児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

2015年09月09日のツイート

警察への無言電話について「警察官の職務は権力性を帯びていることがほとんどなので,威力や偽計での業務妨害罪は成立しにくいと思います」という弁護士の回答

 無言が「威力」になることはないですが、警察の業務の業務妨害罪の「業務」にあたるというのが最近の判例です

東京高等裁判所判決平成25年4月12日
第2 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,要するに,強制力を行使する権力的公務である警察官の職務は刑法233条の業務妨害罪にいう「業務」には当たらないと解されるから,被告人の原判示の各行為が同罪に当たるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
 しかしながら,一般的・抽象的に強制力を行使する権限を有していても,本件のようなインターネット上の掲示板に犯行予告を書き込むなどといった妨害行為に対しては,これを強制力によって排除することは不可能であり,かかる妨害行為によって業務の遂行が妨げられることは,当該業務が「強制力を行使する権力的公務」であるかどうかにかかわらない。所論も引用する最高裁昭和62年3月12日第一小法廷決定・刑集41巻2号140頁,同平成12年2月17日第二小法廷決定・刑集54巻2号38頁等において「強制力を行使する権力的公務」でないことを理由に当該公務員に対する業務妨害罪の成立が肯定されている理由は,「強制力を行使する権力的公務」については,暴行・脅迫に至らない程度の威力や偽計による妨害行為に対しては,すみやかに当該強制力によってこれを排除することができるからであると解されるのであって(東京高裁平成21年3月12日・高刑集62巻1号21頁参照。なお,上記昭和62年最高裁決定が「被告人らに対して強制力を行使する権力的公務ではないのであるから」としているのは,その趣旨を示すものということができる。),以上と同旨の原判決は正当である。所論は,警察官には警察官職務執行法等の規定により妨害行為に対する一定の排除権限が与えられているとして,警察官の職務は一般的に業務妨害罪の対象とならないとするものであるが,採用できない。
 また,所論は,原判決のように妨害の対象となる業務は妨害がなければ本来行うはずであった公務であるとすると,?最高裁が「強制力を行使する権力的公務」は業務妨害罪における業務に当たらないとしたことがほとんど無意味になってしまい,不当である,?本件において,妨害の対象となる業務が特定されているといえるか疑問である,?妨害者は本来行うはずであった公務を知らないのが通常であり,また,虚偽の犯行予告により非番の警察官を警戒活動に当たらせた場合には業務妨害罪が成立しなくなり,行為者の知らない事情によって犯罪の成否が左右されて不当であるとも主張するが,業務妨害罪の成立について実際に具体的な業務の遂行が妨げられたことが必要であるかどうかはさておき,本来行うはずであった業務が実際に妨害によって行えなくなれば業務妨害罪が成立するのは明らかである。上記?の点については,業務妨害罪の成立要件についての当裁判所の採用しない見解を前提とするもので,失当である。上記?の点については,原判決は,実際に妨害された業務として個々の警察官の具体的業務を証拠に基づいて摘示しており,これが業務妨害罪における結果の立証及び摘示として十分であることは明らかである。上記?の点については,被告人において関係する警察署の警察官の業務を妨害することになることの認識があれば足り,それ以上に現実に妨害されることになる個々の警察官の具体的業務まで認識・予見することは必要でないと解すべきであるから,所論は失当である(なお,所論は,非番の警察官が警戒活動等に当たった場合には業務妨害罪が成立しないとの見解を前提とするものと思われるが,その当否はともかく,所論の見解を前提としても,結果の発生の有無が犯罪の成否に影響するだけであって,何ら不都合はない。)。

