恩人が狂うなと釘刺しに来る

拍手と燃焼が似ていて耳貫くねじれ

髄液降り髄の藪にも欠く五月

大雨警報台所を包み椅子の背

音に似て死滅が示す足の夢

黴びてもラオスへ皮下に六位の旗戦がせ

涎がドロリと虹を枯らす異議として独楽

左利きの定かに火だるまを置いて

錆乾かぬ陰に強靭な筒を順次

誰に話せばいい肩から手が生えてること

粒孕む土に散佚古書の一部

弾む蛙の血でもぬめる網膜の果て

性愛の銅鑼叩く五つ目の方角

粥食す母系の共食い感煽られ

鳴かず飛ばず名ばかりのアリス詰めた袋

罪のバッヂを茎に刺して生ぬるい汁

湿る童話も生き恥と絶え間絶え間に顔

空一面毛布悲しく鳴くところ

鳥かわいそうに脱ぎ捨てられ衣類は明るくされ

雨天の芝にそれまで座高だった円錐

看守の目は粗く風通すメトロノーム

犬も唾を持つ生き物か洗濯機真昼

ふるさとの破片は互いを映す群

扇の骨次の柱を朧にする

遷都ためす床下に沼を遺棄して

戸棚を開けても外走った形跡に割れて

目次塗り潰して付喪神を拒む

砕け散るねぶり不足の能舞台

ひとはひとりでは生きられな、ホテル解体

忘れよ鉤爪を天狗の面を道は細い

砂の際限に集落おやすみと伝えて

神社刷られ足場にたかる薄曇り

軸啜る老婆は神に仕える紫

紙を塊に存在は奥の暗い車庫

常を空費して波打つ仏壇の外

ミヤコイビツの花咲く都歪に練る

黄泉比良坂くさらせるとねむらせるのあいだに

褒めながら血を抉る指でできている

人倫匂う枯野に貝名を捨てても苦しい

染みた地名全部を指し唐突にヒヨコ

星明かりに樋傾けると越後屋来る

ステロイドベルト鳴くそれも過去乾いた亀

忘白の瀬にラジオから鬼吸うサイレン

ワニ棲む快楽に火を灯せば広がる余白

予約されて地下道にこびりつく平日

積めば万葉集らしからぬ殺風景だ飛べ

かつて鈍く賜り明き盲の路傍

姥捨て中止ひとりでにねじれるから

グッピー眠る静かな肌人間の領土

奇しくも銀河の雪解けにマッドマンやや大きく

胴から下三体の魔女雨より身近に

自動生成の行間持つ地方都市の施設

薬溶かす猫洗うぬくい火の眼底

病欠の写真にドレス着たマネキン

味が湿り輪となる星を身籠る男

油足せば不確かな監視でも輝く

来世を前借りして囀るゴムの手袋

歯片賭場に婦女冷えて待つおまじない

屋上から散りゆくもの皆正三角

色褪せるちぎり絵のまろやかな研ぎ師

軽薄に寝起きして我が身を花びらと知らず

紅玉置き滅ぼす村から村へと蛇

本日は昼古典の煙に霞みながら

重婚家系の図と喉は剥き出しにブローチ

川清らかに足あと殴る手術痕

何もなければ火花開くコンクリートの丘

野良神鳴く意志持つ餌の光奪い

雛人形に角ねじ込み平行世界は炭

他者の尊い肘を抓り呼び戻す砂塵

万象の姫罅割れて金歯見せる

時計の針こちらの盲点の中に折る

広く低く暗く床下に舞った跡

根溶かし尽くし抗い給えと森焼く番人

人由来の霧断言の美貌裂く

ミンクの切れ端が山河に深い鍋も暮れる

ぶら下がる鉄ドロドロに渡すドブ

雹窺う現場に愚民と土を盛り

贅なり肉なり小屋に痛く咲く抜き足して

知り合わなければ羊は存在かもしれない

集団深呼吸して具みちみちと童謡

吹き消せば奇遇も飾る風鈴館

族長が消えた角笛を今産む祖母

滑り台からカプセル親代わりに受け取る

ドーナツ食うもあわれか鳥影だとしたら

タクシーの外は百の目を閉じた東洋

囁かれ胸が苦しいトカゲを飼う

北極の背もたれが指す上下の核

月自体が叶う幾何学の逆さ神殿

魚に指があり指しか見えない海

水深に粉踊らせて災禍の図

