アカルイミライ(2003)
東京のおしぼり工場で働く仁村雄二(オダギリジョー)と有田守(浅野忠信)。仁村はある2つのクセを持っている。ひとつは突発的にキレてしまうこと、もうひとつは未来が見える夢を見ること。守は飼っているクラゲを仁村に残しひょんなことから姿を消してしまう。なりゆきのまま、仁村は守の父・真一郎(藤竜也)と奇妙な共同生活を始めることになる。監督・脚本・編集を務める黒沢清は出身中高?のOBだそうだ。
ひとつのテーマと考えられるのは「理解し合えない若者と大人」。おしぼり工場の社長(笹野高史)は若い二人に気に入られようと自宅へ食事に招いたり、寿司を土産に部屋を訪れたり、ボーナスの現金支給を試みるがうまくいかない。他方で、守の父とオダギリのやり取りには本気の闘いが感じられる。キレた仁村に対して「どうして君は目の前の現実を見ようとしないの、薄汚くて不潔だからか?・・・この現実は(お前だけのではなく)私の現実でのあるんだよ!・・・逃げこめるのは二つしかないんだ、ひとつは夢の中、もうひとつは刑務所の中だ」というセリフには他者への想像力・共感性といった意味で説得力がある。藤竜也が演じるすべてを赦す父親と聖書の「放蕩息子のたとえ」の父親像がダブって見えました。『悪魔のようなあいつ』から30年近く経った藤竜也の「へへっ」という奇怪な笑いも健在。
終始、「視覚」としてのカメラワークが効果的で、さすが蓮實重彦門下といったところでしょうか。(ちなみに蓮實重彦の息子の蓮実重臣が音楽と担当しているらしい。)
エンドロールの少年たちが着るゲバラがプリントされたTシャツには何か違和感を感じる。彼らは前述の「大人と若者の対立」にさえ包含されないのかもしれない。
東京からエクソダスしようとするクラゲの大群には心が救われる。本作の重要な「記号」であるクラゲには希望のような何かがあった。
(余談ですが住友商事のリクルーティングサイトは「アキナイミライ」。この映画のタイトルからもじったのか。そして俺にミライはあるのか。)
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