東京京高等裁判所判決平成21年3月12日
すなわち,最近の最高裁判例において,「強制力を行使する権力的公務」が本罪にいう業務に当たらないとされているのは,暴行・脅迫に至らない程度の威力や偽計による妨害行為は強制力によって排除し得るからなのである。本件のように,警察に対して犯罪予告の虚偽通報がなされた場合(インターネット掲示板を通じての間接的通報も直接的110番通報と同視できる。),警察においては,直ちにその虚偽であることを看破できない限りは,これに対応する徒労の出動・警戒を余儀なくさせられるのであり,その結果として,虚偽通報さえなければ遂行されたはずの本来の警察の公務(業務)が妨害される(遂行が困難ならしめられる)のである。妨害された本来の警察の公務の中に,仮に逮捕状による逮捕等の強制力を付与された権力的公務が含まれていたとしても,その強制力は,本件のような虚偽通報による妨害行為に対して行使し得る段階にはなく,このような妨害行為を排除する働きを有しないのである。したがって,本件において,妨害された警察の公務(業務)は,強制力を付与された権力的なものを含めて,その全体が,本罪による保護の対象になると解するのが相当である(最高裁昭和62年3月12日第一小法廷決定・刑集41巻2号140頁も,妨害の対象となった職務は,「なんら被告人らに対して強制力を行使する権力的公務ではないのであるから,」威力業務妨害罪にいう「業務」に当たる旨判示しており,上記のような解釈が当然の前提にされているものと思われる。)。
 所論は,?警察官の職務は一般的に強制力を行使するものであるから,本罪にいう「業務」に当たらず,?被告人の行為は軽犯罪法1条31号の「悪戯など」に該当するにとどまるものである,というようである。
 しかし,?については,警察官の職務に一般的に強制力を行使するものが含まれるとしても,本件のような妨害との関係では,その強制力によってこれを排除できず,本罪による保護が必要であることは上述したとおりであって,警察官の職務に上記のようなものが含まれているからといって,これを除外した警察官の職務のみが本罪による保護の対象になると解するのは相当ではない。なお,所論の引用する最高裁昭和26年7月18日大法廷判決・刑集5巻8号1491頁は本件と事案を異にするものである。

http://www.bengo4.com/c_1009/b_381493/
Q 2015年09月04日 22時20分

I弁護士の回答 2015年09月04日 22時25分
警察官の職務は権力性を帯びていることがほとんどなので,威力や偽計での業務妨害罪は成立しにくいと思います。

JK見学クラブを興行場法違反で検挙した事例

 無許可営業罪は「六月以下の懲役又は五千円以下の罰金」となっています。
 風営法所定の業態に該当しないし、愛知県みたいな条例もないし、児童もいないしということで、興行場法を捜してきたようです。
 場内が清潔であれば、法益侵害は小さくなります。

安西溫「特別刑法〔3〕 改訂版」(1993年 警察時報社)p248
公衆衛生の見地から、奥行場営業者に対し、興行場の設置場所および構造設備に一定の制限加えるとともに、その入場者に対しても衛生保持の義務を課し、もって国民の健全娯楽の発展、維持を図ることを目的としている。

興行場法概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu-eisei/seikatsu-eisei04/02.html
2 適用
 具体的に興行場法の適用を受ける興行場は、映画館、劇場、寄席、音楽堂、野球場、見世物小屋等の施設である。なお、業として映画等を上映しない場合は興行 場法の適用はない。業とは反復継続の意思をもって行われることで、社会性は必要であるが、営利性は必要ではない。したがって、家族・友人のみを対象にした ものは含まれないが、会社の福利厚生施設として映画鑑賞室を設けた場合のように無料であっても対象となるものがある。
 なお、集会所等であってもおおむね月に5回以上映画の上映等を行う場合には興行場の許可が必要となる。
 また、近年、遊園地等で様々なパビリオンが設けられているが、興行場の定義に該当するような施設については興行場法が適用となる。なお、船や可動式の椅 子、車等に乗って室内に設けられた風景・人形等を観覧するものは興行場であるが、ジェットコースター等乗り物の臨場感・スピード感を高めるため風景等が設 けられているにすぎないものは興行場ではない。
 飲食店に設置されたテレビ等単なる客寄せの手段に過ぎないものは、興行場ではない。また、カラオケボックスのように本人が歌うことを目的とした施設も興行場ではない。

