができる旨
六 参加の申立てをすることができる期間
七 被告事件について公判期日が定められているときは、公判期日
2 第三者の所在がわからないため、又はその他の理由によつて、前項の告知をすることができないときは、検察官は、同項に掲げる事項を官報及び新聞紙に掲載し、かつ、検察庁の掲示場に十四日間掲示して公告しなければならない。ただし、価額が五千円に満たないことが明らかな物については、検察庁の掲示場における掲示をもつて足りる。
3 検察官は、前二項の規定による告知又は公告をしたときは、これを証明する書面を裁判所に提出しなければならない。
第3条(参加の手続)
没収されるおそれのある物を所有する第三者は、第一審の裁判があるまで(略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判があつたときは、正式裁判の請求をすることのできる期間が経過するまでとし、この場合において、正式裁判の請求があつたときは、さらに通常の規定による第一審の裁判があるまでとする。以下同じ。)、被告事件の係属する裁判所に対し、書面により、被告事件の手続への参加を申し立てることができる。ただし、前条第一項又は第二項の規定による告知又は公告があつたときは、告知又は公告があつた日から十四日以内に限る。
2 検察官が前条第一項又は第二項の規定により告知し又は公告した裁判所が被告事件を移送した場合において、その裁判所に参加の申立てがあつたときは、申立てを受けた裁判所は、被告事件の移送を受けた裁判所にその申立ての書面を送付しなければならない。この場合において、その書面が送付されたときは、参加の申立ては、はじめから、被告事件の移送を受けた裁判所に対してされたものとみなす。
3 裁判所は、参加の申立てが法令上の方式に違反し、若しくは第一項に規定する期間の経過後にされたとき、又は没収すべき物が申立人の所有に属しないことが明らかであるときは、参加の申立てを棄却しなければならない。ただし、第一項ただし書に規定する期間内に参加の申立てをしなかつたことが、申立人の責めに帰することのできない理由によると認めるときは、第一審の裁判があるまで参加を許すことができる。
4 前項の場合を除き、裁判所は、申立人の参加を許さなければならない。ただし、没収をすることができないか又はこれを必要としない旨の検察官の意見を相当と認めるときは、参加の申立てを棄却することができる。
5 裁判所は、参加を許した場合において、没収すべき物が参加を許された者(以下「参加人」という。)の所有に属しないことが明らかになつたときは、参加を許す裁判を取り消さなければならない。没収をすることができないか又はこれを必要としない旨の検察官の意見を相当と認めるときは、参加を許す裁判を取り消すことができる。
6 参加に関する裁判は、申立人又は参加人、検察官及び被告人又は弁護人の意見をきき、決定でしなければならない。検察官又は申立人若しくは参加人は、参加の申立てを棄却する決定又は参加を許す裁判を取り消す決定(第四項ただし書又は前項後段の規定による決定を除く。)に対し、即時抗告をすることができる。
7 参加の取下げは、書面でしなければならない。ただし、公判期日においては、口頭ですることができる。
第4条(参加人の権利)
参加人は、この法律に特別の規定がある場合のほか、没収に関し、被告人と同一の訴訟上の権利を有する。
2 前項の規定は、参加人を証人として取り調べることを妨げるものではない。
第5条(参加人の出頭等)
参加人は、公判期日に出頭することを要しない。
2 裁判所は、参加人の所在がわからないときは、公判期日の通知その他書類の送達をすることを要しない。
3 裁判所は、公判期日に出頭した参加人に対し、没収の理由となるべき事実の要旨、その参加前の公判期日における審理に関する重要な事項その他参加人の権利を保護するために必要と認める事項を告げたうえ、没収について陳述する機会を与えなければならない。
第6条(証拠)
参加人の参加は、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三百二十条から第三百二十八条までの規定の適用に影響を及ぼさない。
2 裁判所は、刑事訴訟法第三百二十条第二項本文、第三百二十六条又は第三百二十七条の規定により証拠とすることができる書面又は供述を取り調べた場合において、参加人がその書面又は供述の内容となつた供述をした者を証人として取り調べることを請求したときは、その権利の保護に必要と認める限り、これを取り調べなければならない。参加人の参加前に取り調べた証人について、参加人がさらにその取調べを請求したときも、同様とする。
第7条(没収の裁判の制限)
第三者の所有に属する物については、その第三者が参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 第二条第一項又は第二項の規定による告知又は公告があつた場合において、第三条第一項ただし書に規定する期間が経過したとき(没収すべき物が申立人若しくは参加人の所有に属しないことが明らかであることを理由とし、又は没収をすることができないか若しくはこれを必要としない旨の検察官の意見に基づいて、参加の申立てが棄却され、又は参加を許す裁判が取り消された場合を除く。)。
二 参加の申立てが法令上の方式に違反したため棄却されたとき。
三 参加の取下げがあつたとき。
第8条(上訴)
原審における参加人は、上訴審においても、参加人としての地位を失わない。
2 参加人が上訴をしたときは、検察官及び被告人が上訴をせず、又は上訴の放棄若しくは取下げをした場合においても、原審の裁判中没収に関する部分は、確定しない。
