「温暖化の気持ち」を書く気持ち このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-07-16

久しぶりにとあるグラフを拝見したので、

19:47 |

思わず記事にしてしまいました。


そのグラフとはこちら。

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先日取り上げた nytola さんのブログで紹介されていました。

Climategate、IPCC-Gate後の世界 -- nytola の日記

http://d.hatena.ne.jp/nytola/20100708/1278644370

魚拓

http://megalodon.jp/2010-0720-2310-58/d.hatena.ne.jp/nytola/20100708


太平洋十年規模振動

グラフについて話す前に、まず、太平洋 10 年規模振動 (Pacific Decadal Oscilation, PDO) について説明しましょう。って、このあたり、私の大変苦手とする分野なのですが。


エルニーニョ、聞いたことありますよね?起こると日本が冷夏になったりするとか言われている奴。もともとは赤道太平洋の東側 (ペルー沖) の海水温が上昇する現象で、同時に赤道太平洋の西側からインド洋にかけての温度が下がって、そのせいでインドネシアあたりでの上昇気流が少なくなって、それが降りてくる場所にある小笠原高気圧に影響を与えて、で、むにゃむにゃ、と、地球全体の気候に影響を与える、あの、エルニーニョ


エルニーニョラニーニャと呼ばれる逆の現象とセットになって、気候学者はエルニーニョ・南方振動 (El Nino Southern Oscillation, ENSO) と呼んでいます。数年おきにエルニーニョラニーニャが入れ替わるので、振動と呼ばれるわけですね。世界中に影響を与える ENSO。


でも、このような現象は ENSO だけではありません。インド洋ダイポールモード、北極振動北大西洋振動、南極振動、もう山のようにあるわけです。振動、振動 (モードという言葉も振動を表しています)、地球はいつもぶるぶると震えている!


そして、PDO もその一つ。赤道太平洋の東側の海水温が上がると、日本の東側の海水温が下がる。そのほか、アリューシャン列島付近で気圧が下がったり、風が変わったりします。まあ、図を見てもらえりゃ一目瞭然 *1

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PDO に付随する温度 (色)、風 (→), 気圧のずれ。左側が "warm phase"、右側が "cool phase"。それぞれ、PDO 指数が正、負に対応する。つまり、PDO 指数が正の時は左側のようなパターンがそのほかの温度や風に足しあわされていると言うこと。http://jisao.washington.edu/pdo/ より。


この PDO、暖かいところ、冷たいところが出てくるだけではなく、地球の平均気温に影響を与えてもいるようです。指数がプラスの時は地球の平均気温が上がるらしい。


地球全体に影響を与える PDO、でも、まだまだ解明されたとは言えません。はっきりとメカニズムがわかっていないからです。そのせいで予測も難しい。ググったら日本の研究者達が書いた次の論文が出てきました。

Pacific decadal oscillation hindcasts relevant to near-term climate prediction -- Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America

http://www.pnas.org/content/107/5/1833.short

本当は読んで詳しく説明すべきところですが、わたし、この手の、何かを当てに行くタイプの、専門用語で言うとデータ同化が出てくる論文が大変苦手で、ちゃんと理解できていません。


とはいえ、研究者達は今一生懸命 PDO のことについてしらべているということは間違い有りません。紹介した論文ではスーパーコンピュータをがりがりと使って計算した結果が載せられています。


PDO の予測は難しく、世界中の研究者が試行錯誤しているところです。


温暖化懐疑論と PDO と Easterbrook 教授の天才的な予測手法


ところで、PDO, 懐疑論業界でも話題です。なんとなれば、最近 PDO の振動が、地球を暖める方から冷やす方にふれたかもしれないからです!これから地球は寒冷化!


この点でがんばっていらっしゃるのが Easterbrook 先生。West Washington 大学の地学の名誉教授で、冒頭のグラフの作者です。先生曰く、太陽の活動が PDO に影響を及ぼして *2、それが巡り巡って地球の温度に影響を与えているとのこと。そして、今後数十年、PDO は負に、つまり、地球の温度が低下する方向に推移するだろうと予言なさいます。


そして、なんと!この先生、誰もが成し遂げなかった PDO の数十年にわたる予測に成功したのです。それも、誰もが予想だにしなかった方法で!!!