石嫌う暗室に等価に彷徨う御魂

命に背きヒトの形からヒトの文字

寂寥は影も形も青びたし

亜熱帯に深く刺さる谷眠りより

呪いは羽根になり飛び立つ蓑引き抜いて

昔犯しの旅一枚に陸と海

やや臥す豹の角張りつつ容器めく分校

まるで否定そのもの未成型の銅貨

片目ずつ過去に置き草原の木よ

呟いて色を足す天磨かれて

盆地の妻狐の知るところとなり苔

古書店没落本棚本噴く甘い香り

下着を穿いた少女にトルコから花火

宇宙の奥に痛む鉄正しく澄んで

夜の世界と言い言葉に窮する打診

暗幕投げるはっきり遠くに午睡の髭

虫達参加背中に背中があるように

死蛾死蝶チャキチャキ鋏を振りかざし

裏手を底にせよ切り離して誰か以下略

自滅のメ東西南北あぐらの中

鹿に青い鬼の仮面シテシテと鳴く

参りがてら賭博のペースト状の磯

粉バッタが跳ねて無番地の村が子宮

肉類の全きカバに死角なし

うら若き乳房奇数に神輿担ぐ

要人ワタまみれに室あり図工に背き

百人角笛吹くただひとりを千々に集めん

遥かな州都より太い茎の内在廃止

反重力雪共々彷徨う木の星

泥ですから気持ちよく危害を加えて

青は六つの面が閉ざし自然へ一つの賭け

数珠エレベーター鳴る火元に国を残して

窓も鏡も同じ末路に馬霊渇く

人口爆発的爆発海中に伽藍

田んぼが高いぞたちつてとうとう死んでしまう

マンション灯る風上に無言のサイクロプス

近親姦の密度に水きれいなまま流れて

母子手帳の母と子と手ばらばらに帳

背く隣家のペンキに等しい蜂の量

ヨット切り抜いてもヨットの人命吸う日没

灯籠が贄のけだるい廊下に春

拳の中のアサガオ日記に死体を書く

バス二台まったく一台は寺壊す

塗れた婦女髪から這い上がるも蓋せず

僻地の錆通行止めにされ色付く

果実の深さに種も笑う緑の正体

坊主の殺生済んで大きすぎる鉄の輪

紀元後に女の籠を封する虹

貴様ら融かす泡有為転変従えて

孤島はこの病の通過点である噴火

銀の針で突く西へと仮面の暗がり

爆心に愛など民は下位互換

不名誉でしょうか銀河の果てムカデは殺して食う

野に目覚める桐ダンス花吹雪浴びて

東雲の靴ひとづてに群れる

板もないのにブランコと呼ぶ双子の背骨

赤青溶くラオスで透明にした水

象の背中でボート漕ぐ我突き破らん

森の唇ぜんぶ笑う絵がたくさんぼく

女体盛りを画家に食わせビスケット市場

タイ語キャスター血を半笑いに咀嚼やめず

馬が曲がると舌打ちして溶け合う眼差し

いつかも化けていた乾きに砂壁の卅

緑と心臓それに椅子なるほどと熱もつ

マダム閉ざす手紙の末尾に吊り天井

毛根にとぐろほぐされ照る非番

みしみし愛しています放送禁止の男

左折禁止孤独な町に米が足りて

鉾滅法に並ぶこと森として姦として

サンダル澱みへ蹴飛ばす千年後にファンファーレ

作為に満ちて浅黒く顕現する乳房

添い寝して光らす松に嵐の夜

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未知たるべき寺の可燃性へ降る雪

新春の液体は諂いのグレー

べろべろと焼け落ちて淡く蔦の目眩

涙くさいキッチンで首ぶっつけ合う

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夕焼けの中へ鶴の足しっかり押さえる

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口臭に寒さを噛み鬼火逆しま

小舟などいかが塩鮭をつまりその

女事務員泣く左目から倒立体型