3 前項の場合において、被告人は、上訴審及びその後の審級における公判期日に出頭することを要しない。刑事訴訟法第三十六条、第三十七条、第二百八十九条及び第二百九十条の規定は、適用しない。
4 前二項の規定は、略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判に対して参加人が正式裁判の請求をした場合に準用する。
第9条(訴訟能力)
第三者が法人であるときは、その代表者が、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものであるときは、その代表者又は管理人が、訴訟行為についてこれを代表する。
2 第三者が意思能力を有しないときは、その法定代理人(親権者が二人あるときは、各自)が、訴訟行為についてこれを代理する。
3 刑事訴訟法第二十七条第二項並びに第二十九条第一項及び第三項の規定は、この法律の規定により被告事件の手続に関与する第三者に準用する。この場合において、同法第二十九条第一項中「前二条」とあるのは、「刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法第九条第一項又は第二項」と読み替えるものとする。
第10条(代理人)
この法律の規定により被告事件の手続に関与する第三者は、弁護士の中から代理人を選任し、これに訴訟行為を代理させることができる。
2 代理人の選任は、審級ごとに、代理人と連署した書面を差し出してしなければならない。
3 代理人は、参加人の書面による同意がなければ、参加の取下げ、正式裁判の請求の取下げ又は上訴の放棄若しくは取下げをすることができない。
4 刑事訴訟法第三十三条から第三十五条まで及び第四十条の規定は、代理人に準用する。
第11条(訴訟費用)
没収の裁判をしたときは、被告人に負担させるものを除き、参加によつて生じた訴訟費用を参加人に負担させることができる。参加を許す裁判を取り消したとき、又は参加の取下げがあつたときも、同様とする。
2 前項前段の規定により参加人に訴訟費用を負担させるときは、没収の裁判と同時に、職権でその裁判をしなければならない。この裁判に対しては、没収の裁判について上訴があつたときに限り、不服を申し立てることができる。
3 刑事訴訟法第百八十一条第三項及び第三百六十八条から第三百七十一条までの規定は、参加人又は参加人であつた者に準用する。この場合において、同法第三百六十九条中「弁護人であつた者」とあるのは、「代理人であつた者」と読み替えるものとする。
第12条(刑事訴訟法との関係)
第三者の所有に属する物を没収する手続については、この法律に特別の規定があるもののほか、刑事訴訟法による。
第13条(没収の裁判の取消し)
法律上没収することのできない物について没収の裁判が確定したときは、その物の所有者で、自己の責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかつたものは、没収の確定裁判を知つた日から十四日以内に限り、没収の裁判をした裁判所に対し、その裁判の取消しを請求することができる。ただし、没収の裁判が確定した日から五年を経過したときは、その請求をすることができない。
2 前項の請求は、その理由となる事実を明示した趣意書を差し出してしなければならない。
3 第一項の規定による請求が法令上の方式に違反し、若しくは同項に規定する期間の経過後にされたとき、請求人がその責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかつたと認められないとき、又は没収された物が請求人の所有に属しないものであつたことが明らかであるときは、請求人及び検察官の意見をきき、決定で請求を棄却しなければならない。請求人は、この決定に対し、即時抗告をすることができる。
4 前項の場合を除き、請求が理由がないときは、判決でこれを棄却し、理由があるときは、判決で没収の裁判を取り消さなければならない。請求人又は検察官は、この判決に対し、上訴をすることができる。
5 裁判所は、趣意書に包含された事項について、請求人及び検察官に陳述をさせ、並びに請求人若しくは検察官の申立てにより又は職権で、必要と認める証拠の取調べをしなければならない。請求人が公判期日に出頭しない場合においても、その不出頭について正当な理由がないと認めるときは、その期日の公判手続を行ない、又は判決の宣告をすることができる。
6 請求を棄却したときは、訴訟費用を請求人に負担させることができる。請求の取下げがあつたときも、同様とする。
7 請求に関する裁判手続については、第三条第七項、第五条第二項、第九条、第十条並びに第十一条第二項及び第三項の規定を準用するほか、刑事訴訟の例による。
8 前項の規定にかかわらず、請求に関する裁判手続においては、請求人を証人として取り調べ、又は公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、若しくは公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることができる。
9 没収の裁判が取り消されたときは、刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)に定める没収の執行による補償の例により、補償を行なう。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
2  〔省略