それは…


コピペ!!!


です。スパコンも使わずに予測ができて、お手軽簡単、まあ素敵!


1960 年あたりと、2020 年あたりの、一時的に正になっている部分をよーく見てください。同じに見えませんか?似てるなとおもったら、その両側も見てください。ね、ほら、ほら!


私はこちらの綾波シンジさんの記事でこれを知りました。

PDOで寒冷化するとかいう珍文書 -- 環境問題補完計画

http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/38927185.html

綾波さん、鋭いですね。最初にこれを読んだとき感心しました。


nytola さんはどうなのでしょうね?米国在住の研究者の方ですから、やっぱり鋭い方に違いない。コピペであることを重々承知の上で紹介されてるのでしょう。


PDO 温暖化懐疑論への期待


Easterbrook 先生謹製のこの予測、一時、いろんなところで目にしました。昨年の春頃かな、なんか、PDO ベース懐疑論の大ブームがあったので。ちょうど綾波さんの記事が書かれた頃ですね。


nytola さんのおかげでもう一度火が付けば楽しいです。たくさんの方がコピペ予測を片手に懐疑論を唱える情景は、心温まるものがありますよね。皆さん、是非 nytola さんのブログを宣伝してくださ〜い。


ところで、この図、論文に載ったのかな?せっかくだから、査読論文として投稿してほしーなー。でも、そのとき出典とか方法とかどうやって書くのだろ?2000 年代前半ぐらいまでは http://jisao.washington.edu/pdo/PDO.latest を引けば良いとして、予測部分は先生独自の研究のはず。このオリジナリティあふれる解析法はどう書けばいいのか?


あ、正直にコピペしたって書けば良いか。え、そんなの査読通らないだろ、ですって?いえいえ、査読つき懐疑論論文ジェネレータ、Energy & Environment に投稿すれば充分通ると思いますよ。


私としては、何もコピペなんてせずに、自分の予想を手書きで書き入れれば良いのにね、と思います。あ、でも、丸山さんはそれやって江守さんに突っ込まれていたな〜。リファレンス、俺、なんちて。


ときどき想像の斜め上を行くことをなさる懐疑論の人たち、とっても一生懸命でかわいげがあるなぁと思います。なんていうか、お茶目?


とはいえ、いくら一生懸命な研究でも、コピペ未来予測なんて、いかなホッケースティックを載せた IPCC でもさすがに許されません。nytola さんは書いておられます。

国連IPCC気候変動に関する政府間パネル)と名前こそ似ていますが、ICCCは人為的CO2温暖化説に否定的な研究者(懐疑派)が中心となっている国際会議で、アルファベット一文字違いながら中身は随分と異なります。

おっしゃるとおり、ずいぶんな違い。将来 ICCC 報告書なんてものが作成されたあかつきには、このグラフが載ったりするのでしょうか?楽しみです。


さて、このあと PDO はどうなっていくのでしょうか?こちらの図を見てください。

f:id:onkimo:20100715225143p:image:w400

(http://jisao.washington.edu/pdo/ より。2010 年 7 月 16 日。これ、Easterbrook 先生の図と同じ色遣いですね、てか、先生、これの古い奴からコピペ予測を作ったのかな?)


2009 年 9 月の段階で、かなり正に近いところまで戻って来ています。おや、一番左端には赤い棒が見えてますね。正になったと言うことか?まあ、懐疑論者の方は (温暖化論者の方も?よくわからん) みなさん PDO は負になったのだろうな、と考えているみたいなので、このまま負に逆戻りかもしれません。どうなるんでしょうかね?こちらも楽しみです。


え、図の 2009 年の値、Easterbrook 先生の予測と違う?先生の予測ははずれ???


そうですね、確かに違います。でも、それは NOAA がデータを改ざんしているのかもしれないじゃないですか www だれもコピペ予測の方が間違っているなんて断言できないと思いますよ。えっへん!