興行場法
(昭和二十三年七月十二日法律第百三十七号)
最終改正:平成二三年一二月一四日法律第一二二号
第一条  この法律で「興行場」とは、映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設をいう。
2  この法律で「興行場営業」とは、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けて、業として興行場を経営することをいう。
第二条  業として興行場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2  都道府県知事は、興行場の設置の場所又はその構造設備が都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下同じ。)の条例で定める公衆衛生上必要な基準に適合しないと認めるときは、前項の許可を与えないことができる。ただし、この場合においては、都道府県知事は、理由を付した書面をもつて、その旨を通知しなければならない。
第二条の二  興行場営業を営む者(以下「営業者」という。)について相続、合併又は分割(当該興行場営業を承継させるものに限る。)があつたときは、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により当該興行場営業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該興行場営業を承継した法人は、営業者の地位を承継する。
2  前項の規定により営業者の地位を承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
第三条  営業者は、興行場について、換気、照明、防湿及び清潔その他入場者の衛生に必要な措置を講じなければならない。
2  前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
第四条  入場者は、興行場において、場内を著しく不潔にし、その他公衆衛生に害を及ぼす虞のある行為をしてはならない。
2  営業者又は興行場の管理者は、前項の行為をする者に対して、その行為を制止しなければならない。
第五条  都道府県知事は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、又は当該職員に、興行場に立ち入り、第三条第一項の規定による措置の実施の状況を検査させることができる。
2  当該職員が、前項の規定により立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
第六条  都道府県知事は、興行場の構造設備が第二条第二項の規定に基づく条例で定める基準に適合しなくなつたとき、又は営業者が第三条第一項の規定に違反したときは、第二条第一項の許可を取り消し、又は期間を定めて営業の停止を命ずることができる。
第七条  前条の規定による処分に係る行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第十五条第一項 又は第三十条 の通知は、聴聞の期日又は弁明を記載した書面の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その日時)の一週間前までにしなければならない。
2  前条の規定による許可の取消しに係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
第八条  左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一  第二条第一項の規定に違反した者
二  第六条の規定による命令に違反した者
第九条  第五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該職員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを千円以下の罰金に処する。
第十条  第四条第一項又は第二項の規定に違反した者は、これを拘留又は科料に処する。
第十一条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても各本条の罰金又は科料を科する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150909-00000044-mai-soci
逮捕容疑は7月15日、保健所の許可を受けずに、店内で男性客3人に対し、スクール水着姿の女性従業員7人をマジックミラー越しにのぞかせたとしている。容疑を認めているという。
 同課によると、保健所が5月、この店を含め同様業態の7店舗に許可を得るよう行政指導し、6店は業態を変えるか閉店したが、この店だけが営業を続けていた。2011年から約2億円を売り上げていたとみられ、同課は女性の姿を見せて料金を取る実態が映画館や演劇場などと同様に興行場に当たると判断した。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20150909-00000519-fnn-soci
2015年7月、JR秋葉原駅近くのビルで、マジックミラー越しに制服姿の女性を見せる、いわゆるJK見学店「アイドル学園すた☆ぷろ」を、無許可で営業した疑いが持たれている。
店では、下着を見せるなど、過激なサービスをしていた。
店員は「18歳以上の女の子しか雇ってないですね。秋葉原で見学店が厳しくなっていて、マジックミラーだと、ちょっと注意が入ったりするんで、一応、リフレになった」と話した。
店員はいずれも18歳以上だったが、制服姿の女性が勤務し、「学園系」をうたい文句にしていることから、警視庁は、18歳未満の女子高生が有害な業務に就くおそれがあると判断し、映画館などと同じ、興行場を無許可で営んだとして、興行場法違反を全国で初適用し、摘発した

http://digital.asahi.com/articles/ASH99536GH99UTIL029.html
JR秋葉原駅から約500メートルの雑居ビル4階にある。制服や水着姿の若い女性をマジックミラー越しにのぞかせる「見学店」だった。しかし警視庁は、この営業実態が映画館や演劇場と同じで興行場法の許可が必要だと判断。同法違反容疑で家宅捜索した。

 いったん休業した店は、10日ほど後には「リフレ店」として営業を始めた。制服を着た女性が添い寝などをして、男性客をリラックスさせるサービス形態に切り替えた。

 捜査関係者によると、こうした「リフレ店」は、性的サービスを行っているとはいえず風営法の適用は難しい。興行場法が定める「観(み)せ物」にも当たらず、従業員が18歳以上なら労働基準法違反にも問えないため「取り締まるのは困難」(捜査幹部)。

 法の網がかからない分野でビジネスを続けるのはこの店だけではない。

 警視庁保安課などによると、秋葉原周辺には元々、見学店が7店あった。今年5月に千代田区が興行場法の許可を取るよう一斉指導したところ、2店は廃業したが、「すた☆ぷろ」以外の4店もリフレ店に形を変えていたという。

 高橋容疑者は調べに対し「他の見学店が営業形態を変えたため、(形態を変えなかった自分の)店の売り上げが増え、営業を続けていた」と話しているという。「すた☆ぷろ」はこの日、店のホームページで臨時休業を告知。店の入り口のドアには、休業を告げるメモ書きがかけられた。

 「JKを売り物にしたビジネスがあると、本当の女子高生が店に紛れ込んで性被害に遭う温床になる」と警戒する捜査幹部。抜け道を探して生き残りを図るJKビジネスについて「根絶すべきだ」と話し、捜査手法を探る。(遠藤雄司、阿部朋美)