 刑法雑誌にこんな原稿を書いたことがあります。

電子媒体上の「他人の」電磁的記録の没収について
(東京高裁平成15年6月4日の事例を基に)
1 事件
(1)事案(新潟地裁長岡支部平成14年12月26日)
 児童ポルノ製造罪によって生成された児童ポルノである「光磁気ディスク(MO)」に、児童ポルノの画像データの他に、被告人が他人から預かった児童ポルノ以外の合法なデータ(顧客から預かった写真・素材等)も記録されている場合、児童ポルノを没収できるか。できるとした場合、いかなる手続によるべきか。刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(以下「応急措置法」という)は適用されるか。
(2)控訴審判決(東京高裁平成15年6月4日被告人上告公刊物未掲載)
東京高裁平成15年6月4日は、「所論のとおり,本件MOには,ホームページのバックアップデータと推認されるファイルも記録されているが,本件MOが没収されることによって被告人の請負ったホームページの作成,管理が不可能になったとしても,被告人が債務不履行責任を負い,発注者が,被告人や第三者に対し本件MOに保存されている発注者が提供したファイルを無断で使用しないよう請求することはできても,本件MO自体は被告人の所有物であり,発注者等が本件MOについて物権的な権利を有しているとは認められない。また,没収は,物の所有権を観念的に国家に帰属させる処分にすぎず,帰属した物の処分は別個の問題である。仮に国に帰属した後に,国が本件MOを発注者等の権利を害するような使用や処分をしようとした場合には,その行為の差し止めやファイルの複写,消去などを求め得る可能性はあるとしても,そのような可能性があることは没収の言い渡しを何ら妨げるものではない。」と判示した。
2背景
 そもそも、刑法・応急措置法は没収の対象について「有体物」のみを想定しており、犯人に属するかどうかは有体物の「所有権の帰属」のみを基準にしている。
 そして、最高裁判所大法廷判決昭和37年11月28日の事例は、第三者の「所有物」(有体物の所有権)の場合であったことから、応急措置法も応急的に第三者の「所有権」に関してのみ立法されたのである。
 ところが、今日では、電子媒体が登場し、媒体が安価であるために、生媒体(FD、HDD、MO)よりも、電磁的記録の価値の方がはるかに大きいことが通常である。
 同時に、電磁的記録の価値(データの重要性)は、伝統的な紙媒体と比較して、勝るとも劣らない。
 そこで没収段階におけるデータの保護を検討する必要が生じたのである。
3 大法廷判決昭和37年11月28日の射程範囲
 この判例の趣旨は第三者の「財産権」保護であって、第三者の所有権に限って保護するというものではない。所有権以外の権利については、解決されない宿題として放置されているのである。(大コンメンタール刑法第8巻P181、 衆議院会議録第43国会衆議院法務委員会-14号 昭和38年05月21日 衆議院会議録第43国会衆議院法務委員会-19号 昭和38年06月04日)
4 私見
(1)没収の対象の有体物性・第三者の権利の性質について
 今日、「没収の対象は有体物でなければならない」「第三者の権利が物権でなければ保護されない」という理由はない。(麻薬特例法16条、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律15条)
(2)データの「支配権」概念
 媒体の所有者が、他人からデータを預かっている場合の、データに対する支配権をどう理解すべきだろうか。
 本件の場合、被告人は他人からHP作成を請負って、注文主が提供したデータ・写真・商標等を利用して、完成したものを注文者に納入していたのであるから、その権利は注文者に帰属する。
 この場合の支配権は、そのデータを排他的に使用・収益・処分する権限であって、まさに「所有権」と名付けるにふさわしい。
 但し、物権法定主義からは、「物権」と評価すべきか「債権」と評価すべきかはなお、課題として残る。
 なお、刑法163条の4第2項、「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」における刑法175条2項では、情報ないし電磁的記録の「保管」という概念を用いている。媒体は第三者所有、データは犯人が支配するという状態を予定した規定である。
(3)第三者に帰属するデータの没収
 私見としては、電磁的記録の一部が消去可能な場合には、電磁的記録のうち違法部分のみを没収の対象として「部分没収」を行うべきものと考える。
 また、消去不可能な場合に備えて、第三者はデータの「複写」によって権利保護を図るべきである。
 これで没収の目的は達成されるし、犯人以外の財産権侵害も最少に抑えることができるからである。
 今日では、電子媒体が登場し、媒体が安価であるために、生媒体(FD、HDD、MO)よりも、電磁的記録の価値の方がはるかに大きいことが通常である。