*1:あ、一応言っておきますが、この絵、PDO の影響だけを引っ張り出して書いています。実際の海水温度の図を見ても、こんな絵、まず普通の人には見えてきません。

*2:これ、かなり面白い見解だと思います。自転している、つまり、少なくとも経度方向にはまんべんなく地球を暖めている太陽が、PDO のようなパターンを持つ震動を引き起こすというのですから。PDO がなんたるかを知っていた場合には、なかなか思い浮かばない見解です。この見解を証明するにはかなりのアクロバティックなトリックが必要。

mushimushi 2010/07/17 08:47 私も環境問題補完計画のページを見ていました。コピペは笑いました。
綾波さん、最近HPの更新されないですね、お忙しいのでしょうか・・・。

onkimoonkimo 2010/07/17 10:51 mushi 様

コピペ、本当におもしろいですよね。これを紹介されている nytola さんもとってもおもしろい方だと思います。愉快犯かな。

綾波さんのところ、鋭い記事が多いので、また読みたいですよね。お忙しいのだと思いますので、ゆっくり待ちましょう。

masudakomasudako 2010/07/17 19:07 気候影響評価のシナリオ例としては、意図的に過去のデータをはめこむことはあると思います。建物が地震に耐えるかどうか試験するのに過去の地震計がとらえた地震波形を使うのと同じような意味で。

onkimoonkimo 2010/07/17 20:37 masudako 様

コメント、ありがとうございます。おっしゃることはよくわかります。

問題は、どんな意図が有ったのか、ということだと思いますね。そして、このグラフを紹介した人たちが、その意図を認識していたのかどうか、という点。

MANTAMANTA 2010/07/18 08:58 こんにちわ〜 読み落としていたらごめんなさい。
PDOのグラフってたしか、地球温暖化の様な上昇トレンドを除いたあとのものだったとおもうのですが、どうでしたでしょうか?
例:
http://www.data.kishou.go.jp/shindan/b_1/pdo/pdo.html
気象庁のグラフと上記グラフは重ねてみるとトレンドはおおむね一致します。

だとすればはじめから温暖化傾向は上記データには含まれていない、ということになります。

げおげお 2010/07/18 12:04 MANTA様:
元データがワシントン大学のならば
http://jisao.washington.edu/pdo/PDO.latest
に思いっきり
The monthly mean global average SST anomalies are removed to separate this pattern of variability from any "global warming" signal that may be present in the data.
と書いてあります。まあ、普通この手の”変動”とか“振動”とかいう現象を解析するときは、暗黙に「周期性」とかを気にしているのでトレンドを除去してあるのがほとんどです。

後、現象にもよりますが、データ期間のなかに1,2周期ぐらいしか含まれていないものを振動と言ってしまうのは(今の場合2周期弱)本来はかなり強引です。今の場合EOFの第一モードではあるので、それなりに大きな空間構造を持つ変動がありそうだまではかなり確からしいですがそれ以上はなんとも。まあ、だからみんないろいろ研究してるわけですが(笑)。

masudakomasudako 2010/07/18 12:26 トレンド分離の件は、環境問題補完計画(綾波シンジさん)の別の記事にも説明があります。

さて、Don Easterbrookさんの文書を見てみました。PDOのグラフ(第4図)は何だかわかったのでまあいいほうです。第2図の「IPCCが予測した温暖化」と第3図の「観測された寒冷化」は、どうもへんなのだけれど、global temperaturesとあるだけで出典表示もどうやって得られた数値なのかの説明もないので、どのようにへんなのかを議論するのもむずかしいです。

第2図のほうは、本文で「21世紀の最初の10年で華氏1度温度が上がる」と言っていて、図の2003年-2013年がそれに対応しているのかもしれませんが、気候モデルの予測型実験を多数まとめた結果にそんな急速な上昇はないはず。特定モデルの特定実験結果を切り出したのか? もしかして、100年分の計算結果の横軸の目盛りを貼りかえたのか?

