”Maison.House II.V” J.L.Guionnet&E.L.Casa

omay_yad2007-02-28

タイトル:"Maison.House II.V"
アーティスト:Jean-.Luc.Guionnet&Eric.La.Casa
レーベル/番号Vert Pituite LA BELLE/Vp0301
制作情報:CD・2001年・フランス

このCDはジャン・リュック・ギオネとエリック・ラ・カザが南仏地方のドロゴーニュ、アルデシェ、ドロームに位置する5つの家屋で演奏・録音された共作である。ギオネは家屋の各部屋でサックスを吹く。ラ・カザはそれをマイクで録音した作品である。トラックの冒頭には各部屋で発音された短い声とサックスのロングトーンを15秒ずつ編集したものを収め、その後各部屋あるいは家屋外でのギオネの音を録音を収める構成となっている。ギオネが語るところでは、南仏は所謂フランス文化とはかなり違い、どことなく中世の農耕文化や異端宗派の残り香が漂うような一種独特な文化圏であるという。ブックレットには広大な山裾に抱かれた家屋の写真が載っている。当然演奏の音だけでなく周辺の環境音や生活音、住民の会話や家にまつわる語りも収められている。ドキュメントかというとそうではなく、音響測定のような冷たい印象は無い。ここには非常に豊かな時間と空間が流れている。ギオネのサックスも聴きごたえがあるが、むしろそれは背景に逆転し生活とその時間が静かながら圧倒される存在感を持って正面に表われる。しかしそれはギオネの音によって引き出される。この演奏と記録の関係、ここで聞こえる響きを「実験音楽」と括って批評眼に晒してしまうことしたらそれは愚行である。家屋の場所によって響きは変わる。家屋の内部にも地方とその歴史があるということか?ここに収録されているものは、空間と時間の方言である。