 同時に、電磁的記録の価値(データの重要性)は、伝統的な紙媒体と比較して、勝るとも劣らない。今日、研究データやコンピュータソフトも電磁的記録という存在形式でしか存在しないのが通常であり、オンラインストレージされている研究データや開発中のソフトが同一サーバーに保存されていた児童ポルノと一緒に没収された場合の第三者の損害は計り知れない。他人の電磁的記録は、すでに電子計算機損壊等業務妨害罪によって刑法的にも保護されている。
 また、他人の媒体の上に保管された電磁的記録に対する物権的支配権(自由に使用・収益・処分できる権能)も観念できる。
 さらに、その権限を物権というかどうかは別として財産権として憲法上の保障を受けることは間違いない。
 これらの要請を充たすには、一部消去という執行方法・複写という第三者保護方法がもっとも妥当である。
(4)東京高裁H15.6.4について
 東京高裁H15.6.4判決は、犯人所有の媒体の上に、犯人の児童ポルノデータと他人から預かっているデータが記録されている場合について、その他人の権利は、データに対する支配権ではなく、犯人に対する請求権であるとして、第三者没収手続は必要ないと判示した。
 刑法上も厚く保護されている「電磁的記録」に対する権限を単なる請求権としたことは不当である。
 これでは、第三者の「有体物」を没収する場合でも、「帰属した物の処分は別個の問題である。仮に国に帰属した後に,国が本件有体物を発注者等の権利を害するような使用や処分をしようとした場合には,その行為の差し止めやファイルの複写,消去などを求め得る可能性はあるとしても,そのような可能性があることは没収の言い渡しを何ら妨げるものではない。」といってしまえば、第三者没収手続によらなくてもいいことになってしまい、 昭和37年大法廷判決の趣旨にも反する。
 また、その他人の権利を物権というか債権というかは別として、電磁的記録の財産性については、今日疑いがない。
5 現在の実務とその問題点
(1)設例
 ある電子媒体上に、犯人(A)が支配する違法の電磁的記録(児童ポルノ画像等)と、無関係者(B)が支配する合法な電磁的記録とが存在する場合を想定する。媒体の所有者はAである場合とBである場合とAB以外の者(C)である場合がある。
 押収され没収されなかったPCのHDDに児童ポルノが記録されている場合、検察官からは、被告人に対して、任意に児童ポルノ部分の消去に応じること=電磁的記録の「所有権放棄」を求めるのが一般的実務である。
 なお、東京高裁H14.12.17(東京高裁判例速報3186号)によれば、メールを没収するのに、PC全体を没収するするしかないというが、東京高裁判例速報3186号の「備考」が実務家の問題意識を示している。
(2)媒体の所有権がA(犯人)であるとき
 現行実務では、没収の対象は有体物を単位とするから、媒体全体が没収対象となる。
 没収対象に権利を有する第三者がいるかどうかを媒体の所有権をもって決するとすれば、この場合は媒体の所有者=犯人であって「第三者」は存在しないから、Bは「第三者」に該当せず、第三者没収手続によらず、電磁的記録を含めて媒体全体を没収できる。
(問題点)
 媒体所有者AはBの代理人ではないから、Bの電磁的記録の価値は把握できないし、Aはせいぜい媒体の所有権のみを確保すれば満足するであろうから、Bのために最善の防御を行うことは期待できない。
 Bの権利保護は、事後的に、Aへの損害賠償か、国家賠償によることになる。
 Bは重大な利害関係があるにもかかわらず没収手続には一切関与できない、Bの電磁的記録が不代替性の電磁的記録である場合など、金銭賠償では済まされない損害を受けるおそれもある。
(3)媒体の所有権がB(犯罪に関係がない者)であるとき
 現行実務では、没収の対象は有体物を単位とするから、電磁的記録を含む媒体全体が没収対象となる。
 第三者がいるかどうかを媒体の所有権をもって決するとすれば、Bは「第三者」に該当する。電磁的記録を含めて媒体全体が「第三者所有」となるので、第三者没収手続によらなければ、媒体どころか違法部分すら没収できない。
(問題点)
 実はBは違法部分については支配していないにもかかわらず、第三者没収手続に参加して適切な防御をしないと、媒体全部を没収されることになる。
 また、違法部分が媒体の規模に比較して極めて小さい場合にも、第三者没収手続によらなければ、媒体どころか違法部分すら没収できない。
(4)媒体の所有権がC(犯人Aとも、Bとも関係がない者)であるとき
 現行実務では、没収の対象は有体物を単位とするから、電磁的記録を含む媒体全体が没収対象となる。
 第三者がいるかどうかを媒体の所有権をもって決するとすれば、Cは「第三者」に該当する。第三者没収手続によらなければ、媒体どころか違法部分すら没収できない。
 また、違法部分が媒体の規模に比較して極めて小さい場合にも、第三者没収手続によらなければ、媒体どころか違法部分すら没収できない。
(問題点)
 実はCは違法部分については支配していないにもかかわらず、第三者没収手続に参加して適切な防御をしないと、媒体全部を没収されることになる。
