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2010-06-22

厚着モデルの数式を含めた

21:57 |

説明です。


アレルギーに関する表示: 数式

頭痛、吐き気などを催すことがありますので、数式嫌いの人は読まないでください。


ブログ本体「温暖化の気持ち」で、厚着モデルを取り上げました。


モデルとは何か (5) 厚着モデル(上)

http://onkimo.blog95.fc2.com/blog-entry-97.html


厚着モデル、というのは私が勝手にそう呼んでいるだけで、要は温室効果のモデルで大気の層が複数あるいわゆる多層モデルです。


文章で説明しているのですが、さすがに数式なしでは心許ない。こちらで補遺として数式入りで解いておきます。


次のシステムを考えます。太陽からの放射が地表に入射します。途中の大気は太陽放射に対して完全に透明。地表は、大気放射と、後から述べる大気からの赤外線放射を受けて加熱され、それを全て赤外線として放射します。


大気は複数の層があります。それぞれ、(存在すれば)上の大気層からの赤外線放射と、下の大気層、もしくは地表に接している層であれば地表からの赤外線放射を受けて全て吸収し、一方で上下に同量の赤外線を放って熱を失っています。


三層の場合の概念図を書きました。「温暖化の気持ち」で使うため、数値が入ってしまっていますが、まあ、参考と言うことで。

f:id:onkimo:20100622215449p:image

さて、系は定常だとします。つまり、各要素に入ってくる熱と出て行く熱は釣り合っている。


以上の仮定をふまえて、方程式を立てていきます。


まず、最初に大気の層に名前をつけていきましょう。地表に接している層を第一層、以下、上に向かって順に 2, 3, と。全部で n 層あるとします。つまり、最上層が第 n 層。


太陽からやってくる単位面積あたりの熱量を  F_s、雲などによるアルベドを  A とします。地表が受け取る熱は (1-A)F_s となります。


一方、地面は黒体だとして熱を発します。その発する熱を F_{g} としましょう *1


地表の熱の出入りが釣り合っているので、


(1-A)F_s+F_1=F_g (1)


これが地表の満たす式。


次に、大気層を考えます。地表から i 番目の層、つまり、第 i 層を考えましょう。第 i 層は、下の層 i-1 と上の層 i+1 から熱をもらいます。第 i 層が上、もしくは下に放つ熱を F_i とすると、


F_{i-1}+F_{i+1}=2F_i (2)


ただし、これは第 1 層と第 n 層には当てはまりません。第一層は下に大気層ではなく地表があるので、


F_{g}+F_{2}=2F_1 (3)


となりますし、第 n 層は上が宇宙空間になるため熱が入ってこないので、


F_{n-1}=2F_{n} (4)


となります。


あと、何か忘れていないかな…。あ、そうそう。地表も大気も黒体だとしましょう。すると、温度が得られます。地表の温度 T_g を得たいと思えば、F_{g}=¥sigma T_g^4 から求められます。第 i 層の温度も同様、F_i=¥sigma T_i^4 で求まります。


数式を解く


数式を解くのが得意な人は、じゃんじゃん解いてください。ここでは私のやり方で、できるだけ数式が何を意味しているのかを考えながら解いていきます。


まず、第 i 層の式 (2) を変形すると、


F_{i-1}-F_{i}=F_{i}-F_{i+1} (5)


であることがわかります。これは何を意味しているのか。i-1 層と i 層の境を考えてください。上向きに F_{i-1} の、下向きに F_{i} の熱が動きます。式の左辺 F_{i-1}-F_{i}i-1 i 間における正味の上向きの熱の流れ。式 (5) は、これが、i i+1 間の正味上向きの熱の流れに等しいということを意味しています。


つまり、正味上向きの熱の流れはどの層の境においても等しい。この値を、¥cal Fとしましょう。すると、i = 2 ¥sim n において、


F_{i-1}-F_{i}={¥cal F} (6)


であることがわかります。あ、これ、等差数列ですね!また、n 層の式 (4) を考えると、F_{n-1}-F_{n}=F_{n} であることから、


F_{n}={¥cal F}


であることがわかります。つまり、各層間を上向きに通る正味の熱エネルギーがそのまま宇宙に出て行く。


これ、考えてみたら当たり前のことで、そうでないとどこかに熱がたまったり減っていったりするわけです。


じゃあ、¥cal F はどうやって求めればいいのか。地表面を表す式 (1) を変形すると、(1-A)F_{s}=F_{g}-F_{1} ですが、ここで第 1 層について、i=1 を式 (3) に入れて、式 (6) もあわせて考えると、