床ぬるくするみんなで嘘つきあって

嘔月嘔日写真から主語切り抜き失踪

目の奥に岸の光を研ぐ戦慄

酒乱に毟り取られた花以外が雪渓

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軽い人形こぶし大拒絶大鉄鋼

流星泣きながら鞭打つ病気だから

封鎖に雨する古代魚の博物誌も鉄か

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爆発も浮世も花の妖精界

階段の脱皮を照らし大局的

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豊穣の胴体静止して騒ぐ

縄に殴打の痕くっきり冥府の地番

歪む耳から声がする一抹のそれと

宿り木の粘液時雨れ狭き晩餐

白柿狩る瞼この瞬間も皮膚

石沈むわらべうたの輪に有識者

前方への堕胎鳥居を突き崩し

闘技場の勝者我が背丈を水深とせよ

蒸気卑屈に糊面を飛び回る夢見

伐採の手を群青の家畜に拉ぐ

山の名ズラズラ書き記してありエメラルドの目眩

画布手に嵐を全身に豪快なる卒倒

牛は強靭に白く聳えた神経の塔

墓守震えて機械的に解読を待つ

堰破る虚飾明かりのない部屋へ

ビル昏れにありがたや自販機も息する

放牧反転してただ明るいばかりだ窓辺

斜めに滴る不謹慎を滅ばせゆくため

身とこころは片町ふたつでひとつの母音

線路は続くよ「神様ぼくを」とパープルに

石柱に暗闇区切られ我が身は頁に

塗料ねじる量に任せ仙境への道

血筋淡き髪に予定日の丸絡まる

昼時々笑う害虫駆除の青年

星の中にいる咎めに末路が五つ

飼育されて猿常に明日の声を侵す

貴婦人らの手に外壁澄み渡る空へ

薪くべる腹から蝶の羽生やし

霊峰側の駅疑わしく川が開く

口減らす先の尖ってない毛布で

調べを残し地下一面に蠢く銀

着ぐるみの指縁取る大地の烈風

居場所がそのまま報復となる掠れた消印

脳裏は地下よぎるは集団プロミネンス

直線プラスチックの差し歯で味わう濃霧

内角の和に本当が少ない島

たるんだ糸切り今そこに山があったような

喰い潰れて枯れ草滅すべきは月

女の歩幅割るケーキをピラミッドをナイフで

隠れ家で切ったリンゴを元に戻す

憎しみの霙が針より近く降る

都市漂う田は上澄みにしてお知らせ

呼ぶほどに赤く工芸極まる盆

触手巻きつく納屋に一滴の海と素人

朱の骨頂から鶴もぎ取られて発煙する

蜥蜴ら繁殖その根に濡れた虎の牙

しかし同時に流れ星と切れ点字がシーツに

電報届くままに積み公共こんもり

自我のまま奥歯揺すれば無縁墓地

夜汽車泡銭の密なる近親らの恋へ

森の先端に池さす凱旋門から絞る

ピアノしっかと舞台握る必定の夢魔

すべての隙間に緑噛み札束は街

椅子に試験管打ち込み真紅の肌の奴隷

模型冷ます明度の近似した山で

十日分の日めくりを抜く泉の舌

俗夫の妻あどけなく凡々と羽化

弱小なまま茜に玉寿ぐ試合

木々や小鳥が可愛くて飲酒篇の目を出す

擬音吐く虹宛所に尋ね当たらず

巨大システム一平面に束ね未開

軍鶏煮殺す愛という字の複雑さ

魂で仄めく大絶倫の町

鼻腔突く勅命次なる花園へ

比喩もなく沈黙して育つ木と脛

屋根のある沼に丸太の所在を告ぐ

死も全部同じ他人が増えている

帯解くとき折れ線グラフの先を思う

屋根編む少女片足は歌の身代わりに

長寿が群れる日地下茎に輪切りの意を込め

曲線美あらたかに老けゆく学生ら

火を焚き持ちゆけば台座不在の在る局部

(ここから2014年)

