食品の用途発明

 産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会審査基準専門委員会WGでの議論の結果、食品の用途発明の審査・審判にあたり、用途を限定したクレーム解釈が採用される見込みです。

 一般論として、用途発明は、(発明者が)ある物の未知の属性を発見し、この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見出したことに基づく発明とされています(東京高判平成13年4月25日)。もっとも、用途は、当該物をユーザがどのように使うのかに左右されます。同じ物に複数の用途が存在することも多く、その場合に、用途の特定は、客観的には何も特定していないのではないかという批判もあります。その見地からは、用途発明は、使用方法の発明としてクレームされるべきであり、本来であれば間接侵害行為となるべき行為を直接侵害行為に繰り上げるためのテクニカルなクレームドラフティングの所産ということになります。
 
 その一方、客観的には同じ又は類似の物であっても、社会通念上又は市場での取引において、別の物として観念されることもあります。例えば、小売店では別の棚に配置される商品は、成分が同じであっても、異なるユーザを対象としており、区別することができます。
(もっとも、多くの場合、実際には、用途によって添加される補助的な成分に違いがあり、物としても区別することができます。しかし、そのような成分を具体的な物質としては規定できないため、用途を物の特定に借用しています。その一方、物として全く同一であるにもかかわらず、用途ごとに異なる商品名又は型番が付される場合もあります。その場合、用途は、ラベルの表記でしか区別できません。)

 しかし、食品の分野では、実務上、公知の食品に用途限定が付されていても、公知の食品と区別できるような新たな用途を提供することはないという運用がなされてきました。例えば、ヨーグルトに「骨強化用」を付しても、ヨーグルトという点で従前のヨーグルトと変わるところはなく、新たなカテゴリーが創出されたわけではないと解釈するのであれば、この運用にも根拠を見出すことができます。
 その一方、最近の特定保健用食品(トクホ)及び機能性表示食品の増加をふまえ、これらの分野での技術開発を促進するという観点では、食品分野でも用途限定による従来技術との区別を許容するべきであるという意見が強まっていました。
 
 今回の審査基準の改定は、その要望に応えるものです。