 CはBの代理人ではないから、電磁的記録の価値は把握できないし、Cは媒体の所有権のみを確保すれば満足するであろうから、Bのために最善の防御を行うことは期待できない。
 また、Bは「第三者」に該当せず、第三者没収手続に参加できない。Bの権利保護は、事後的に、A・Cへの損害賠償か、国家賠償によることになる。
 Bは重大な利害関係があるにもかかわらず没収手続には一切関与できない、Bの電磁的記録が、不代替性の電磁的記録である場合など、金銭賠償では済まされない損害を受けるおそれもある。
(5)私見
 いずれの場合も、電磁的記録の一部が消去可能な場合には、電磁的記録のうち違法の部分のみを没収の対象として、部分没収すべきである。それによって没収の目的は達成されるし、犯人以外の財産権侵害も最少に抑えることができる。
 この場合、第三者没収の手続きも不要である。(文書の偽造部分のみの没収について大コンメンタール刑法第1巻P342)
 部分没収を行わないとすれば、(1)(3)場合のBは、重大な利害関係を有するにもかかわらず、手続きに参加することも許されずにその財産を失うことになる。
 Cがオンラインストレージ業者である場合は、Bは極めて多数人となり、Bの被害も膨大になるおそれがある。
 他方、電磁的記録の一部消去ができない場合は、媒体+電磁的記録を没収するしかない。その場合、犯人以外の媒体所有者や電磁的記録の支配者がいる場合には、その者すべてに対して第三者没収手続を取るべきである。
 さらには、電磁的記録の支配者については、事実上、電磁的記録の複写の機会を与えるのが便宜であろう。
6 最近の議論と改正動向
(1)法制審議会議事録
 法制審議会における、電磁的記録の没収についての説明によれば、もっぱら電磁的記録不正作出罪の生成物である電磁的記録の没収を想定したもののようである。
 電磁的記録を押収する手続規定を設けると、没収についての実体法・手続法も必要となるである。(指宿信「変わる捜査の対象 物からデータへ」法律時報2003.6参照)
(2)改正動向
刑事訴訟法改正案(犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案)
 改正案における刑訴法第123条第3項は「押収物が第百十条の二の規定により電磁的記録を移転し、又は移転させた上差し押さえた記録媒体で留置の必要がないものである場合において、差押えを受けた者と当該記録媒体の所有者、所持者又は保管者とが異なるときは、被告事件の終結を待たないで、決定で、当該差押えを受けた者に対し、当該記録媒体を交付し、又は当該電磁的記録の複写を許さなければならない。」と規定する。
 また改正案における刑訴法第498条の2第1項は「不正に作られた電磁的記録又は没収された電磁的記録に係る記録媒体を返還し、又は交付する場合には、当該電磁的記録を消去し、又は当該電磁的記録が不正に利用されないようにする処分をしなければならない。」と規定し、電磁的記録の「消去」という処分を設けた。
②刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法改正案(刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法の一部改正)
 改正案における刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法第一条の二は、「この法律の適用については、被告人以外の者に帰属する電磁的記録は、その者の所有に属するものとみなす。」と規定する。
7 改正案の課題 
(1)違法データのみの一部消去という没収方法を設けなかったこと。
 改正案における刑訴法第498条の2第1項における「消去」の処分は、適法なデータもろとも媒体を没収した場合であって、媒体ごと没収されることが前提となっている。これでは適法なデータの支配者や媒体所有者の負担が過大である。データのみが違法な場合には、端的に違法データのみの消去という没収方法を設けるべきである。
(2)「被告人以外の者に帰属する」(措置法1条の2)とはどのような状態か?
 電磁的記録不正作出では「効用の帰属先」が重視されるが、ここでは、データの財産性が重視されるから「帰属する」というのもその観点から理解されるべきである。
 解決すべき課題としては、データに対する「物権」は観念できるか、単なる利益・債権的権利で足りるのかそれとも物権的な請求権を要するのか、人格権(個人情報の主体・児童ポルノの被描写者・営業秘密等)を有する場合はどうか等を指摘できる。
(3)データが帰属する者からの「複写」が認められていない。
 改正案刑事訴訟法123条第3項の複写の規定は差押を受ける者についてのみ認められたものであって、「データが帰属する者」を保護する規定ではない。データの支配者の財産権保護としては作用しない。
 技術的には電子媒体の「複写」が可能であることは条文上も確認されているのであるから、没収対象物上の電磁的記録に権利を有する者も、「複写」による権利保護を認める必要がある。