F_{g}-F_{1}=F_{1}-F_{2}={¥cal F}


であるので、結局


{¥cal F}=(1-A)F_s


と書けるわけです。つまり、各層を上向きに通過していく正味の熱量は、太陽から地表に降り注ぐ熱量に等しい。ま、これも当然といえば当然ですね。i 層と i-1 層の間を考えてみましょう。太陽のからの熱はこの境界を上から下に通過していく。大気間の熱放射は正味ではこの境界を下から上に通過していく。その両者が等しい、とこういっているわけです。つまり、境界の下側で熱の増減は無い。


さて、式を解いてしまいましょう。式 (6) から、F_{n}={¥cal F}F_{n-1}=2{¥cal F}、てな具合に計算できます。結局、全ての i において、


F_{i}=(n-i+1){¥cal F}


となるわけですね。また、地表から第一層への熱の流れは、


F_{g}=F_{1}+{¥cal F}=(n+1){¥cal F}=(n+1)(1-A)F_{s}


となります。


最後に、温度を考えてみましょう。地表、大気とも黒体と考えます。つまり、F_{g}=¥sigma T_{g}^4 および、F_{i}=¥sigma T_{i}^4 となります。温度は、


T_{g}=¥{(n+1)(1-A)F_{s}/¥sigma¥}^{1/4}

T_{i}=¥{(n+1-i)(1-A)F_{s}/¥sigma¥}^{1/4}


わかること。i が大きくなればなるほど、つまり、地表から離れれば離れるほど、温度が下がること。n が増えるほど、つまり層数が増えるほど、地表の温度が高くなること。


数値を入れて計算したい人のために、大まかな値を書いておきます。


F_s=342 ¥mbox{[W m$^{-2}$}]

A=0.3

¥sigma=5.67¥times 10^{-8} ¥mbox{[W m$^{-2}$ K$^{-4}$}]


この数字を入れると、三層モデルの場合、図のような数字が出てきます。


補遺としてはこんなところですかね。


それにしても、はてダtex、括弧が変。どーして?


<追記: 6/23 げおさんの指摘を受けてミスを修正。そのほかのミスと文章も修正>

*1:面倒くさいので、「単位面積あたり」という言葉を省略してしまっています。物理学においてはではフラックス (流束) という便利な単語があるのですが、今回はそれを使わないことにします

げおげお 2010/06/23 00:16 多分、うっかりだと思いますが(ってか、答えはちゃんとあってるし、笑)こっちの(1)式が
(1-a)F<sub>s</sub> = F<sub>g</sub>
になってますが、正しくは
(1-a)F<sub>s</sub> + F<sub>1</sub> = F<sub>g</sub>
のような気がするんですが。ほかにもなんかちょっと記号の混乱があるような気がする。

ここからどう灰色に持っていくのかちょっと興味津々(笑)。このモデルをうのみにしちゃうと層の数が増えれば温度が上がってしかも上限がないから(どっかのコメントでそんなこと書いてた人もいたような)そこに拘って納得しない人も出てきそうだし。

げおげお 2010/06/23 00:29 あ、コメントにはタグつけらんないんですね。まあ通じてるとは思いますが
(1-A)Fs = Fg
ではなく
(1-A)Fs + F1 = Fg
では? という意味です。(わたしもA小文字にしちゃってるし)1はもちろん添え字で

onkimoonkimo 2010/06/23 10:17 げお様

指摘、ありがとうございました。大変助かります。

で、今回は灰色には持って行かないつもりです。また別な機会に書いちゃう。

> このモデルをうのみにしちゃうと層の数が増えれば温度が上がってしかも上限がないから(どっかのコメントでそんなこと書いてた人もいたような)そこに拘って納得しない人も出てきそうだし。

これについては続きで書く予定。

おおくぼおおくぼ 2010/06/23 21:58 現実を無視したトンデモ説としか思えません。
学校では理解しやすいように、現実を無視した説明ばかりされます。
複雑な現実を強引に単純化しなければ、教育効果は上がらないし、研究なんかはできないというのは事実ですけど。


>次のシステムを考えます。太陽からの放射が地表に入射します。途中の大気は太陽放射に対して完全に透明。地表は、大気放射と、後から述べる大気からの赤外線放射を受けて加熱され、それを全て赤外線として放射します。


地表からは・・・・放射、顕熱、蒸発散
「それを全て赤外線として放射」するわけではない。

物質の熱の移動は、放射、熱伝導、対流で考えるのが熱学の基本。
地球は水の惑星なので、水を伝わって熱が移動することを無視してはいけない。

地表向けの赤外線で一番割合が大きいのは雲です。
雲を無視したモデルは、現実ではありません。

温室効果が無ければ地表の温度は低くなり生物は死滅しますが、冷却効果がなければ平均気温50度以上の高温です。

t0m0_tomot0m0_tomo 2010/06/23 22:47 >おおくぼさま

横やり失礼します。

多層モデルは温室効果を最も単純に表現したモデルで、それ以上でも以下
でもありません。もちろん、気候モデルではありません。

多層モデルは、温室効果がどのようなものかを理解するには大変良い教材
だと思います。実際、τ>>1で radiative transfer を gray 近似で真面
目に解いても、定性的に一致した答えになりますし。