輝く日没喉仏の奥拝みに来る

流離遥かに澄んで池にとどまる利口

果てしなく勤労に歯牙注釈す

花瓶狭く沈む合唱団棒立ち

無口ならば引き出しにして主語しまう

一説にも犬ではない路上の枕

赤き前哨戦の誉れ手紙をピンで留め

ビール狂の家財皆砕け宇宙論

輪舞の切り絵の手千切る手受け取る手で打ち消す

球根を深読みして苦とないまぜに

愚かなのでお菓子が甘いぼくはいません

青空深く兆す枯木稲妻の中

矢の雨槍の衾で討ち武士ら毛深く燦々

一枚ずつ脱ぐなぜなら彼女は岸辺の波

アンドロメダが目だと言ってる気に触れつつ

脳震島に五本足の駿馬を放つ

鞠が歪でつけない放送へも電力

うねる肉体の謎水に水力が笑って

米を密かにする釜を肘まで入れて

宗教六角形に人命より崖輝く

街とサイレンを分かつ太い線ひとの喪失

道連れに次元を試す飲食街

非十字型の交点拾い円前進

湖底なお沈むシグマに四季絶し

跪くベーリング海はその時盾

術後の嵐にスローライフの天秤鋳造

劣情のままに太陽は流れて裂

要塞へ双眼鏡に雲詰めて

破壊しても木魚の中チョコ溶け始める

柱の傷はおととしが存在した証

象が象を踏んでぺらぺらに花吹雪

カルデラ湖の情念が毛を魚人に槍を

重過失の世に幻獣の肉五トン

まだぬくい杖なぜここに噴水が

寂滅の鋭角五つ水に溶かす

綺麗な首を山脈で塗る貨物列車

防波堤濡れる恥濃く傘を尽くす

舞い捧ぐ日干の血眼は西へ

歪む止マレの文字蒸発し奈良の都へ

慰安するキリン嵐の昼担い

羊毛疎んじ後ろめたく匿名の過去も

山菜を合理の狭間に蒸し返す

親類縁者皆角生やし雲肥やす

貝類の覇気に絆され調査団

盾の裏に三国志が好きだったひと

土はドリルを澄ませている噎ぶ麦藁

老処女性如何に水玉の海を刺すか

捕虫する椀に無閃のパステルカラー

カプセルホテル残酷に宙しかとねじれ

庭に四角い溝冷蔵しているのか木々を

阿修羅たる根拠引き抜くペンチの熱

豆腐の空組み替えては縫う八咫烏

山の鏡はまだ暗い婦人バリカンを手に

失せれば茎に刺すのみ命令形の半月

枕濡らす煮えたウサギのウサギ跳び

混濁へと滅びた文明にも重力

天変地異にハンカチ一晩浸しておく

煙に巻かれて顔新しく姉妹脱ぐ

泣く代わりに義眼を這う鬱の画数

氷山の子の合唱ホログラフを生む

大河千本瞬時に涸れ瞬時に天空

能面の下に砦は石を乱す

缶引く点ひとつ画家のかく日照りに神

歯のない大口もある根底には絵ぎしり

窓越しの遠く近くにある路頭

心理の外針密かに佇むシナリオ

月煌々体内に紅差す如く

炎天の篦恐ろしく語り継ぐ

銃に似た眠りを米俵にゴム弾

混迷に都会華やぐ三つ巴

斑を葉巻型物体飛ぶ牛の持つ

老婆死ぬ鍋の空疎に遺書を煮て

島滅ぼすボランティアたちの羽を毟り

一日が終わる魚介を暖簾に削ぎ

水臭い人間いやしくも粘膜

喪失感を蝶の餌場に霞む酸

脈のない来世の袋に羽毛ばかり

決して罪なかくれんぼでは村ならず

ぶら下がる猿問題は生き血の揺れ方

近所気怠き段と化す不遇を平屋に

餅蹴飛ばし飛び散る醤油の来訪者

ハの字にカバのオスメス並べるスキーしたい

御者揺さぶるサイダーの酔い荷はマスカット

若くして一つ目に交わる平行