onkimoonkimo 2010/07/18 12:32 MANTA 様

お久しぶりです。コメントありがとうございました。

> 地球温暖化の様な上昇トレンドを除いたあとのもの

おっしゃるとおりです。私の記事ではその辺に触れませんでした。

このあたりの件に関しては、ウエブでは、気象庁のものもそうですが、綾波シンジさんも以前こんな記事を書いておられました。

http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/38497532.html
http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/38597814.html

なお、PDO のグラフはあくまで PDO のインデックスを書いたものであって決して気温を書いているわけではないんですよね。ただ、PDO インデックスが正の時、地球の気温が上がる傾向にはあるようです。

私の感覚は、mokkei1978 さんのこちらの記事が、私の感覚に近いです。

http://d.hatena.ne.jp/mokkei1978/20091016/p1

訂正がある記事を引かせていただいて mokkei1978 さんには非常に申し訳ないのですが、訂正されている点までを含めて私の感覚に近い、ということです。

onkimoonkimo 2010/07/18 12:50 げお様、masudako 様

コメントありがとうございました。のんびり MANTA さんへの返事を書いていたので、すでにコメントをいただいていたことに気づきませんでした。すみません。

げお様

PDO について、まだまだおっしゃるようにわからないことが多すぎる訳です。研究は必要ですが、社会に対して PDO を過大に評価するようにアピールするのは考え物だと思います。懐疑論者にかぎらず、温暖化を唱える側も。でも、この辺、難しいですよね。最先端の成果という観点からはアピールすべきではあるので。

masudako 様

Easterbrook さんの文章へのコメント、ありがとうございました。どの文章でしょうか?もしよろしければリファレンスを教えてください。

ただ、彼の書いた文章はどれも masudako さんの指摘されたような問題点を抱えているように見受けられます。

nytola さんは、それにもかかわらず、Easterbrook さんの成果を高く評価していらっしゃる、ということが重要なポイントだと思います。

masudakomasudako 2010/07/18 15:29 Don Easterbrookさんの文書としてわたしがコメントしたのは、綾波シンジさんの「PDOで寒冷化するとかいう珍文書」の「こんなトンデモ文書」というリンクの先にあったものです。(同じ著者のほかの文書をさがして読もうという気は、まだ起こしていません。)

onkimoonkimo 2010/07/18 18:23 masudako 様

どの文書か教えていただきありがとうございました。

> (同じ著者のほかの文書をさがして読もうという気は、まだ起こしていません。)

私も今のところそんな気は起きません。また新しいのが出てくるようなら別ですが…。

MANYTAMANYTA 2010/07/19 11:00 onkimoさん、みなさん、お返事ありがとうございます。
ってことは「PDOが温暖化の原因!」って言ってる人は、自分の基礎知識のなさを披露しているようなものですね。
ダメフラグと言えよう…(泣)

綾波シンジ綾波シンジ 2010/07/19 12:33 なんだか話題にして頂きましてありがとうございました。
「お手軽コピペPDO予測」が未だに所謂懐疑論者の間で珍重されていたとは……

月ごとの全球海温からの偏差ですので、PDOのindexが「温暖化の傾向」を除外したものになり、かつ「全球海温はPDOに影響をある程度受ける」ってことですね。


更新のための時間がありませんで、ご無沙汰しております。でも、記事ややりとりは楽しくよませてもらっています。

onkimoonkimo 2010/07/19 21:12 MANTA 様

少しでもお役に立てたようで何よりです。というより、みなさんのコメントが役だったのでしょう、そのような場が提供できたことを、とてもうれしく思います。

PDO 自体は気候学の最先端の研究テーマだと言って良いのではないでしょうか。PDO のおもしろさを紹介できればそれが一番の懐疑論への反論になるのでしょうが、残念ながら私の力不足で今のところそれはかないません。でも、そのうち勉強して紹介できればいいなと思っています。

綾波様

お久しぶりです。コメントありがとうございました。まさにおっしゃる通りです。

綾波さんのあの記事は大変役に立ちました。ありがとうございました。

> 更新のための時間がありませんで、

研究者として大事な時期でお忙しいのだと思います。無理せずに、気が向いたときに懐疑論について語っていただければと思います。楽しみにしています。