>onkimoさま

本ログで「CO2は飽和しない」に関する記述はちょっと詭弁のような気が
しますね。多層モデルが温室効果を理解する上での良い教材になると思う
のですが、飽和の議論に関しては適用範囲外だと思います。

実際の温室効果では、GHG の吸収には波長依存性あり、宇宙から地球のス
ペクトルを見ると、 GHG の吸収線はτが厚くなるとどんどん深くなりま
す。吸収線が深くなる理屈(というか吸収線として見える理由)は多層モデ
ルで理解可能ですが、ある程度吸収が深くなるとそのままではやはり飽和
してしまいます。現実に CO2 の温室効果が飽和しないのは、pressure
broadening が効いいるからです。

t0m0_tomot0m0_tomo 2010/06/23 23:02 訂正します。
本ログ → 本ブログ

これだけでは何なので。

飽和の議論ですが、
「1回吸収したら、もう飽和だよ」みたいな反論には使えるかもしれませんね。
こういう問題は色々な人がいて、万人が納得する説明が難しいですね。

onkimoonkimo 2010/06/23 23:25 おおくぼ様

コメントありがとうございました。

> 現実を無視したトンデモ説としか思えません。

まあ、そう取られる方もいらっしゃると思います。

厚着モデルについてはもう少しお話しする予定ですし、モデルとは、というもっと大きな観点から考えるつもりでもありますので、またしばらく経ってからコメントしていただければと思います。

t0m0_tomo 様

> 本ログで「CO2は飽和しない」に関する記述はちょっと詭弁のような気がしますね。多層モデルが温室効果を理解する上での良い教材になると思うのですが、飽和の議論に関しては適用範囲外だと思います。

これなんですが、まさに

> 飽和の議論ですが、「1回吸収したら、もう飽和だよ」みたいな反論には使えるかもしれませんね。

こちらのつもりで書いています。

所詮、モデル、現実とは合わない。だから、現実と合わないと言ってモデルを非難するのではなく、吸収できるところを探そうよ、というのが私の言いたいことです。

とはいえ、t0m0_tomo さんのおっしゃることはごもっともで、そのように取られるような表現であったことは確かですから、修正できるところは修正していきたいと思います。

あと、

> 実際の温室効果では、GHG の吸収には波長依存性あり、宇宙から地球のスペクトルを見ると、 GHG の吸収線はτが厚くなるとどんどん深くなります。吸収線が深くなる理屈(というか吸収線として見える理由)は多層モデルで理解可能ですが、ある程度吸収が深くなるとそのままではやはり飽和してしまいます。現実に CO2 の温室効果が飽和しないのは、pressure broadening が効いいるからです。

こちらも大変参考になりました。特に、飽和するのと pressure broadening、ちょっと勉強してみようと思います。

いや〜、不勉強がばれてしまいますね…。

コメントありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

げおげお 2010/06/25 00:04 灰色まではやらないのですか、ちょっと残念。とはいえ、私の理解は灰色で止まっているのでまいいか。(昔、会田さんの教科書を見て積分記号の多さに頭がくらくらした記憶がw)。

でも残念なのには理由があって、灰色大気をやるとすればずばりタイトルは

すけすけシースルーモデル

みたいなのを期待してたからでした。ちゃんちゃん。

onkimoonkimo 2010/06/25 07:26 げお様

> すけすけシースルーモデル

あああ、厚着モデルの次は「すけすけモデル」のつもりです〜〜〜!

黒体でない大気の一層モデルを考えています。

灰色大気モデルと言われたときに、ちょっと違うことを考えていたんですよね。「灰色」って、不透明度に波長依存性が無いことだと考えていました。そして、一層モデルではなく、もう少し複雑な鉛直一次元モデルみたいなのを考えていました。

でも、黒体ではない、という意味で灰色ということにもなるんですかね。ごめんなさい、この辺の言葉遣い、本当に自信がない…。

げおげお 2010/06/25 10:20  あ、そうか。温室効果の話だったので「可視光については透明、赤外放射については」灰色という意味で「」の中をつい省略してしまいました。

厳密にはonkimoさんの定義だとおもいます。私の使い方は誤用ではないと思いますが、かなり文脈依存です。ってわたしもしろうとだから、自信ないですけど。

げおげお 2010/06/25 18:25
またまたちぇっくw。

式(2)の添え字が順に i-1, i,( = はさんで)i になっていますが、これはi-1, i+1, i のまちがいですよね。しょもないたとえ考えてる際に気がつきました。

onkimoonkimo 2010/06/26 00:31 げお様

その通り!

ありがとうございます。本当に助かります。