寿司屋の奥愛と鳴かない魚のルポ

極地に蝕カーリー刷りまくって汗する

頸動脈鳴らしてホルンを売る夜明け

地上で藁に縋る家族たち魔境へと

自我引き裂く緑の蜘蛛の巣のコピー

同盟の海光る幽霊滑車

肉の見える羊が野の舌先に丸く

甘い煙がシャワーを浴びている終盤

不憫な隊諸国錐揉みして歩く

紐ブチ切れ術中に舞うトートロジー

生まれて笑いながら髪を抜く静かな夜だ

パーソナリティーの乖離は音を発する沼

皮脂拭う枯れ葉吹かれて残党狩り

その名はスプリンクラー部屋で林檎を切り刻む

土砂深く墨爛漫の火花散る

歌人に群がる百獣咲き乱れんがため

傾く写真の奥行きへ爪伸ばす家族

私有する頭蓋に浅く張る光

首長竜圧縮再絶滅も辞さず

一粒の星ほくそ笑むマトリョーシカ

陸と海の断絶味噌汁に漂う

常夏剥がせば死相グリーングリーン歌う

顔撫で下ろす笑みに代えて高層階より

雲満遍なく夕べに逆日の出を吐き出す

幹にひしゃげた標高に谷噤む谺

常駐する階下の発光プリンに纜

気を許す草原曇る罅を育み

泡薫じ死別の距離に撒き散らす

不可視文字からなる中二階に星吊る

処刑具嗅ぐ終生薔薇受け取るよりは

通貨に穴がわたしは凪を見るだろう

臓腑にある鳥の食指に灼かれる昼

他者の影と結ぶ手首からドバドバ稲穂

花園に群集心理の露流転

晴れやかな悪化の一途にシェルパの帯

湿る風の黄噛み赤噛みひとたび肉

土の円周上に直角なるアメリ

爪痕に燃料染み込む飛び立つため

蛇さざめく充血下のスープの淵に

烈火の如きトロン、其はトロンとして冬雷

舟縛られやむなく水介在する沢

温められ卵よ摂理を外れんか

あわれあわれこの世のてっぺんにもししとう

棘だらけのコート着て日溜まりに立つ

告げるな鳥しかも黒く千切れた明るみに

無限に長い刀を抜く風夏は鞘

夜汽車か荷馬車に裏か表を揺られ歌劇団

蛾を留まらせておく窓に不謹慎包む家

猟犬ほぐれて火に浮かぶ筋肉の川

ホテル揺らす金粉その完全なる躍動

蛇百死千景のとぐろ巻く峠

坊主が屏風に卍固めにされ飛び散る

射精しつつ征く師霊媒の痕ぬらぬら

杭立つ土地を逆さまに仮面の雄叫び

船紅蓮に闇を誘い従うか否か

低地冷ます豪雨に混ざらんか線路よ

血が死で満ちていないの誰かに見られたら困るわ

泡惑い海峡皺だらけに「オ、オー」

孤島に甘い多言語まとわりつくビン置く

流れていく鮫は銀彼の頬は海

軒に魔が差し凍る数奇なる運命

言霊のたかる漁船に不在の沢

告げ続けよ名を人格が降りて光

芸尽きて鞭打つ千度のぬるい球

濾紙滲む悲しみに落とされた都市

舌異次元にチョコ頬張り箱には古代の鍵

差異という洒落た現実の日付は億

森羅万象闇の苦さを残し忘れ

夢から見る現実とこちらに鳥居

苔の一種よぎり街という傷は癒えた

情欲恐るべき乱打許し捲る土煙

鐘ひとつ墨の粘りを支える梁

食いしばる歯に鬱蒼と林成る

二歳がぼくの髄膜を電飾で目立たす

社員ら囲みグラスの脚踏む艶めかしく

ビルからビルへ肉を離れたハイヒール

知らず知らず天竺にいてベルト扱く

頭蓋化する支部へ出向激しく鳴り

ようこそ手乗り猿さん棒人間の国へ

雪を吸う遊具がギーと蒼白に

ボロボロ朧朧とパンが歯が老人が