植村立郎判事退官記念論文集

謹んでお慶び申し上げます。
isbn:4803765007:detail

植村立郎判事退官記念論文集―現代刑事法の諸問題 第2巻 第2編 実践編

植村立郎判事退官記念論文集―現代刑事法の諸問題 第2巻 第2編 実践編

isbn:4803765021:detail

謹んで、買うなり裁断機でバラバラにしてPDFにしてOCRをかけて、拝読させていただいております。

 ざっと目を通しましたが、同書中

最決平成21年7月7日(刑集63巻6号507頁。平成21年7月決定) 1
鹿野伸二・ジュリ1404号123頁掲記の福岡高郡覇支判平成17年3月1日(公刊物未登載)。
併合罪とするのは,東京高判平成15年6月4日刑集60巻5号446頁,大阪高判平成20年4月17日刑集62巻10号2845頁
最決平成21年10月21日(刑集63巻8号1070頁。平成21年10月決定)
また,近時,被告人が,住居侵入,強姦未遂1件,住居侵入,強制わいせつ既遂6件,強制lわいせつ既遂6件,住居侵入,強制わいせつ未遂1件,強制わいせつ未遂2件,住居侵入,窃盗既遂5件,住居侵入,窃盗未遂1件,住居侵入1件を犯し,新潟地方裁判所で懲役14年に処され,控訴審において,新潟地方裁判所が被告人が別に犯した裁判員裁判対象事件である強制わいせつ致傷1件について弁論を併合せずに審理したことが訴訟手続の法令違反に当たる旨主張された事案につき判断した裁判例がある(東京高判平23・3・14<未)
東京高判平23・3・14公刊物未登載

