『はじまれ』


今年初めて、(というか、生まれて初めて)、男性からバラの花束をいただきました。出版社「港の人」の代表の里舘さんが、『はじまれ 犀の角問わず語り』の刊行を祝して、出来あがったばかりの本と一緒に花束を持ってきてくださった。
嬉しい。実に嬉しい。


精魂込めて作ってくださったうえに、文章に触発されて本を死に物狂いで作ることの大切さをあらためて痛切に感じたのだと訥々と語りかけてくれた。
文章を書いていくうえで心が折れてしまうようなことが多かったここ数年、いつも、数か月後にはもう書くことをやめている自分を思い描き、書かない自分はどんなふうに生きているのだろう、どんなふうに生きていないのだろうとあれこれ想像するのが習いだった。

『はじまれ 犀の角問わず語り』は、発行:サウダージブックス、発売:港の人。サウダージブックスの浅野卓夫さんが、港の人の里舘さんと相談しつつ、まことに丁寧な編集をしてくださった。
売ることだけを考えていたなら、けっして選択されないであろう、常識破りの、実のところはこの本の顔としては、これ以上のものはなさそうに思える装丁。表1は真っ白で、文字は表紙の右端に小さく「は」の一文字しかない。書名が見当たらない。


本を開いて、背を見せて、表紙全体が見えるように置いたなら、
ほら、タイトルはこんな風に入っている。
そこに厳として存在する空白を指し示すように、
シンプルに、でも、ひそかに声高に。



はじまれ、はじまれ、3・11以来、ずっとそう唱え続けてきたように思う。
はじまれ、はじまれ、いつもそう唱えることで、そう祈ることで、自分を支えていたようにも思う。
うっかり唱え忘れると、道に迷って途方に暮れる。


はじまれ、
はじまりを共に生きるすべての人々に、深い感謝の念と祈りを込めて、
はじまれ!