可決のどよめきに見とれている葡萄農家

静かに豚は目を閉じる聖木工ボンド

寝ずの第七金曜日に五芒星滲む

人から思い浮かぶ粉は塩辛いぞ塔

麺巻くフォークに逆らいませんというタイ語

順延され友の舌ばかりのたうつ広場

長針の緊張を解く静物

「広げた手は瞳だよ」即ち少女落下

ステンドグラスは韻だそこへ鐘かくも空しく

群れは何もかも悲惨裸足で靴を煮る

桜の下風薫れば泥ぶつけ合う

茶柱からはみ出す鬼ヶ島の分母

臨月の塀は和風をとどめおく

凍てた果てたと窮地に聳え立つ領主

ポスター破ると鏡がある奥から白濁して

骨をセミナーへ折る星と海と輝く催眠

木の実押す書類に穴のテリトリー

精かすりうっとり流されゆく魚

妖魔の臓腑にメメント・モリ明るい家庭

歌以外も垂れ流す姉妹廃バスでカナダへ

稀な水に恭しく髪剃り落とす

感覚器の触手は見えず天動説

殺人鬼も印刷をする危険水位

球化した黄泉の甘さを目に持つ各自

カクテルバー内部から牛の首錆びる

西に弔いの枠が誰という指示も持たず

電撃の算数踊る古来の里

人間の中から調理済みの肉塊

ダガーひた走るひたこの凹みひた

目眩に輪郭がある淡くどこまでも組織

名付けのよすがにやがて死にゆくもの宇宙

路上の怪数える指がない花も

靴の中がペンキくさい標識にしてよ

岸のパトカーサイレンで血潮掻き回す

連射機オンにして土かけるぬくい毛布に

名刺サイズに海抉られ深呼吸に関わる

吸血す石棺に剣着飾らせ

三つ目を刺して焼く串の先端は三つ叉

ぼくと沈黙乗せプロペラそれ自体の回転

胎外にも炎熱のべろの手毬唄

水平を悟る煙の火が焚かれ

家は不在の皮膚極北に同じ死体

切符はイチゴのスライス沈む船より陸へと

天よ感受し給え無化劇の終わりを

涙滴る宝玉指輪に自我無きマダム

土星樹繁るカウントダウンも負を貫き

常人我々に歌を教えたがる荒野の牧歌を

天地は皮一枚で繋がる首打つ儀式

六角に壁組んで水浸しの椅子

生きながらえることの叫び農夫は耕す

雲育む沃土へ製茶群飛翔

汗ばむお膝元夢が人種に変わる

棲め因子よあばら屋に金糸を垂らして

ストーブに翳している手を離せば断崖

ピカソ薪に喪中喪後なる断定会

血も浴びずに錆びる断頭台上のスピカ

ロマ嘆く弓を川面に擦りながら

戦火鮮やかなる爪なき猿吠えたが最後

意味の形が人間真似る秋の隔壁

山の前は美しくまた沈みゆく裸体

嵐はくたくたの薔薇をもぐ婦女の所以に

小児科とめどなく噴き上げる水が透明

食虫植物下げ跡地へ自宅を見に行く

防げず鎧の内へ青銅の蝉時雨

魔界の文字崩れやすく星なる和紙貼る

やがて火に棲む神殿一巡目と呼ぶべし

砂粒兆の位まで諳んじ初めて歌とす

床に寝て見る吊るされた銀の匙

巡る季節を鉛筆でぐるぐるぐる出でよ

牛の深さを湿度で計る水の外

長靴に飲まれていくかつては金魚に

円書いて覗きこむできるだけ小さく

山の脈を磁気と見布と化し油彩

西から水溶性フィルム昇るサラダの冷え

水田薄まる涙袋で痙攣して

本当の風化を思う崖の花

古びた無に廃墟等塵塗れの呼吸

吹き抜けは未詳の糸杉透き通る

祇園精舎のデータ消して首空けておく

轟かず屋台集まる日の低さ

背ぐるみの騾馬肉馴染む下流の露