が奥村が関与する事件です。

植村立郎判事退官記念論文集 現代刑事法の諸問題/目次<第1巻目次>
「第1編 理論編・少年法編」
※各論文の詳細目次は,本文中各題名の次に掲載しています。
第1章 刑事実体法
犯罪事実のうちの一部に不申告,虚偽申告があった場合の自首の成否についての一考察 多和田隆史
連続的包括一罪について 佐伯仁志
罪数の判断基準再考 中谷雄二郎
共謀の存否が不確定な事案の処理をめぐる問題について 木口信之
共犯事件における真偽不明に関する実務的一考察 菱田泰信
財産上の利益について 山口厚
刑法240条における致死傷の結果と強盗の機会 ―「罪跡隠滅」目的による事後強盗の場合について― 井上弘
電子計算機使用詐欺罪についての覚書 ―債務免脱型の不法利得を中心として― 西田典之
詐欺罪成立の限界について 橋爪隆
租税ほ脱犯の罪質について ―詐欺罪との比較を中心として― 朝山芳史
横領罪と背任罪との関係 小林充
背任罪における任務違背行為 島田聡一郎

第2章 刑事手続法
証拠法に関わるいくつかの問題 山口裕
退去強制と供述証拠の証拠能力 福崎伸一郎
実況見分調書の証拠能力について再論 ―最二小決平成17年9月27日刑集59-7-753を手懸かりに― 川上拓一
刑訴法326条の同意の意義について 栃木力
「合理的疑いを超える証明」について 村瀬均
類似事実による立証について 伊藤雅人
被告人の利害関係と供述の信用性 ―英米法圏における議論を参考に― 半田靖史

第3章 少年法
少年の健全な育成 ―保護原理と侵害原理とのバランス― 河原俊也
犯罪少年と責任能力の要否についての一考察 ―医療観察法と関連付けて― 柴田雅司
虞犯の機能に関する覚書 三浦透
保護処分相当性と社会記録の取扱い ―家裁移送が争われる事案を念頭に― 加藤学
保護観察処分少年に対する保護観察及び施設送致申請事件について 本間栄一<第2巻目次>
「第2編 実践編」
第1章 刑事実体法
第1節 刑法総論
未決勾留について 大渕敏和
第1審における未決勾留日数の本刑算入の在り方 芦澤政治
第2節 刑法各論
インターネットを利用した名誉毀損行為について ―最決22・3・15を題材に― 松井芳明
振り込め詐欺の被害者に振り込ませた現金をATMで引き出すことの擬律について 松田俊哉
振り込め詐欺の法的構成と既遂時期に関する実務上の若干の考察 坂田威一郎
第3節 特別刑法
覚せい剤を中心とする違法薬物の営利目的輸入事件における違法薬物の知情性の推認について 渡邉英敬・飯島英貴
店舗駐車場の通路は道路交通法における「道路」といえるか 入江猛・入江秀子

第2章 刑事手続法(公判前整理手続・裁判員裁判を除く)
刑事裁判における審判対象の設定・変化と訴訟手続に関する考察 金子大作
放火で人が死亡した場合の訴因のあり方に関する一考察 岸野康隆
自己矛盾供述について ―その存在の立証方法等を中心とした一考察― 栗原正史
事実認定の手法について 金山薫
殺意の概念と証拠構造に関する覚書 遠藤邦彦
殺意の認定における「要件事実的思考」  下津健司
被害品の近接所持による窃盗犯人の認定」に関する一考察 平塚浩司
観念的競合の関係にある余罪と量刑考慮について ―放火行為により人が死亡したが訴因には掲げられていない設例を基に― 菊池則明
罰則の改正がある場合における刑事判決書の法令の適用の表示 江見健一
上訴の放棄と上訴権回復を巡る二,三の問題について 有賀貞博
被疑者段階の国選弁護人による勾留に対する準抗告が適法と認められる範囲について 中島経太・浅川啓
被害者参加制度の運用に関する諸問題 小池勝雅
検察審査会制度における指定弁護士の役割・権限等について 伊藤栄二
オーストリアの刑事司法制度の実情(市民参加裁判を中心に) 國井恒志

