綴じ込みページ 猫-127

長靴をはいた猫」が頭に浮かんだのにはわけがある。ちょうど、オークションで、ブーツに入札したばかりのところだったからである。ぼくは、ほぼ半額で出品されたそのブーツが、もう何カ月も落札されぬまま繰り返し出品されているのを知っていた。しかし、そのブーツに入札することは、旧ミニ(イギリス製ローバーミニ)がこわれかけたのでジャグアーに乗り換えようとするのと同じことだった。二足たてつづけに購入して、しかもそれが信じられないくらい安価だったため、すこぶる気分がよく、高揚した気持がサイコロを振りやすくしていたのだとおもう。ぼくは、ほくほく入札して、結局、最後のところで横からさらわれてしまった。
 

 そこで、ブーツに執着する気持がむらむらと起こり、賭事師のように、しばらく場の雰囲気と札の出方を見ることにした。ただ見るだけでなく、最上のブーツについての研究も怠らなかった。ところで、残念なことに、最上のブーツはぼくのために作られているわけではないこともわかった。そして、まあ、妥当な一足を入手した。「長靴をはいた猫」にも少々面目が立った。
 で、また、「余談」である。


S様
こんにちは。お品を拝受いたしました。ご高配、有難うございました。すぐに試着いたしましたが、じつにこの上なくピッタリです。ついでに磨いたりして、うっとり眺めておりました。ご連絡が後回しになり、相済みません。
以下は、余談です。


シュナイダーブーツのことは、今回、はじめて知りました。実は、最近、エドワードグリーンのジョッパーを落札し損なったばかりでした。入札したときには、もうジョッパーをはく自分のイメージまで出来上がっていましたから、本当に落胆いたしました。

未練たらしくオークションを眺めているうちに、(S様のでないほかの方の)シュナイダーブーツが眼にとまりました。それから、ネットでいろいろ調べるうちに、わるくなさそうな靴だとおもうようになりました。いや、わるくないどころでなく、どんどんほしくなりました。しかし、出品されているのは大きなサイズばかりです。


S様のご出品は、いつから出されていたのか、全然目に入りませんでした。で、それとわかったとき、あわてて即決入札した次第です。エドワードグリーンのときに、即決をケチって失敗しましたから。


いま、あのとき無理をしてエドワードグリーンにしなくてよかった。万事塞翁が馬、としみじみおもっているところです。きれいなお品で感謝申し上げます。
T


T様
商品到着のご連絡ありがとうございます。
サイズもぴったりとのことで非常に嬉しく思います。
シュナイダーブーツのジョッパーは踵、足首に張り付くようなフィット感が特徴です。

エドワードグリーンのジョッパーというとグレシャムですよね!?
グレシャムも非常に美しく、素晴らしいブーツだと思います。逃されたのはたしかに悔しいですね…
グレシャムにはかなわないかもしれませんが、シュナイダーも英国王室、騎馬隊などに使用されている由緒ある乗馬ブーツです。末永く使用していただけるとありがたいです。
S


 これで、新しい靴は三足になった。弁慶ではないが、目標の五足に着々と近づいている。というか、すでに達成目前である。ふふふ。じつは、近日中に、二足まとめて送られてくることになった。
(つづく)