空転する悲しい左を持つ生け垣

持ち主は野菊散らして光の盾

まなこ真っ黒な旧家にしてお利口さん凱旋

信者すべての拇印なすり多面相の個室

大さじ二杯の泥が白い枕だ寝よう

オルゴールから呪歌それからというもの

彼と信じ疑いようもなくクリーム煮

グミ降りて驚きながら蹴るだろう

後妻は捕食者セメントでカフェの毛を繕う

音砕けて実体の無事を貫く孤独

空疎という人混みの内角の和

涅槃ぶち壊す音波たれカンボジア歌謡

トカゲのどこを切ってもまた監禁される

チョーク白く密輸し最暗部へ粉噴く

この水清らかなること百年目も百開く

髪も口も結び紙ヤスリ買う女

天気図に誰踏むでもなく軋むミシン

ワニ皮のセーター膨らむ兄の肉で

刺されて街角がる羊の身に祭りの告知

日常かくも楽しくなくホットケーキ焼く

流刑地からの流刑重ね珊瑚の宮へ

最古の雛が回る朧に冥王星

時空黄色く牛過ぎる思い知れ卵を

川辺の丈浮かれて白夜となる神話

空室に台詞が振られ血風録

トントンとトタンに涎する老婆

不具誘う暗炉に痣を投げるべく

星屑を開くときれいな紙だった

王朝を時雨れさす宮尖る殯

タオル乾く不似合いな椰子に身をよじらせ

瓶詰めの黴並ぶ書架に匂う木屑

猿の咳ひときわ大新月賜る

混も沌するギザギザ月光無事な手足

標本の茜を放つ不意の客

切れて自らの暗がりに落ちゆくあやとり

庭掻き混ぜてみても苦しい爪と生きること

何度も夜が縞々に簒奪しに来る

花は恐怖にして絶望息さえも贄

金属の奇形焦がす和室の雨漏り

速く胸ポケットから垂れる溶液より速く

警報また円の一部という自覚

宵戯れにワイン残せば散るカモメ

旅するマルコポーロを奇数の列で撃つ

模造ヶ丘吸盤咲き乱れて誤配

一辺一兆メートルの更地たかが地獄

幹に木に包んで吊って終止形

事務所出ると人足す音して野焼き盛ん

渦飲み干す我ら霞の兵なれば

ジリリンごと腕慰める男の股

眼底僅かな地所なり次々錆びゆく中世

顔割れて蝋の雪崩に羊の脚

点描の橋崩れ他次元の死都

断面曲がるなかれふとしても回る独楽

聖ならず近世遠十字大系

道路に平屋ばかり暗澹なら弾むのに

定めもつれ羊歯練る底にありつく鍋

裏返したうさぎにびっしりとボーダー

朝靄のセミ工場にダル・セーニョ

公園砕く閃きを手拍子で消して回る

宇宙大きく見えるため在る置き時計

鉄が和むのはなぜもらい火で熱しつつ

吹雪く緑化の迸りに声その蔓を切れ

夜空カッターでさらうと象迎えに来たよ

島美しい命綱引き寄せなお輝く

遠近法ですべてが点に粉薬

その毒はヒトに効かずオオムカシガエル

ぽかんと開く戸口気は確かイカも乾き

ニーチェ発狂後の世に旗持ち寄り風見

空に歯車の青く満ちて芥川自殺

肌一枚譚語る神主の縒られた妻

辛辣に丘をくすぐる無言劇

蝶の痴態と噛み合う軍港二度と目覚めず

零超えてぼくら同じ誰かの分身

地下をゆく感覚の鮭である泥流

中腹裂き噴き出す楓の明かりでオペ

反射面降り積もり湖底都市の除夜

粘る櫛の彷彿と黄泉路まで白く

赤子の芯きれいに抜け煮えたぎる池

満身創痍の犬や人あらん限りの老い

蛾の根幹剥き出して肌理敬うべし

所詮輝度も持たぬ選択範囲の怪異