最近ブクマした記事を

他の人も読んでいたので、せっかくだから、ちょっと調べてみました。


最近ブクマした記事とはこちら。


北太平洋最深層部の水温上昇が南極海での気候変動現象と数十年規模でリンクしていることを海洋データ同化手法をもちいて実証 -- JAMSTEC
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20100625/


他の人とはブログ「hilihili の hilihili」を書いていらっしゃる北村雄一さん。こちらの記事で取り上げていらっしゃいます。


なぜそんなに速い? -- hilihiliのhilihili
http://hilihili.blogspot.com/2010/07/blog-post_1654.html


 海洋と大気の熱輸送への影響(南極の海の温度が上がった、が北太平洋の深海の水温を上昇させる)がたった40年で出ているって?? どういうこと??


本文中には、"・・・・桁が1つ間違っているんじゃないか" と書かれていました。いえ、北村さんは疑っておられるのではなくて、驚いておられます。


でっ、


元記事と、あと、サイエンスに掲載された元論文を読んでみました。


Simulated Rapid Warming of Abyssal North Pacific Waters -- Science *1
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/science.1188703
http://www.sciencemag.org/cgi/rapidpdf/science.1188703v1.pdf


あんまりわかっていない私が乱暴に要約します。


南極から北太平洋の深海 (以降、底層と言います)まで物がやってくるには 800 ~ 1000 年かかると考えられていました。これは、炭素同位体比を観察することによって得られた時間です。だから、北村さんが「桁が一つ間違っている」と考えたのも無理からぬこと。


ところが、近年の観測で、どうも北太平洋の底層でわずかですが (15 年間で 0.005 度) 温度が上昇していることがわかってきました。温暖化の影響かな?でも、海の底の水って、南極近くで作られているのですが、北太平洋までやってくるまでの時間を考えると、温暖化の影響が出るのは早すぎ。


でも、今回の研究結果で影響が 40 年で南極から北太平洋までやってくることがわかったわけです。温度上昇も温暖化の影響かもしれませんね。


ところで、どうしてこんなに早く影響が現れたのか。それは、波によって伝わってきたからだ、というのがこのモデル結果の解釈であり、研究のポイントです。


すごーく細長い水槽があったとしましょう。片方の端に水を注ぎます。すると、波が伝わっていってもう一方の端の水位も上がります。注がれた水自体は届いていないのだけど、もう一方の端にその影響が出るのです。


海の深いところで起きたことはもうすこし複雑で、ケルビンの波という壁伝いに伝わる波が重要な役割を果たしているのですが、ともかく、実際に海水が移動するよりずーっと速く南極の影響は北太平洋の底層に達したのでした。<追記>
底層の水のうち、南極のアデリー海岸沖で冷やされて作られる水が温暖化の影響で温度が高くなり、別の言い方をすれば、冷たい水の入ってくる量が減って、その影響が波の形で伝わって、北太平洋にやってくる底層の冷たい水が減って、そのせいで冷やされる効果が減って温度が上昇した、という解釈になると思います。


海の中っていろんなことが起きているんですね!


まだお話しすべきことがあるのですが、やめておきます。いつかまた別の機会に取り上げられたら良いなと思います。

*1:Masuda, S. et al, 2010, Scienceexpress, doi:10.1126/science.1188703