第3章 医療観察法
心神喪失者等医療観察法による審判手続の運用の実情と留意点 稗田雅洋
医療観察法42条に基づく処遇選択について 平出喜一
抗告審からみた医療観察法に関する二,三の問題 小倉正三

第4章 民事と刑事の交錯する分野
検察審査会の起訴議決と行政事件訴訟提訴の適法性に関する一考察 波多江真史
子の奪い合い事案における民事法と刑事法の交錯 上拂大作
交通賠償訴訟における刑事記録の一層の活用について 森健二

第5章 法曹養成
法科大学院における刑事実務基礎教育の現状 田村政喜
参与判事補制度活用のすすめ 伊東顕
公的弁護制度 ―「法テラス」スタッフ弁護士について― 廣瀬健二 <第3巻目次>
「第3編 公判前整理手続及び裁判員裁判編j
第1章 公判前整理手続
公判前整理手続からみた立証趣旨について 馬渡香津子
公判前整理手続終結後の証拠制限 宮田祥次

第2章 裁判員裁判における審理
第1節 総論
裁判員裁判の現状と刑事裁判全体との関係 大野洋
十二人の怒れる男」は裁判員裁判に何を教えてくれるか 細田啓介
被害者特定事項秘匿決定がなされた事件に関する裁判員等選任手続についての若干の覚書 駒田秀和
裁判員裁判における対質尋問の活用 杉田宗久・三村三緒・大和隆之
裁判員制度と刑罰論 島戸純
裁判員裁判の量刑理由における「犯行後の事情」等の取扱いについて ―公表された判決書の検討― 川合昌幸
支部における裁判員裁判を経験して ―体験的覚え書― 荒川英明
裁判員制度と米国刑事陪審制度の制度比較 ―市民参加者のプライバシー配慮の観点から― 諸徳寺聡子
第2節 各論
弁論の客観的併合と複数の犯罪に対する刑の定め方について ―いわゆる「併合の利益」の実務的な分析を中心として― 江口和伸
裁判員裁判における客観的併合を巡る諸問題 西田眞基
裁判員裁判における弁論の分離に関する諸問題 田邊三保子
裁判員裁判における公判手続の更新の諸問題 奥田恵美・栃木力
区分審理制度の運用について 安東章
裁判員裁判において刑事訴訟法321条1項2号後段による検察官面前調書(いわゆる2号書面)の採否が問題となる事案の審理について 丸山哲巳
責任能力の認定手法に関する試論 山口雅高
いわゆる「インテーク鑑定」について 小坂敏幸
裁判員裁判と精神鑑定 吉井隆平

第3章 裁判員裁判における事実認定と評議
裁判員裁判における評議のあり方に関する一考察 ―法曹以外の関係諸科学者の論考等も踏まえて― 高原正良
裁判員裁判における評議について ―量刑評議における付箋紙法の実践― 村山浩昭
裁判員裁判における犯人性が争点である事件の評決の対象と評議について ―大阪母子殺害事件判決・最判平22・4・27を参考にして― 原田保孝
裁判員裁判における行為責任をベースにした量刑評議について 室橋雅仁

第4章 書記官事務との関係
あるべき裁判員裁判と書記官事務〔講演録〕 山崎学

第5章 裁判員裁判における控訴審
裁判員裁判についての覚え書 ―控訴審からみて― 小西秀宣
控訴審から見た裁判員裁判 的場純男
原審が裁判員裁判である控訴審の審理の在り方・量刑評価を中心にして 上垣猛
区分審理決定がされた裁判員裁判事件の控訴審の判決 田中聖